1027 試合開始
「アネム! シュンパネだ! 使い方はわかるな?」
食料補給のためにタケルにも渡してあるし、カーチェなら念のためにと乗組員には教えているはずだ。
「わかる!」
奪い取るようにシュンパネをつかんだ。
「パーニグル諸島へ!」
アネムがシュンパネを掲げると同時にクルーザーを結界で包み込む。
シュンパネが発動。パーニグル諸島とやらに飛んだ。
で、現れたところは……え? 空? なんで?
「──って、メルヘン機のパイロットだったわ!」
そりゃ空に現れるわ。アハハ。
「じゃねーよ! こん畜生が!」
当然のように自由落下するクルーザー。こんなことならプリッシュ号改で来るんだった!
「ヘキサゴン結界!」
クルーザー全体にヘキサゴン結界を纏わせた。
後悔とは後で悔いるから後悔と言うのなら、今する必要はねー。まだ、なにも終わっちゃいねーんだからな!
「いろは、なんか見えるか?」
「九時方向で戦闘が行われています」
直ぐ様、九時方向にクルーザーを向ける──が、遠くてわかんねー! 辛うじて光が乱舞してるのがわかるだけだ。
「ミタさん! プリッシュ号の操作を覚えてるか?」
「はい! 記憶しております!」
さすが万能メイド。隙がない。
「今からクルーザーをプリッシュ号と同じにする。あと、モコモコビームを両舷に取りつける。撹乱しろ!」
「お任せください!」
プリッシュ号の操縦系は完璧に身に刻まれている。なので十秒で完了。あとは、モコモコビーム銃を五倍にデカくして両舷に設置。モコモコエネルギータンクをあるだけ出して、銃と繋げる。
「ミタさん! 操舵輪の左右にボタンが現れただろう。両方押せ!」
「はい!」
とミタさんが返事して一秒後に両舷のモコモコビーム銃から光が発射された。ちょっとタイミングがワリー。こうか?
「ミタさんもう一発!」
今度は押したと同時に発射された。よし!
「試し射ちしてイイから完璧にしろ!」
ミタさんには余計なセリフだろうが、おれの技術ではこれが限界。あとはあなたの万能にお任せです。
「いろは! お前も撹乱だ。攻撃を散らせ。ドレミはタケルのところだ。誰も死なすな」
「「イエス、マイロード!」」
いろは団とドレミ団がクルーザーから文字通り飛び立った。うん、超万能生命体万歳!
「ベー! わたしにも戦うものちょうだい!」
そんな都合のイイもんなんてあるか! と思ったけど、都合のイイ能力なら持ち合わせていましたわ。
無限鞄から以前、カイナがアホみたいに出した銃の余りを吐き出した。
「アネム、銃は使えるな?」
「使えるけど、そんな豆鉄砲じゃあいつに勝てないよ!」
「勝てないまでも戦えるようにオレがしてやる」
まずは裸なアネムに結界武装を纏わせ、銃が握れるサイズにする。
「お前は近接戦闘タイプか? それとも遠距離戦闘タイプか?」
メルヘンに問うセリフではねーな。
「近接戦闘が得意」
そして、メルヘンが答えるセリフでもねーな。
「なら、拳銃だな」
吐き出した銃の中から結界で拳銃だけを選び出し、アネムの左右に並べる。
「片方ずつ八十丁だ。何発入ってるか知らんから無駄弾は避けろ。握る拳銃を離せば新しい拳銃が手に現れる。つかんでみろ」
アネムが頷き、両脇に浮かんだ拳銃をつかんだ。
「残りの拳銃は収納する。離したら新しい拳銃が出る。わかったな?」
「わかった!」
伸縮収納結界で拳銃を仕舞う。
「お前には結界武装って言う強化鎧を纏わせたが、どこまで耐えられるかはわからん。だからなるべく避けて攻撃しろ」
「わかった!」
よしと頷き、アネムを手のひらに乗せてデカくする。
十メートル。二十メートル。多分、メルヘン機が人型になったときがこのくらいだろうってところで止めた。
「体を慣らせ。それまではオレが時間を稼いでやる。それまでに絶対、体を慣らせ! わかったな!」
「わかった。絶対に慣らす!」
「よし、いけ!」
「アネム、いきまぁーす!」
と、アウトなようなかけ声を出してクルーザーから飛び立った。
なんか知らんけど、その勇姿を敬礼して見送った。
「ベー様! そろそろ戦闘領域に入ります!」
おっと。ノリに流されている場合じゃねーなと、転移結界門を設置した。
「さあ、オレもやるとしますかね」
ズボンのポケットから殺戮阿吽を抜き放ち、前方に放り投げる。
続いて無限鞄から轟牙を出して装着する。
「轟牙、出る!」
とかアネムに刺激されて、らしい言葉を叫んでクルーザーから跳び出した。
轟牙に飛行能力はないが、空飛ぶ結界は創り出せる。
足に空飛ぶ結界を創り出して乱れる体勢を整え、戦闘領域に向かう。
途中、投げ放った殺戮阿吽をつかみ、吽のほうを背中に回して結界で固定させる。
阿を振り回し、肩を慣らす。
イイ感じに肩が温まったら、ホームラン宣言をするように相手に突き出した。
「オレの家族に手を出すとはイイ度胸だ」
炸裂型結界球を創り出し、殺戮阿を大きく振りかぶる。
「今宵のオレはひと味違うぜよ!」
脇を締め、体を捻るように殺戮阿をフルスイング。さあ、試合開始だ!




