1026 相棒
無事、クルーザーごと瞬間移動できた。が、思った以上に沖合いすぎた。
「ミタさんはこのままクルーザーで来い! オレは先にブララ島にいく。ドレミ!」
なぜか幼女型メイドになるドレミに手を伸ばし、つかんだと同時に転移バッチ発動。タケルの潜水艦が停めれる桟橋に転移する。
ブララ島に来るは久しぶりだが、それほど配置は変わってなかった。
モコモコ族に食料を運んだり、予備の弾薬を保管しておく場所なので、そういじる必要はないのだろうよ。
桟橋に潜水艦は係留されていない。
今タケルたちは、東の大陸へと向けて旅をしている。途中、親父さんの腕を奪った海賊を退治すると、出発前に聞いている。
「海賊にやられたのか?」
目的の場所、モコモコ族が荷物の搬出入の間に休憩するため置いたコンテナハウスへ向かいながら埒もない考えをしてしまう。
コンテナハウスの前にはモコモコ族が数名いた。
「ベー様だ!」
「ベー様休憩所の中に!」
見た目はモコモコでも獣人なだけあって、呼びかける前に気づかれた。
やっぱりか。いや、そうするように設定したのだから当然なのだが、見るまでは信じられなかったのだ。
説明されるより見たほうが早いと、モコモコ族を押し退けてコンテナハウスへと入る。
「やはりメルヘンか」
あの破裂音──ではなく、纏わせた防御結界はメルヘンの一人にしかけたものだとはわかった。
一瞬、オカンに仕かけたものかとびっくりしたが、自由自在のお陰か、すぐにメルヘンとわかった。が、すぐにあり得ないことに感情が乱れてしまったのだ。
オカンに仕掛けた結界と同じく、並大抵の力で結界を破れるようには纏わせない。それこそ火竜のブレスだって防いでみせる。
なのにパン! だと? 一瞬で破られるなんてどんな威力なんだよ? 核ミサイルでも撃たれたのか?
いや、そこはイイ。いや、よくはないんだが、破れるような人外を知っているから許容はできる。問題は第三の仕掛けまで発動したことだ。
あり得ないと思いながらもファンタジーな世界に絶対はねー。保険は大事だと、第一の結界が破れたら第二の結界が発動するように仕かけた。
なのに、第二の結界まで破れ、第三の仕かけ、身代わりの術の応用、シュンパネの術が発動したのだ。
破裂音が一回からして第二の結界どころか、シュンパネの術まで一瞬のことだろう。すぐには信じられんわ!
体格からメルヘンとはわかったが、スゴい火傷で誰だかはわからない。結界からしてバリアルの街へ一緒に行ったあいつだろう。
なんてことはどうでもイイ! ちゃんと生きてんだろうな!?
パイロットスーツは溶け、羽は文字通り燃えてなくなり、肌はどす黒くただれている。
死んでいても不思議じゃないが、メルヘンの生命力はしぶとい(プリッつあん参考)。このくらいでは死なないと、小さなヘルメットを外し、息を確かめる。
「よし! 生きてる!」
さすがメルヘン! しぶとい生命力だ!
無限鞄からエルクセプル(エクサリー的なやつね)を取り出し、結界スポイトで数滴吸い出して、メルヘンの体にかける。
かけた場所から、それこそ魔法のように治っていく。
「…………」
メルヘンが動き、瞼がうっすらと開いた。
体の表面は治ったが、体の中も酷いことになっているようだ。やはり、飲ますのが一番なんだな。
「薬だ。口を開けて無理にでも飲め」
結界スポイトを口につけ、ゆっくりと押し出す。
「…………」
エルクセプルが口の中に入り、体がほんのりと光る。
一秒、二秒──もいらなくメルヘンが完全復活。瞼を全開にして弾丸のように飛び出した。
「タケル!!」
やはりタケルになんかあったのか。
外に出たメルヘンを追い、オレもコンテナハウスから出た。
「タケル! タケルどこなの!? パーナは!? ラミーは!? 皆どこなの!!」
体は全快しても記憶の混乱までは治してくれないのか。エルクセプルもまだまだ改良の余地はあるな。
「アネム! いったいどうしたのよ!?」
あ、アネムって言うんだ。
「プリッシュ! なんであなたがここにいるよ!?」
びっくりする二人のメルヘン。だが、今は説明し合ってる暇はないと、全快したメルヘン──アネムをつかみ、クルーザーに向けて走り出した。
「ミタさん、出るぞ!」
降りて来たミタさんに叫ぶ。
万能メイドに説明は不要とばかりにクルーザーへと回れ右。忍者のように素早くクルーザーに乗り込んだ。
「プリッつあん、戦闘機が通れる転移結界門を開くからカイナと一緒に来い!」
片割れ転移結界門を球体にしてプリッつあんに投げる。
「なんかよくわかんないけど、わかった!」
頼むぜ、相棒。
クルーザーに乗り込み、全速力で発進した。




