1013 身代わり
ミタさん手作りの朝食を終え、ゆったりまったりマン○ムタイム。今日はどうしようかと考えていると、プリッつあんが目の前に現れた。なんですか?
「フミんところにお願い」
あん? 意味がわからないんだが。フミって……あ、フミさんね。あのフミさんだろう。知ってる知ってる。
「行きたきゃ勝手にいけばイイだろうが」
あなただって転移バッチ持ってんだからさ。
「わたし、あそこよく知らないもの」
君のメルヘンレーダーで捜しなさいよ。高性能なのは知ってるんだから。
「行ってる間にベーはどっか行っちゃうでしょう。捜すの大変なんだからね」
なぜオレが責められる? 別に今生の別れってわけじゃないんだから構わんだろう。精々、長くても二週間くらいなんだからよ。
「いいからいくの!」
緊急パイル○ーオンをして来て、髪を引っ張る暴力メルヘン。ったく、わかったから止めてちょうだい。首がもげるわ!
暴力メルヘンには勝てんと、フミさんのところにいくことにする。
「フミさんってどこにいるんだ?」
「クレイン湖の造船所にいますよ」
なんでも知ってるミタさん、素敵です。
ブルー島は夜でも転移結界門の外は朝。清々しい……曇りでした。
「……まっ、この時期は曇りが多いしな……」
この地域は収穫が終わる頃から曇り空が多くなる。まさに秋から冬になる狭間の季節である。
館の前にはメイドさんが数人いるだけで、親父殿やオカンの姿は見えない。たまには顔を見せんと忘れられそうだ。
「クレイン湖へ」
転移バッチ発動してクレイン湖へと転移した。
で、現れた場所は、クレインの町からちょっと離れたところ。町中には転移できませんって。
「飛空船が増えたな」
ざっと見ただけで二十隻くらいクレイン湖に浮かんでおり、空に目を向けたら十隻以上の飛空船が浮かんでいた。
「博士が張り切ってますから」
よく働く人外だこと。
「あんなに造って乗り手はいんのか?」
サイズからして人サイズ。人手は揃っていても技術が追いつかねーだろうに。
「全然足りていません。もう少しゆっくり造ってくださいと言ってるそうですが、まったく訊き入れてくれないそうです。なので、完成した飛空船は別の場所に移して寝かせていると聞いてます」
はっちゃけ過ぎだろう、博士よ……。
「なら、何隻かもらってバイブラストに運ぶか」
公爵どののところなら飛空船を動かせるヤツはいるだろうし、上手いこと言って買わせよう。支払いは土地でも構わんぜ。ククク。
「そう言えば、なんでフミさんのところにいくんだ?」
頭の上で寛いでいるメルヘンさんに尋ねた。
「プリッシュ号を改造してもらうの」
プリッシュ号の改造?
「外装がいまいちわたしの趣味じゃないし、中も可愛くしたいのよ」
まあ、プリッシュ号はオレの趣味で作ったし、作ったことで満足している。その後はプリッつあんの判断。好きなようにしてくださいだ。
「オレの船も任せるか」
完成まで自分が、とは思ったけど、博士に任せたほうがイイものができそうだ。
「……あのマッドは、この数ヶ月で何世代先まで行ってんだよ……」
クレイン湖に浮かんでいるのは船型だが、空に浮かんでいるのはタケルの潜水艦型や空母型だ。どんだけ技術革新してんだよ? もっとゆっくり発展させろよ! 産業革命で大気汚染とか勘弁だぞ。
「来る度に発展してるわよね、この町は」
プリッつあんが呆れた声を出した。
確かに、ちょっとした宿場町くらいにはなっており、露店も何十と立っていた。なに売ってんのよ?
「野菜?」
ネギや大根、キャベツと言った前世の野菜が売られている。いや、鶏肉や卵まで売られてんな。どこで作ってんだよ!?
「カイナーズホームからハウスを買って来て栽培してます」
そんなことまでしてんのかよ。いや、食料のことまで考えなかったオレのセリフではねーけどさ。
「そこまでできる魔族が難民になるなるまで落ちる意味がよくわからんわ」
まっとうに進化したら宇宙までいってんじゃね? 魔族って……。
「それは上がまともだからです。ほとんどの魔王は戦いしか頭にありませんから」
まさに魔王。人類の敵だな。あ、魔王ちゃん、今頃なにしてっかな? 元気に魔王をぶち殺してることを遠い地から祈るよ。
あと、ついでに勇者ちゃんのことも祈っておこう。人様に迷惑をかけてませんように、とな……。
「あ、ベー様だぁ~!」
「ベー様、おはようございます!」
「おはようございまーす!」
なんかオレが大人気。なぜに?
「魔族は強者に従い、敬愛を示す性質ですから」
さも当たり前のようにおっしゃるミタさん。いや、オレより強いのいくらでもいるでしょうがっ!!
「カイナ様の義兄弟で、数々の強者を従える姿を見せれば、どんなバカでも誰が一番の強者かわかります」
いや、確かにカイナとは義兄弟だし、カバ子やルンタと言ったアホどもの世話はしてるが、強者とは違うだろう? つーか、オレがこの町に貢献したの最初だけじゃん。ほとんどいないじゃん。
「力ではない支配。いえ、平和による統治。魔族は今、かつてない繁栄を見せています」
と、町の連中に頭を下げるどころか土下座された。
や、止めてぇ~! オレはただの村人なの! そんな奉ることしないでぇ~!
クソ! 決めた! 戦略ニートをここに連れ来て、オレの身代わりにしちゃるわ!




