1012 記憶にございません
早く寝たせいか、いつもより早く目覚めてしまった。
ドレミベッドから起き上がり、大きく伸びをする。
「うん、イイ朝だ!」
久しぶりにゆっくり眠って、快適に目覚められた。こんな日はきっとイイ事があるぜ。
体を動かしながら外に出ると、真っ暗でした。
「わー。綺麗な星空ぁ~」
………………。
…………。
……。
うん。違う空の下だもんね。知ってた知ってた。
うちへと戻り、明かりを点ける。クソ。暗いから夜明け前かと思ってたぜ。
洗面所へと向かい、さっぱりして戻って来ると、ミタさんがいた。あ、おはよーさん。
「おはようございます。すぐに朝食を用意しますね」
もうミタさん万能説は定説ではなく、白日のもとに晒され真実となった。だから突っ込むのも野暮。あるがままの現象を受け入れるのだ。
……ミタさん、寝てない説はまだ審議が必要だな……。
テーブルにつき、いつの間にか淹れてくれたコーヒーを飲んでると、玄関のドアが開いた。お客さんかい?
「ホー! ベー、ミミッチーのこと忘れてる!」
なんか灰色の壁がしゃべっている。妖怪か?
「あーコーヒーうめー」
今さら妖怪の一匹や二匹に驚く人生ではないと、コーヒーを優先した。
「カイナーズホームで妖怪避けの札って売ってるかな?」
驚きはしないが、こられても迷惑。妖怪やメルヘンは間に合ってます。
「ホー! 完全に忘れてる!?」
「あ、ミタさん。コーヒーお代わり」
どうやら妖怪はドアから入って来られない様子。なら、ほっといても構わんだろうよ。
ホーホーうるさい妖怪を無視してコーヒーを堪能する。ミタさん、腕上げたね。
「もー! さっきからうるさいわね! 寝ていられないじゃないのよ!」
と、二階からパジャマ姿のプリッつあんが下りて来た。あれ? お嬢さん方と一緒じゃなかったのかい?
昨日、遅くまで騒いでいたお嬢さん方。今から帰るのも危険……ではねーけど、遅くに帰すのも偲びないと、プリッつあんにプリッスルを出してもらい、そこに泊めたのだ。
案内にと、プリッつあんもプリッスルに入ったのを確認してからうちに帰ったのだ。
「あの子たち、なかなか寝ないから帰って来たのよ」
よく寝るプリッつあんには拷問でしかねーか。
「それより、ミミッチーはなに騒いでるの?」
「プリッつあん、あの妖怪と知り合いか?」
君の友好関係に口は出したくはないが、もうちょっと友達は選びなさいよ。うちはメルヘンだけで精一杯です。
「ヨウカイ? なに言ってるの? あれはミモナ梟のミミッチーでしょうが」
ミモナ梟? ミミッチー? なんだ……あ、ああ! あれ……は違うか。あれも……違うな。ビーダとピータはトカゲ……ではなく竜だったっけ。
「ミミッチー、ミミッチー、ミモナ梟、ミモナ梟、んーなんだっけ?」
まったく記憶にございません。
「ホー! ミミッチーを養ってくれるって言ったのにー!」
まったく記憶にございません。
「ホー! ホー! ホーホケキョ!」
なにか妖怪が悔しそうに鳴いてます。あ、小鳥をブルー島に放そうかな? やはり目覚めは小鳥の囀ずりで起きたいし。
「まったく、ベーはアホなんだから」
なに、その罵倒は? オレがアホなら君だってアホだからね! ちなみバカ野郎は誉め言葉だからたくさんくれても構わないぜ。
プリッつあんが妖怪のところへ飛んでいくと、灰色の壁が小さくなり、なんか三十センチくらいの梟になった。
「ホー! ベーのアホー!」
襲いかかって来る梟。オレは鳥と戯れる趣味はないと、結界で鳥籠を創り出し、そこに閉じ込めた。
鳥籠をメイド型になったドレミに渡す。そこら辺にぶら下げておいてちょうだい。
「今日からそこがミミッチーの部屋ね」
部屋ってより檻じゃね?
「プリッシュ様。宿り木とカーテンが欲しいです」
なんか気に入ってるご様子。よくわからん生き物だ。
「カイナーズホームに頼んであげるわよ」
今日からその梟の世話はプリッつあんね。オレは関知しません。
「ぴー!」
「びー!」
ピータとビーダが起きたようだ。
しゃかしゃかと走って来て、オレの両肩に乗ると、腹減ったとばかりに鳴き出した。
「賑やかね」
やれやれと肩を竦めるプリッつあん。いや、なにこの家の主みたいな反応してんのよ? この家の主、オレだからね。
まあ、別に主を主張したい訳でもねーんで、ため息を吐いて反応を示した。
「お待たせしました~」
ミタさんが作った朝食がテーブルに並べられ、それぞれが席に着く。
「んじゃ、いただきます」
久しぶりのオレの音頭で朝食をいただいた。




