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愛し子な女子高生(リメイク中)  作者: 沽雨ぴえろ
第2章  トリップ編
31/45

遊びじゃすまない事もある。~書類を燃やしてはいけません~

書き足しました!!(`・ω・´)



 主の元に書類を届けようと束を両手で持ちながら、彼は王宮の中心近くを目指した。

 濃い茶色の厚い扉の前、彼は立ち止まる。そして書類を片手で持ち──────



こんこんっ



「シルバ様、入りますよ」



 レシーは重厚な作りをした扉をノックしたかと思うと、中からの返事を待たずにずかずかと入り込んだ。

 案の定、部屋の持ち主は顔をひきつらせる訳で。



「おい、レシーお前……」


「何でしょうかシルバ様。さ、これが今日の分の書類です」



バッシィーン



 主であるシルバの前に書類を勢いよく叩きつける。勢いが良すぎて机の上にあった他の書類が宙を舞う。

 シルバは暫く目の前に置かれた書類を見つめ、つっ、とその向こう側でにこやかに微笑む男に目を向ける。



「………これは?」


「書類ですが?」


「いや、これは何だ」


「あぁ…紙ですが?」


「お前……ふざけてるだろう」


「いえまさかそんな」


「…………………」



 何度聞いてもにこやかにソレを否定するレシーに、シルバは浅く、かつ長ーくため息をつく。じろりとレシーを見つめ、嫌そうに顔をしかめながら書類を一枚摘む。



「あんなの、ただの遊びだろう」


「大事な書類を燃やすことが遊びとは、ぜひ聞きたいですねどこが遊びなのか。えぇぜひとも」



 シルバがレシーにチェスの相手として逃げられた後、シルバは嫌がらせでレシーの机の引き出しの中にあった書類を適当に掴み、魔術で燃やしたのだ。

 


「………これ、全部か」


「もちろんです」


「お前が」


「あぁ、そうそうシルバ様!」



 シルバが何か言う前に、レシーがポンと手を打ちながら話し掛ける。



「あなたが燃やした書類、なんだと思います?」


「………あ?」


「いやあ偶然ですよねぇ~まさか新しい魔調師の滞在許可証たいざいきょかしょう国尽証明証こくじんしょうめいしょうだったんですから。いやぁ、ほんとに偶然ですよねぇ~」



 レシーはにこやかに、ソレはソレはにこやかにシルバに笑いかけ、トントン、と書類の一番上を指で叩いた。それを聞くシルバは、いつもの余裕そうな顔をみるみる歪ませ、青ざめ始めた。

 滞在許可証とは、そのままであるが、その国に滞在を許す許可証のことだ。国尽証明証とは、『国に尽くすことを誓った』ことの証明証である。その国の王宮に仕えるとき、誰もがそれを貰うのだ。これらは対になっており、その国のもの、と言う証明証にもなる。つまり、これらがあることによってその国の人間となれるのだ。

 大事な書類、と言うことなのだ、つまりは。



「ねぇ、シルバ様?これ、やりますよね?」


「……そんなものをあんな引き出しにしまっとくなこのモヤシが」


「おや、どこになにを仕舞おうが、あそこは私の仕事部屋なのでシルバ様には関係ないはずですが。とにかく、それを燃やしたんです、必ずコレはやっていただきますからね」



 がっくり。そうとしか形容のしようがない落胆ブリをシルバは体で表現し、嫌そうに書類を二枚手に取った。

 シルバはその書類をチラリと見て、怪訝けげそうに眉を寄せる。



「おいレシー」


「はい?」


「これはどう言うことだ」



 シルバがレシーに突きつけたのは、新しい魔調師になる少女の報告書と、職業証明証の書類だった。

 


「お前、この前新しく勧誘した魔調師は記憶があやふやだ、と言っていなかったか?」



 不機嫌そうに言うシルバの指摘を受けて、あぁ!と頷くレシー。彼は苦笑いを浮かべて遅い報告をする。



「先日、魔調隊まちょうたい隊長、ロイから報告が上がりまして、そのチナ…と言う少女。実は記憶喪失ではないことが発覚したそうです」



 それを聞いて思いっきり顔をしかめる。嫌そうにその書類を睨み付け、次にレシーを睨み付けた。

 不機嫌さを隠そうともせず、シルバは低い声でもう一枚の書類を突き出す。



「……なぜ嘘を付くような奴に証明証を出さねばいけない。いかにも怪しいだろうが」



 するとレシーは肩をすくめ、事も無げに言い放つ。



「彼女は様々な魔獣に好かれています。あのグリフォンにさえ好かれている。これは良い戦力となります」


「それだけで、許可するのか?……俺は嫌だ、こんな怪しい奴に証明証を渡すなど」


「いいのですか?」


「………なに?」



 レシーは目を細めてシルバを見つめる。シルバは居心地悪そうに椅子に座り直した後、レシーを睨み付ける。



「彼女はロイに匹敵するほどの才があります。様々な魔獣を従えることが出来れば、他の国から侵攻されることも、この国にとって最良の条約や貿易を結びつけられます。彼女は利用する価値があります」


「………」


「たとえ必要な書類がなくとも、彼女に知られなければ拘束力はあります。彼女は国にとって有益です」



 シルバは眉を寄せながら、レシーに質問をした。



「もし、知られたらどうするんだ」



 レシーはにっこりと微笑む。シルバには、その笑みがなにを当たり前なことを、と言っているように感じられ、背に冷たいものが走るのを感じた。



「その時は、消すだけでしょう?」



 シルバは苦笑して、そうだよな、と呟き、その書類にサインをする。

 こうして、チナは晴れて魔調師となったのだった。しかしチナは隠し事には気づかない。今はまだ────












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