驕れる蛮族は久しからず
━━━━━━RESULT━━━━━━
ロック レベル28→30
リーズ レベル25→30
おぼろ レベル20→26
シオン レベル18→24
アルフォンス レベル24→29
エリンシア レベル16→24
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突然のことに精神が折れそうになってしまった時。
重圧に押しつぶされそうな時、どうやって平静を保つのか?
答えは1つ「全身全霊で目の前のことをやり切る」しかないでしょう、そうしなきゃ事態は何も前進しないし、状況は一切変わらないんだから。
とにかくやる。
宿題やおけいこなら片付ける。モンスターや敵なら叩きのめす。
何だってやれば終わる……リアルもゲームも大差ない。
だから蟹たちを片っ端から倒したのも最善のはずだ。
みんなのレベリングの役に立ったしスキルも手に入れられたから、私が責められるいわれはない、いわれはないはずなのに!
「なんで身動き取れなくするのよーー! ロックこれどういうことーー!?」
蟹の無限湧きエリアから脱出した私たちは、レベリングで得た成果を報告し合うことになった。
ロックを中心に各々がウィンドウを開き、それぞれ得たスキルやスタイルのことを報告し合うなか、岩を背に横たえられていた。
モチロン私の意思じゃないわよ。
両足の先を釘が抑え込んでて持ち上げられないのよ!
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【カベ打ち用釘】
Lv 8
品質 42
属性 土
カテゴリ 工具・金属
入手方法 鋳造、購入
売値 600エン
四角く曲がった形の大きな釘。
梯子などの素材になるほか、壁や岩肌に刺すことで【クライム】系スキルの成功率を引き上げる(上昇量はスキル効果および品質によって変化する)。
使用制限:力35以上
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「私役に立ったでしょ、これ抜いてよーー! さっきから窮屈で仕方ないじゃない!」
私がモヤシなのがアダになった!
もがいて抜け出そうとしても、持ち上げようとしても、両手両足を使って引っこ抜いてやろうとしてもうんともすんともいいやしない……!
力のステータスが足りないから私に扱えない=抜くことができないとか、なんてとんちの効いた使い方……ホント何でもアリよねこのゲーム!
「役には立ったんだがな、あれ以上やられると今後に支障がでそうで」
「そうだぞ! 危うくおれも死ぬとこだったし、少しは頭冷やせよ!」
ええい柿をもしゃもしゃ食べながら声を出すなシオン! ツバ掛かるでしょうが!
「リーズさん川に入る前と後では大違いです、二重人格……二重人格の狂犬です……」
「大丈夫、大丈夫だぞー、あいつは普段から割と誰にでも噛みつくし喚く奴だから」
「あんまりとはいえ否定しきれない……でもいい人ではあるんですよ?」
遠巻きにこっちを見る3人もこっちを助ける気はさらさらなく、ぷるぷると震えるエリンちゃんの両隣で柿をかじってる……!
状況はまさしく孤立無援……!
「うわーん意地でも引っこ抜いてやるーーー!」
「追いつめられるとすぐ力技に頼る……なるほどなあ」
「何よ! ドン詰まるより絶対いいでしょう!?」
「はあ……本当あいつそっくりだな」
小さくつぶやきながら肩をすくめるそれに首をかしげた。
……あいつ? プロの世界にも私みたいな人いるのかしら……でもまあ、苦い顔して遠いところを見てるあたり、あんまりいい印象はないんだろう。
「さてと、アルフォンスを除きそれなり以上の成果が出たところで提案がある」
「悪かったな……俺だけ成果が役割と合わないスタイル1個で」
「魔法撃とうとしたそばからリーズにかっさらわれてたからな……実質何もしてねえってーか」
「こ、こら! 事実でも話の腰を折っちゃだめですよ!」
「く、優しいんだか追い打ちなんだかわからない!」
知らない間に仲良くなったわね……。
ちなみにアルの新しいスタイルは【お目付け役】。
レベリングの最中ずっとエリンちゃんのそばにいたもんだから、すぐ近くに味方がいるときターゲットを集中させるスキルが発現したらしい……ぶっちゃけ複数いない限り孤立しやすい中距離担当にはゴミに近い。
そのままいがみ合いになった2人を咳払いでいさめ、ロックは続けた。
「……まあとにかく五体満足だ。経験値を分散させるのも痛くなってきたしカンスト組をいったんはずして、レベリングを続行しようと思う」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
これはさすがにもの申す。
だってほとんど身じろぎ1つで湧くレベルなのにロックや私を抜いて大丈夫なの!?
って、あれ? なんでみんなしらーっと私の方を見るの?
「お前……話聞いてなかったな?」
「このエリアで釣りをするとさっきの蟹が釣れるんですよ……?」
「うそっ……!?」
テントでいじけてた時、そんなこと説明されてたっけと思いあぐねる矢先、にっこりとした顔でロックが近いてきた。
いや……そういえばおぼろちゃんやエリンちゃんに慰められてる間、あまりの温かさに少し泣けてきて、その間のお話は全然聞こえなかったな……?
「……つ、い、で、に、さっきも言ったがお前に話が山ほどある、おとなしく聞いてもらおうか」
くっ、顔がいい、顔がいいけど超怖い!
……かくして4人の仕上げをしている間、私はロック先生のありがたーい授業を聞くハメになったのであった……。
次回はアイテム周りの解説が主になります。
何日も開けて申し訳ありません……!
用事がなければ2/3の12時には投稿したい……!