表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/175

閑話 受け継がれるもの

これは私の中でこの物語の名シーンに残るものだと思っています。何卒よろしくお願いします。

 1003年90日


 バルトウェイから少し離れた森の中でリーフはゴードンと稽古をしている。万が一魔物に遭遇してもすぐに街へ逃げ込める距離なのでリーフ以外の団員達の訓練場とも言える場所である。

「ふう、少し休憩するとしよう。」

「待ってくださいよ。俺はまだやれますよ!」

「儂が疲れたんじゃよ。お主は儂より老いておらんじゃろう。」

リーフは我に返ってゴードンを見た。彼は足が震え、息がとても荒くなっている。いくら経験豊富でも年齢に勝てないのが人間である。

「すみません師匠、俺まだまだですね。もっと他人への気配りに気を付けないと。」

「なあにお主は十分じゃよ。入団した頃のあの失態は今でも笑えるわ。」

「そっそれは止めて下さいよ師匠!」

リーフは顔を赤くし、ゴードンは大笑いをしている。

「すまんのう。お詫びと言ってはなんじゃが、一つ話をしてやろう。嘗てお主のように失態をやらかした者の話をのう。」

「いいんですか?そんな人の不幸を話の種にしちゃって。」

「構わんよ。今ここには儂とお主しかおらんからのう。」

そういうとゴードンとリーフは切り株に腰かけ語り始めた。


 昔自警団に血気盛んな若者がおったそうな。右も左も分からないが魔物を倒す事に執念のような物を持っていた。いつも団員達とぶつかり合いその度に団長に叱られてはいたが、若者は聞く耳持たずの愚か者だった。

ある日、森の奥にある洞窟に魔物がいるとの情報が入り、自警団は討伐へ向かった。洞窟の中は暗く松明の炎だけが頼りだったが、若者は単独で明かりを持たずに奥へと進んでしまった。

すると目の前に竜の姿をした魔物が潜んでいた。魔物は若者を睨み付け猛々しく咆哮を放った。若者はその時初めて「死」を感じた。いつもの魔物相手には感じなかった殺意の前に足が凍りついてしまった。声を上げようにも団員達からはかなり離れてしまった為、若者は生きる事を諦め魔物に食われそうになったその時だった。団長が身体を張って若者を守ったのだった。剣で魔物を抑え、腕は魔物の牙が貫いていた。どんな馬鹿だろうが決して団員を見捨てない団長の姿に、若者はいままでの愚行を後悔したのだった。


「若者は団長に一生かけても返せない大きな借りを作ってしまった。しかし団長は若者にこう答えた。『これを”借り”と思うな、どうせ思うのなら”恩”と思え。』とな。

そして団長が死ぬ間際に言い残した遺言は、『最期まで団員達を見守ってやれ、それが俺への恩返しだ。』とな。」

「師匠、その若者ってもしかして...」

リーフが何かを言おうとした時、ゴードンが立ち上がった。

「さてとすっかり体が冷えちまったわい。手合わせを頼もうかの。」

「はい!よろこんで。」

二人は再び稽古を再開するのであった。そしてリーフはゴードンから大切な事を教えて貰い、この言葉を決して忘れまいと心に誓った。

「勇敢と無謀は決して同じでは無い。大切なのは引かぬ心、そして間合い。我を失った時が最期だ。」

如何だったしょうか?今後もこのような番外編の様な話を載せようと思ってます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ