↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
153/175

空白の時間 前編

 「じゃあこの問題を...天野。解いてみてくれ。天野?」

アマノ...とても懐かしく感じる響きだ。懐かしい?いや、俺の名前は天野秀哉だ。懐かしくも何とも...。?...俺?

「天野!聞こえてるのか!?」

耳元で聞こえた怒鳴り声に、俺は椅子ごと倒れてしてしまった。そのせいでクラスの皆に大笑いされてしまった。

「ったぁ~。えぇっと...何でしょうか?」

「”何でしょうか?”じゃないだろ!早く黒板の問題を解いてみろ。」

「黒板?」

「はぁ~。もういい、罰として次の授業まで立って受けろ。」

「はい...。」

俺は気の抜けた返事をして、立ったまま授業を受けた。先生が俺に出した問題は別の生徒が解いた。しかし答えを導くのに時間がかかり、先生に注意されてしまった。あの問題...俺ならこう答えるのに...。

 お昼休みになり、皆が昼食を食べ始めた。俺は仲の良い生徒2人と席を合わせて昼にした。だが俺は弁当を出したは良いが、全く手を付けなかった。

「...。」

「天野?大丈夫か?」

「...。」

「お~い。天野く~ん。」

「...。えっ?」

「”えっ?”じゃないだろ。どうしたんだよ?今日のお前変だぞ。」

「そう...かな...?」

「はぁ~。こりゃ重症だな。いっぺん医者に診てもらった方が良いんじゃねぇか?」

「まぁ確かに、午前中の授業全部立たされるなんてねぇ。」

「昨日とはまるで別人だよな?」

「昨日?昨日って...何かあったっけ?」

「お前もう忘れちゃったのか!?体力テストがあっただろ?お前が最低記録を叩き出した...。」

「昨日だって!?」

俺は思わず身を乗り出して友人に聞いてしまった。そして彼は驚いた拍子に椅子ごと倒れてしまった。

「いってぇ~なぁ!何だよいきなり!?」

「昨日は...体力テストがあったのか...。」

「たくっ!そんな事で驚かせるなよな!」

「それに天野君って、いつも眼鏡かけてたよね?コンタクトに変えたの?」

「いや...別にそういう訳じゃ...。」

「「???」」

2人は更に疑問を増やした。だがそれは俺も同じ事であった。まさかあれから、たった1日しか経っていないなんて...。


全ての授業が終わり、俺は担任の教師から説教を受けた。明日からはちゃんと授業を受けるようにとか、特別課題を課す事も考えるなど、俺は空返事で了解した。そして俺は自宅に着き、私服に着替えて外出した。目的地は勿論、あれがある図書館だ。

俺が異世界に転移したキッカケは、”百年戦記”という本を読んだからだ。もう一度あの本を読めば、再びあの世界に戻る事が出来るかもしれない。だが...戻ったところで、あの世界は存在しているのだろうか?仮にあったとしても、そこに人間はいないかもしれない。あのクソジジイの愚行のせいで!

漆黒の波に飲み込まれた時、俺は自分がどこかに落ちている事に気が付いた。何も見えず何も聞こえない闇の中を、ただただ落ちて行った。

(これが予言書にあった破滅の予言なのか...?俺達は大災厄から世界を守る為に戦って来たのに...。こんな結末は残酷すぎる。何の為に今まで戦って来たんだ?何の為に仲間達は死んで行ったんだ??俺は何の為に...この世界に来たんだ???)

今までの努力が徒労に終わり、悔しくて涙を流した所で、俺の意識は無くなって行った。

そして再び意識を取り戻した時、俺は元の世界の自室のベッドの上だった。部屋の時計を見ると○月○日○曜日 午前6時と表記してあった。俺は...不本意ながらも、元の世界に戻って来れたのであった。

図書館に着いた俺は、あの本を探した。しかしどこを探しても、"百年戦記"と載ってある本は見つからなかった。俺は検索システムや職員に聞いてみたが、手がかりは掴めなかった。

「申し訳ございません。お客様のお探しの本は、こちらにはございませんね。」

「そう...ですか...。」

「その本の作者はお分かりでしょうか?」

「いえ、分かりません。ありがとうございました。」

その後、本を取り扱っている場所なら古本屋からスーパーの雑誌売り場まで隈無く探した。しかしどこにもあの本は見つからなかった。

夜遅くまでインターネットで調べてみても手がかりは見つからず、もう諦めようと自己完結して眠りに着いた。


その夜、俺は夢を見た。"大きなのっぽの古時計"の歌が耳元に聴こえていた。そして夢の中で、あの世界の光景が映っていた。

アグロスによって大地はひび割れ、川は干上がり、空は灰色に染まり、草木は緑を失った。すると今度は、誰かの声が聞こえて来た。


「おい、それが終わったら角の家の屋根修理だ。」

「あいよ!忙しいなぁ!」


「はい、並んで!並んで!炊き出しはちゃんと全員分あるよ!」

「あ、鐘の音...直ったね...。」


「さぁ、今、自分が生きている事を皆さんで感謝致しましょう!」

「街の復興を手伝え!...これは闇ギルドからの依頼だ。」


「王様!南部に発生した魔物は、全滅させました。」

「西の方にも出たそうだ。疲れているところすまないが、国民の安全の為だ。急がれよ。」

「はっ!」


「まだかな...」

「もうすぐだよ。」


「おい!今、動いた気がするぞ!」

「本当!?じゃあ、きっともうすぐ...。」


目が覚めると、日付が1日進んだ午前6時であった。俺は部屋のカーテンを開け、眩しい陽の光を浴びながら決心した。

「あの世界は、まだ生きている。俺も...早く戻らないと!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。