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狼王と兎少女  作者: 亀吉
本編
41/58

幕間


 ラパン達が廊下を歩いていく様子を、庭園に生える一本の木の上から窓越しに見つめる小さな影が一つ。

 それは闇夜に溶ける、漆黒の梟だった。

 その梟の瞳は水晶玉のように丸く銀色に怪しく輝き、遠ざかっていく四人の姿ーー特に銀の髪を揺らす少女をじっと、ただひたすらに映している。


「……見つけました、国王様」


 漆黒の梟の瞳によく似た水晶玉を覗き込みながら、金糸で縁取られた黒いローブを着たその男は、自分の後ろで玉座に深々と座る王にそう言った。

 男の言葉を聞き、王はたっぷりと白髭を蓄えた口元を嬉しそうに歪ませる。


「おお、漸くか!」

「大変時間が掛かってしまい、申し訳ありません。霧の森の濃霧が邪魔をして、魔力を察知するのに手間取ってしまいました」

「見つかったのなら構わない。……して、あの貴重な魔力の源は無事なのだろうな?」


 王の問いに、男は水晶玉を覗き込んだまま答える。


「それが……魔力の源自体は無事なのですが、その周囲に三匹の魔物の姿が見えます」

「な、何だと!?」

「どうやら魔力の源は奴らに捕獲されているようです。今は無事なようですが、いつ捕食されるか……」


 水晶玉から顔を離した男はやれやれと首を振り、何処か芝居がかった手振りと話し方で説明をするが、予想外の事態に慌てている王はそれに気付かない。

 そして白髭を忙しなく指先で弄びながら思案した後、男に向かって言い放った。


「よし、デゼス。お前が其処に行って、魔力の源を取り返してこい。我が国最強の魔術師メイジと謳われたお前ならば、魔物の三匹など軽いものだろう?」


 普通ならば、命の危険が予想されるこの命令を受けた者の表情は絶望に満ちる筈だった。

 しかしデゼスと呼ばれた男はその顔に薄ら笑いを浮かべると、自分を見下ろす王の前に片膝を付いて深々と頭を垂らした。


「お任せ下さい、国王様。このデゼス、必ずや魔物の手から魔力の源を奪い返してご覧に入れましょう」


 恭しげな、冷たい声が響く。

 霧の森からは一羽の梟が静かに飛び立っていった。



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