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未定義感染  作者: 語り屋
16/17

16話

村上は庁舎の廊下の隅に立ち、スマホを取り出した。

呼び出し音が短く響く。


「……もしもし」


「村上か」


「三浦、拘置所の件だ。状況、思ったよりヤバい」


「……」


「最初は収監者の暴動として処理されてたけど、違う」


「……違う?」


「薬物でも精神疾患でもない。これは、明確に感染症だ」


三浦は短く息をのむ。声は出さずとも、耳の向こうで静かに驚きが伝わる。


「感染症……か」


「そう。しかも普通の感染症じゃない。接触、具体的には噛まれたら感染する。未知の感染症だ」


「……」


「職員も感染した。体調不良、意識障害、そして症状は収監者と同じ。医療担当者から聞いた話だと、最初は薬物の影響かと思ったらしい。でも、職員まで同じ症状になったことで、感染症の疑いが強まった」


三浦は短く息をつく。

言葉は少ないが、内心で驚きと焦燥が渦巻く。

噛まれたら感染――この単純なルールだけで、被害は爆発的に広がる。都市部の密集度、人口、接触頻度を考えれば、数日で手に負えない状況になる可能性がある。


「……で、どうするつもりだ」


村上は一息つき、言葉を選んだ。


「俺は警察庁ルートで動かすことにした。公式には無理でも、内密に手配できる方法がある。現場の医療担当者も協力してくれる」


「……なるほど」


「数日以内に拡大を抑えなきゃ、日本全体が危ない。噛まれたら感染する未知の感染症だ。これを放置したら、被害は爆発的に広がる」


三浦は短く息をつき、静かに頷いた。

寡黙な彼の声はないが、目の奥には緊張と焦燥が宿る。

理解した。事態の重大さも、時間的猶予の短さも、逃げられない現実も。


「……村上、わかった。俺も動く。ただ、官邸としては……」


「官邸?」


「お前からの情報がなければ、官邸は動かない。俺を含め、整理されていない断片だけじゃ、会議は開かれず、決定もされない」


「……そうか」


「でも、独自で動く。お前のルートも使って、俺たちができることはやる」


村上は頷き、スマホを握り締めた。

行動は、すでに始まっている。

公式の手順では間に合わない。だからこそ、

**私的な手段で、迅速に動くしかない**。

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