第3話 石の名前
やぁ、皆が大好き。スリー第三王子さ!!
俺がランラン、リンリンの姉妹から詳しく話を聞いたことをまとめよう。
先日、騎士団により壊滅された人身売買カルテル。
その主要組織の下部組織、『バルビツール』は遥か昔に潰れた組織を再現したものらしい。その組織は子供をメインに扱う売買組織。子供達を売ると言えば一言で済むが、客の色んなニーズにこたえて売るのが組織の特徴なんだとか。
「性奴、労働奴隷、養子、臓器、生き血、人形の素材、実験台。売られ方は本当に様々なんだそうです。」
ランラン達姉妹は、見張りにそう言われたらしい。
「ただの脅しだとは思わなかったの?そういうのってコストがかかるから商売向きとは言えないのだけれど。」
「そう言った親友は人形の素材にされました。眼球をくりぬかれ泣いている友人を見てもなお、楽観的な考えを抱けるような人間では私はありません。」
お友達はその後拷問好きの変態に売られて、その一週間に骸となって帰ってきたらしい。そして死体愛好家に再度売られたそうな。無駄のないリサイクルだね。
そのリサイクルの事を脳裏に浮かべたのか、憤怒と絶望の表情を浮かべてランランは拳を机に叩きつける。
「苦悶の表情がへばりついたまま肉塊となって帰ってきたあの娘を見て、私は決心したんです!リンリンだけは絶対に逃がすと。例え何を犠牲にしようとも。」
「ふーん。」
妹の為、か。
「同じく妹を持つ兄として分かる気がするよ。妹の為なら何だってするよね。それが兄姉の責務ってもんだ。」
「ええ、そう「やっぱごめん。分からないや。」…!?」
冷や水を浴びせられた様な表情をしているランラン。けど、ごめん。やっぱり分からないや。
「俺だったら妹よりも面白そうな人がいたら絶対そっちを助けるや。ほら、家族だからって贔屓しちゃだめじゃん?」
「…そ、そうですか。」
「話がずれっちゃたね。それでどうしたの?」
心なしか俺との距離を感じるけれど、ランランは先ほどの続きを話す。
「私。そして妹のリンリン。そして後数十人が同じ大きな檻の中にいました。部屋にはその大きな檻が一つと、見張りが一人。後は何もありません。小さな灯が三つほどです。」
「その檻は鉄製?」
「‥‥分かりません。しかし素手で破ることはできませんでした。」
ふむ。。。
ランランちゃんの情報を聞いて、俺は考えてみる。
その『バルビツール』とかいう組織が踏襲した組織に心当たりはある…。確か『ウルフェイク』とか言う名前だっけか?
けれどあれは影長が昔一掃した筈だ。影長が一掃してもなお生き残りがいたとは考え辛い。ましてや彼等が把握していない生き残りがいるとは。。。
ということは、彼等はその組織の噂やビジネス方法を真似しているだけのパチモン集団と捉えるべき。けれど、並のごろつきにあんなビジネスができるか‥‥??
あそこの首領はかなりのキレ者だった筈。だからこそ、騎士団ではなく影長が出てきたのだが‥‥。
「…あの。」
不安そうにこちらを見るランランちゃんを見て、慌てて意識を会話に戻す。
「あ、ああ。ごめんねランランちゃん。それで、君達はどうやって抜け出したのかな?」
「…それである日。運よく看守が鍵を閉め忘れたんです。」
運よく、か。
「それは余りにも運が良いね?」
俺が首領ならその看守は今頃見せしめで全身火炙りだな。
「はい。でも驚きではありませんでした。」
「そうなの?」
ランランちゃんの言葉に俺は驚きを隠せずつい声に出してしまう。
「ええ、その看守はそういった事をよくするのです。酔っていたのか、それとも態となのか。それは私には分かりません。けれど、鍵を開けっぱなしにするのは一度や二度ではありませんでした。」
「へー‥‥。いや、鍵を閉め忘れるってことはその看守は一旦鍵を開けたってこと?」
俺の確認するような問いかけに、ランランちゃんは肯定の意を込めてこくりと頷く。
「ええ。」
「なぜそんなことを?」
「『味見』と称して檻の中から何人かを連れ去り、数時間程楽しむのです。」
商品にするには飽き足らず、個人的欲望の捌け口にしているのか。下衆だね。
幸い、ランランもリンリンも『上物』らしく。傷が付くと著しく値段が下がる為、そう言った目には遇わなかったそう。
けれど同じ檻から連れ去られた子が何人もいたらしい。
「それで、鍵が開いていたから逃げ出したと?」
「ええ。」
「罠かもしれなかったのに?」
「全員で一斉に逃げ出したのです。何人か捕まるかもしれませんが、全員がこのままの状況でいるよりはマシだろうと言う事で。」
成程。一対一の鬼ごっこなら必ず看守に分があるが、多対一なら逃げる側に分があると思ったわけか。
「それで逃げれたの?」
「ええ。といっても全員ではありませんでしたが。」
「だろうね。そうして部屋から脱出して外へ出たのかい?」
「はい。檻から入口の道順は分かりませんでしたが、とにかく走って走って。リンリンを連れて走っていたら偶然外に出ることができました。」
「またしても幸運だね。」
「ええ。あの時ほど女神様に感謝した日はありません。もし逃げ切れなければ、どんな目に遭っていたのか‥‥。」
ランランちゃんは心の底からそう思っているようで、少し声を震わせながらそういった。眼を軽く閉じて落ち着こうとしているけれど、声は依然として震えているまま。
よく見れば、両手も軽く震えている。
「そこでジアゼパムファミリーの構成員に出会ったの?」
「はい。急いで事情を説明しました。すると私達を保護し、すぐに組織を壊滅せんと。。」
「ふーん。良かったね。」
「はい。ジアゼパムファミリーの方々には感謝しかありません。」
「そっか。」
そこから俺は、自分が王子であること。そして彼女の証言から『バルビツール』とかいう年下嗜好変態組織を潰すことを約束。
そこから先のランラン達との会話はローズに任し、俺は外で待機している大親友であるケタミンに彼女達の話した内容を告げる。
「どうでしたか王子?」
「バルビツールとかいう変態組織がいた。君達が救った。以上。」
「だから言ったじゃないですか。俺達は悪さしていないって。」
「そうだねごめんね。それよりケタミン達はその組織をどうしたの?」
「その姉妹を保護してから、彼等の独占市場を潰し、商品にされていた子供達の大半は保護できました。幹部もシメましたし、舐めた真似しないように晒し首も設置しました。」
「それで?」
追加の俺の質問に対して、バツが悪そうに目を下に向けるケタミン君。
「‥‥それでですが、ボスや副ボス、あと数人の主要メンバーの所在は掴めていません。」
「駄目じゃん。幹部メンバーは数人しか捕まっていないのかい?」
「…ええ。」
唇を噛みしめて、悔しさを表情に出すケタミン。こういう組織を根本から潰すには、大元を叩くのは必須。その為に幹部、ないしは首領は必ず消したい。
「そっか。こっちでも探してみるよ。」
「ご協力感謝します。」
「ああ、ところで聞きたいことがあるのだけれど。」
「はい、何ですか?」
質問されるとは思わなかったのか、きょとんした顔で俺を見るケタミン君。そんな彼を見ながら俺は、始めから疑問だったことを尋ねる。
「ケタミン君は何であの二人を俺に見せようと思ったの?」
「ああ、そのことですか。」
彼は得心がいったと言わんばかりに手を叩く。
「バルビツールのボスであるスイートビが寵愛していると聞きましてね。それなら王子に見せたら何かあるかなと。」
「成程。。。。それは同じく保護した子から聞き出したのかい?」
「はい、その通りです。あの姉妹以外にも逃げ出した子達がいたので、その子達から聞き出した所そうなりました。」
「そう…。」
寵愛‥‥、ね。ランランちゃんはそんなこと言っていなかった。
どうやらランランちゃんにも何か隠し事があるようで。
「もしもし、影長??うん、俺だよ。ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ。そうそう、『魅了』の言霊についてと、あと帝国からの流れ人について。ああ、あと。『キャンセラー』持ってたよね?それ二個分頂戴な。‥‥うん、うん。じゃあよろしくね。」
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