18/45
広瀬と見つめ合う
広瀬はアカコの肩に手を置き真っ直ぐな目で見ている。
男の人とこんな間近で見つめあうのは初めてだ。
広瀬の手が置かれた部分が発熱し始めている気がする。
「では、アカコさん、桐生先生の写本を返して下さい」
「……えっ!……あっ!だめ!返さない!」
不覚にも広瀬の瞳に釘付けになっていたが、写本を要求され現実に引き戻された。
「やっぱり!
アカコさんが写本を持っているんですね!」
しまった!
広瀬に言質を取られてしまった。
「どこにあるんです?」
広瀬は無遠慮にアカコの部屋に入って来た。
「きゃー!出てってー!」
アカコは思わず叫んだ。
「あっ、いや、すみません!そんなつもりは…女性の部屋に勝手に入ってしまって…すみません!」
広瀬はアタフタと廊下に退却した。
「どうしたのー?」
二人の騒ぎに気づいたのだろう。台所の方から恒子の心配する声が聞こえた。