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広瀬は悪くない
「何を騒いでるの?」
恒子が駆けつける。娘の部屋の前には広瀬がいて、部屋の中には泣きそうな顔をした娘がいる。
二人の間に流れる不穏な空気を恒子は嗅ぎとったらしい。
「広瀬さん、あなたのことは信頼しています。でもアカコはまだまだ子供なんですよ。傷つけるような真似はよして下さいね」
いつになく厳しい口調で広瀬に詰め寄った。
「申し訳ありません。でも、誤解です。アカコさんを傷つけるつもりは…」
誤解され責められ広瀬は青くなっている。
ここで広瀬を悪者にしてしまえば鈴木家から追い出すことだって可能だ。
そしたら写本をとられなくてすむ。宮内省図書寮への案内を頼むのは広瀬でなくとも誰か別の人でもいいのだから。
でもアカコの口から出たのは
「やめて、広瀬さんは悪くないわ」
だった。




