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21話 自警団結成。シドの帰還とリナの絶叫

 朝になってリナ様に昨夜の顛末を説明したら危ないことするなって怒られた。

 

 昨日の昼に命懸けの大暴走の末に半泣きだったの誰でしたっけ?ってボソッと言ったら聞かれててもっと怒られた。


「よし、まずは明るく挨拶からです。リナ様もいつもより元気出していきましょう」

「それはいいけど、イアックが考えてるような気まずい感じにはならないと思うわよ」


 むしろ感謝されてるだけでしょうと言って呆れた顔をするリナ様。

 

 いや、どうだろう。

 傷心した直後の人に言いたい放題言った手前少し気まずい。


 でもそういう時こそ元気に挨拶ってシゲ爺が言ってた。とにかく俺は反省しよう。デリカシーをもっと勉強するべきだ。

 

「ほらイアック!修練場に着いたよ!難しい顔してないで中に入りましょう」

「はい」


 リナ様に促されて修練場の扉を開ける。


「「「リナ様!師匠!おはようございます!」」」

「おおおわぁ!?」


 な、なんだなんだ!?完全に油断してたよ。びっくりしたぁ。


 ってあれ?


「おはようございます。みんな揃ってるみたいだけどまだ鍛錬の時間になってないよ?って言うより約束の時間まで後1時間あるよ?」


「イー兄あのねー。みんな早く鍛錬したくてウズウズしてたみたいなの」

 

「そうなの?」

 

「うん。アンとレー兄がライフ術のお話したらすごく喜んでくれて、何だか私たちより子供みたいだったよ」

 

「アンちゃん!?何で言っちゃうの!?イアックさん……お恥ずかしい話を申し訳ありません」


 顔を赤くして狼狽えるジーナさん。

 落ち込んだ様子は見られないし、ある程度は自分の中で整理をつけられたのかな。

 

「イアックさん!」


 カシムさんが声をかけてくれた。

 こちらも昨日を引きずっているようには見えない。むしろ目を輝かせているようにすら思える。

 

「昨晩はヤムを止めていただき、ありがとうございます。それなのにきちんとお礼も言えず、申し訳ありませんでした」

 

「カシムさん、こちらこそ配慮が足りなくて申し訳ない」

 

「……あの後レーヴとジーナと3人で話し合いました。ヤムのこともありましたが、それよりもレーヴの夢の話が衝撃的でした。なんて希望のある話なんだと……そして俺たちも、もう一度夢を持って生きたいと思いました」


 レーヴ君の夢、それはマナ不全者に希望を与えられるようになること。

 なんだ早くもみんなに希望を与えてるじゃないか。すごいよレーヴ君。


「今朝、皆と話し合って決めました。俺たちの夢は子供達が安心して暮らせる環境を作ること、そのために今日から死ぬ気で頑張らせていただきます」

 

「わかりました。その夢、全力で応援させていただきます」


 こうしてマナ不全者10人を擁するライフシード自警団は結成された。

 

 

 ライフシード自警団結成から1週間が過ぎた。毎日の鍛錬の甲斐もあって全員メキメキと上達している。


 まだみんなレベル1になってないから実感が湧かないと言っているけど、大分タフになってきているのだ。

 

 鍛錬1週間で早くも成果が出始めるなんてみんな素質あるんじゃないかな。


「イアック!私の習熟度も見て!」

「リナ様、承知しました。では失礼して」


 俺はリナ様の手にライフを流す。するとリナ様のライフが俺のライフにしっかりと抵抗してきた。


「おめでとうございます。今日からリナ様もライフアーツレベル1ですね」

「いいやったあぁぁあ!」


 喜びを爆発させるリナ様。リナ様も随分と早くレベル1になったな。弛まぬ努力の賜物だ。


「リナお姉ちゃんおめでとう!」

「ありがとうアンちゃん!屋敷に帰ってもイアックが鬼のスパルタ鍛錬やらせてくるから本当に大変だったのよ!」


 誰が鬼だ誰が。


「リナ様は早めにレベル1まで行って欲しかったから仕方ないんですよ」

「???なんでよ?」

「そりゃあ……多分リナ様は近いうちに――」

 

「帰ったわよおおお!!!!」


 突然あたりに響くデカい声。

 リナ様と会話を中断して振り向くとそこには王都から戻ったシドの姿があった。

 

「パパ!お帰りなさい」

「シドおかえり」


 王都へ旅立ってから約一月、シドが帰還したようだ。

 帰るのは早くても30日かかると言っていたからやることやったらすぐ帰ってきた感じかな。

 

「ただいま。2人とも変わりなかったかしら?」

「あはは……まぁ色々あったわ。後で報告するね。ところでパパの方はどう?」

「大成功よ!イアックに言われていたこと全部うまく行ったわ!」


 おお!結構難しいミッションだったと思うけどやり切ったのか。凄いよシド!

 

「流石は領主様!こっちもシドに追加の仕事というプレゼントも用意しといたからね」

「何よそれ嬉しくない!」


 軽口を叩きながらシドとの再会を喜んでいると、荷馬車を連れたエルナさんがやってきた。

 

「リナ様、イアック殿、お久しぶりです。食料や日用品など、仕入れてきましたよ」

「ありがとうございます。助かります」


 エルナさんには追加の仕入れをお願いしていた。

 魔除けポーションの製造をしている分、ライフシード領の食料自給率はどんどん下がっていくし、今後は食料関係が外部頼みにシフトしていくからね。

 

「旅の道中、シド様からたくさんの話を聞きましたよ。イアック殿、あなたは只者ではありませんね」

「えっと、何を聞いたかわかりませんが大したことないですよきっと」

「ご謙遜を」

「いやいやいやいや」


 エルナさんから向けられる視線が以前とは全く違う。

 何を言ったんだよシド……。あんまり変なこと言ってないといいけど……。


「それにしても借金も無くなったし、治安もかなり改善された。魔避けポーションの生産も目処が立ったし、ライフ術の鍛錬と自警団も順調。シドも王都での仕事が大成功したなら言う事なしだね」


 ここまでくればライフシード領が抱えていた問題の多くが片付いたと言っていいだろうな。

 

「ねぇパパ、それってもしかして……これで私達は……この領地は大丈夫になったって事?」

 

「そうね。まだ気が早いと言えばそうだけど、暗中模索の状態ではなくなったと言っていいでしょう」


 シドも同じ考えか。

 まだまだやらなきゃいけない事は山積みだが、取り敢えずライフシード領崩壊寸前という状態からは抜け出したと言っていいだろう。

 あっという間だったようなすごく長かったような。濃厚な1ヶ月だったな。

 

「グスッ……本当に良かった。これでライフシード領を盛り返して行けるのね」

「良かったですねリナ様」

「本当に……リナちゃんにもイアックにもコスタにも、そして領民みんなにも、領主として感謝するわ」

「ううう……嬉しいよぉ」


 泣き笑いのリナ様。これで学業を中断してまで戻ってきたリナ様の、ここでやるべき事は全てやり切った。ミッションコンプリートと言っていいだろう。

 

 だからこそ、シドもリナ様も俺も、次のステップに進まなければいけない。それはつまり

 

「と言うことでリナちゃんは近々学園に戻りなさい」


 一旦お別れということを意味している。

 

「………………はえ?」

「リナちゃんが本来やるべき事に戻りなさい。つまりお勉強よ」


 リナ様を早めにレベル1にしたかった理由はそれだ。休学してただけなんだから戻らないといけないからね。


「ええええええええええええ!?」


 リナ様の喜び?の絶叫がこだました。リナ様、頑張ってください。俺は心の中でエールを送った。


 しばしのお別れ。俺は「寂しいなぁ。でも仕方ないことだし、リナ様頑張れ」なんて思っていたけど、この時は全くわかっていなかったんだ。

 

 後に俺も学園に行くことになるなんて……。

お読みいただきありがとうございます。

毎朝6時更新頑張ります。


ライフシード領の問題がひと段落しました。


またお越しいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。

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