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14話 勧誘と死にかけ兄弟

本日2話目です…

 世界は魔法を中心に回っている。

 

 『魔法こそが至高である』


 それが世界の常識。故に人々は魔法の源であるマナを増やすべく自己を研鑽する。


 しかしマナの成長には個人差がある。誰もがすごい魔法使いになれるわけではない。

 

 そして個人差は残酷だ。

 短期間でマナが大きく成長する人もいれば、努力しても極端に成長しない人もいる。

 それは一生変わらない生まれ持った体質。

 

 人々は魔法を極めし者に憧れる。


 

 ――その一方で魔法を使えぬ者を差別する。


 ◇

 

「と言うわけで今から行くところには生まれつきマナがあまり成長しない体質だったことで他領で辛い目にあった人達が集まってるってわけ」

「なるほど」

 

 王都に旅立つシドにいってらっしゃいの挨拶を済ませた後、俺とリナ様は町外れに住む人達に会いに行こうとしている。


 目的は人材登用だ。領内の見回り程度でいいので治安維持活動に協力してくれる人を探す。

 あわよくば自警団とか結成できたらいいとも思っているけど。


 一応魔物や賊が出たら俺が対応することになっているものの、実際には1人で町中を見てることなんて無理だからね。誰か手伝ってください!

 

「それにしてもライフシード領って過疎化が進んでるって聞いてたけど普通に人いるんじゃないですか」

「……行けばわかると思うけど、今から会う人たちはみんな元気がなくて……働き手としてカウント出来なかったのよ」

「そうなんですか?」

 

 ここまでの道すがら、これから会いに行く人たちの境遇はリナ様からざっくりと説明してもらった。

 ずいぶん酷い目にあった人達だってことは理解したけど……。


「自分たちの未来に希望を持てなくなってるの。彼らは《マナ不全者》なんて呼ばれて差別の対象になりやすいし、どうしても苦しい人生を強いられるのが実情だから……」


 マナ不全……ね。生まれつきでそんなことになってたらやってられないよなぁ。

 

「なるほど、そこで俺のライフ術の出番なのか」

「そう言うこと。それがパパのアイデアね」


 実はマナ不全者の人達に協力をお願いしようと言い出したのはシドだ。神の園にいる頃からライフ術ならその人達に希望を与えられるのではないかと思っていたらしい。

 

「ねえイアック。あなたのライフ術は誰でも覚えられるの?」

「うーん……多分!」

「何よそれ……」

 

 そんなこと言ったってライフ術を人に教えたのなんて数人程度なんだよ。前例が少なすぎるから大きなことは言えない。でも多分大丈夫な気はしてる。


「とにかく行って話してみましょう」

「……そうね」

 

 ダメ元なんだからとりあえずやってみればいいじゃないってことだよね。


「着いたわ」


 リナ様に案内された場所はボロボロな小屋が10軒程建ち並び、汚れた服を着て道の端に座り込んでる人がチラホラいる。そんな場所だった。

 

 (え?これってスラム?)


「リナ様、本当に……マジでみんな元気なさげですね……。っていうか目に光がないんですが……」

「ここの人たちも満足に食事ができてないし、心が傷だらけになっているのよ……」


 この人たちは未来に絶望してしまっている。

 マナが成長しないっていうのはこんなにも人の目から希望を奪うものなのか。


「……とりあえず話をして回りましょう。案外みんな乗り気になってくれるかもしれないし」

「そ、そうよね。明るい話をするわけだし、みんな元気を取り戻すかもしれないわね」


 それから俺とリナ様は<やってみなくちゃわからないの精神>で協力者を探し歩いた。



 ◇

「全然ダメですねぇ…」

「うん……」


 あらかた説明して回ったが、いい返事は1つも貰えなかった。

 

 反応は人それぞれだったが結果は全員NO。

 怪しまれてるのか……?

 

 もちろん領主命令って形で強制することは出来るんだろうけどそれは悪手だろう。真剣にやってくれなきゃむしろ邪魔になるし。


「ここが最後ですね」


 最後の民家だ。ここでダメなら収穫0。

 

「イアック、ここはダメかもしれない」

 

「いやいや、ここまで来たら最後まで<やってみなくちゃわからないの精神>を貫きましょうよ」


「そうじゃないの。ここの人たちは身体がすごく弱いのよ」

 

「???」

 

「ごめん、口で説明するより見てもらった方が早かったわ。行ってみましょう」

 

「そうですね。行きましょう」


 俺は最後の一軒の扉をノックする。

 

「ごめんくださーい」


 ノックも声掛けも反応なし。留守か?

 

「多分体調が悪くて起き上がれないのよ。中の様子を見てみましょう」

 

「え?そんなに?」

 

 勝手とは思ったが何だか起き上がれないらしいし、家の扉を開けることにする。

 

 ガタガタと建て付けが悪くなっている扉を開けると中には10歳くらいの女の子が青い顔をして横になっており、その側で若い男性がうつ伏せで倒れていた。


「ちょっ!?《レーヴ》!《アン》!どうしたの!?」


 まさか家の中で人が倒れているなんて思ってなかったリナ様は盛大に慌てた。

 事件発生か!?と疑ってしまうような状況だ。だけどそんな時に俺は別のことに驚いていた。


「リナ様、この2人はやばいよ」

「見ればわかるよ!?まさか死んでないわよね!?」

「う……」

「リナ……おねぇ……ちゃん?」


 2人とも取り敢えず意識はある。と言っても実は俺、死んでないことはわかっていた。


 何故ならこの2人からとても強いライフが感じられたから。

 

「アン!良かった。それにレーヴも生きてるわね。でも2人とも顔が真っ青よ」

 

「リナお姉ちゃん。今日はなんだか変……なの。苦しくて……辛いよぉ……ううう……」

 

「……リナ様……すいませんッス。今日は畑仕事に行けません。アンが……アンが……」

 

「レーヴ、あなたも真っ青よ。一体何があったの?」


 2人とも相当具合が悪そうだ。意識はあっても今にも死にそうって感じ。

 

「わからないッス……最近調子が悪いとは思ってたけど今日は動けないほど酷くて……」


 そう言えばさっきお嬢がこの2人は身体が弱いって言っていたな。

 

 でも見たところ、これは身体が弱いわけじゃなさそうだけどなぁ。


「イアック、お医者様を!……って今はもう領地を出ていったんだった。どうしたら……」

 

「レー兄……苦しいよ。リナお姉ちゃん助けて」

 

「アン……」

 

「くっ!イアック!とにかくすぐに誰か呼んできて!」

 

「ちょっと待ってくださいリナ様。横を失礼します」


 俺は小さな女の子、アンちゃんのそばに座るリナ様の横に移動した。

 そしてアンちゃんの手を両手で包み込むように握る。


「ちょっと!イアック何してるの!?」

 

「リナ様、試したいことがあるので少しだけやらせてください」


 アンちゃんの手から俺のライフを流し込む。

 俺の見立てが正しければこうして俺のライフでアンちゃんのライフを整えてやれば――

 

「あれ?苦しくない」


 ――よし、治せた。

 やっぱりこれは《ライフ暴走》だ。

 ライフが強すぎる人に起こる症状。

 

「アン!?」

 

「一体何が……あんたアンに何をしたッスか!?」

 

「レーヴ君だっけ?君も手を出して。楽にしてあげるから」

 

「え?え?何を言って……」

 

「まぁまぁいいからいいから」


 説明を省略してレーヴ君の手を握る。アンちゃんにやったようにライフを整えた。


「何スか……これ。暖かいような、清々しいような、苦しさが消えてむしろ力が湧き上がってくる」

 

「あ、もしかしてそれってあの時私にやってくれたやつ……?」


 そういえばリナ様には盗賊の一件の時似たようなことやったな。

 

「ちょっと違うけど似たようなもんです。そんでそろそろ終わります……はい終わりましたー」

 

「すげえ……さっきまでの体の不調が嘘みたいになくなってるッス!」

 

「お兄ちゃんすごい!」


 アンちゃんからの尊敬の眼差しをいただきました。やったぜ。

 

「え……?もしかしてこれで完治しちゃったの?これって今まで不治の病扱いだったんだけど……?」

 

 マジで!?これ不治の病扱いなの!?

 もしかしてこれで死んじゃった人とか大勢いる感じ!?こんなのライフ術の初歩が出来たらどうとでもなるよ!?

 

「まぁ……再発しますよ。というかこれは治る治らないの話じゃないので」

 

「また苦しくなるの?ううう……やだぁ」

 

「え?あ、ちょ、泣かないで泣かないで、まだ話は終わってないよ?」

 

 涙ぐむアンちゃん。オロオロする俺。目を白黒させるリナ様とレーヴ君。


「あのね、アンちゃんたちが苦しかったのはライフが暴走してたからなんだ」


 俺は3人に説明する。

 強すぎるライフは体を蝕むことがある。

 これを防ぐためには暴走するライフを整えなければならない。

 自分のライフを自分で整える。それはライフ術の初歩だ。

 

「ライフ術……それを扱えるようになればもう苦しまなくて済むッスか?さっきあんた……いや、貴方がやってくれたように」


 お?なんかレーヴ君とアンちゃんからの眼差しがすごく好意的なものになったかも?

 

「そうだよ。だからさ、ライフを使う技術、ライフ術を覚えてみない?」

 

 さぁここからが勧誘だ。

 後ろでリナ様が「ここで勧誘するのね……絶対断れないやつじゃん」とか言ってるけど無視だ無視。


 ライフ暴走を起こすほどライフが強い兄妹なんてすごい!

 こんな逸材を逃す手なんてないよね!絶対協力してほしい!


「やるッス!俺にライフ術を教えてくださいッス!」

「アンもやる!」


 おおお!やったぜ乗り気だ!

 

「もし良かったらライフ術の戦闘技能ライフアーツを使った自警団を作りたいんだけど入ってくれないかなぁ?今より劇的に強くなれるしお給料もちゃんと出るから」


 是非入って欲しい!絶対強くなるよ!


「自警団……入るッス!でも病気は治るし強くなれるし仕事までもらえるなんてそんな夢見たいなこと……いいんスか?あ、でもアンに危険なことはさせられないッス……」

 

 おおおっしゃぁ!初の勧誘成功だ!やったぜえええええ!


「もちろんいいんだ。実は誰も協力してくれなくて困ってたんだよ。アンちゃんはライフ術の訓練に参加するだけで十分だよ」

 

「アンも強くなれる?レー兄の役に立てる?」

 

「もちろんだ。元気になっちゃうから何でも出来るようになる」

 

「アンも頑張る!」


 よっしゃあ!いやぁ良かった何とか成果0は免れたようだ。

 2人ではまだ少ないけどこれからも地道に勧誘してくしかないな、うん。


「あの、貴方のお名前を教えてくださいッス」

「俺はイアック。よろしく!」

「わかりました!イアック師匠!」

「師匠!?な、なんかこそばゆい……」


 これが俺と後にライフ術の天才と呼ばれるレーヴとアンとの出会いだった。

お読みいただきありがとうございます。

毎朝6時更新頑張ります。


レーヴ:イアック師匠!

イアック:師匠呼び、なんかいいかも。癖になっちゃうかも。

リナ:い 私もライフ術を習うから師匠呼びした方がいい?

イアック:それはシドが帰ってきた時説明が大変そうなので却下で(本当は呼ばれてええええええ!)


またお越しいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。

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