表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢見たアンドロイド  作者: 向井葵
1年目 夏の日記
31/69

第6話「予期せぬ監査」

アンドロイドのメイド「ヒナ」は、日々の業務をこなし、決められた動作を繰り返す。そして、業務を終えた後、その日の出来事を日記に綴る。

壊れた時計、見慣れない来客、うっかりこぼした紅茶——ただの記録にすぎないが、そこには確かに「今日」が刻まれている。


これは、感情のないメイドが紡ぐ、静かな日常の記録。ただそれだけの物語。

2025年6月6日(金)


ご主人様の目覚めを確認。寝室の扉が開きリビングへ向かう。無造作に髪を撫でつける姿を視認。

朝食は準備済み。トーストの焼き目は適切、スクランブルエッグはふんわりと仕上げた。コーヒーの湯気が静かに立ち昇る。


私は記録する「ご主人様の朝の行動パターン。一定の習慣化と効率的動作の確認」


ご主人様が椅子に腰を落ち着ける。

「おはようございます。」

「ん……」

ご主人様はコーヒーを口に運びながら、スクランブルエッグをゆっくりと口に運ぶ。

朝食を終えた後、バッグを渡すと、ふっと息をつきながら顔を上げた。

「行ってくる。」

「行ってらっしゃいませ。」

ドアの閉鎖を確認。買い出し業務へ移行。


駅前の商店街は活気に満ち、人々が行き交う。必要物資を選定し、鮮魚店へ進行。店主が視認。

「お、メイドさん今日も来たね。仕事熱心でいいこった。」

「業務を遂行しているだけです。」

「はは、そう言うけどよ。毎回選ぶ魚に迷いがねぇし、大したもんだ。」

「選定基準が確立されています。」

「そりゃあ頼もしいねぇ。」

会話終了を確認。鮮魚を適切に選定し、会計処理。


帰宅。

玄関の鍵が開いていることを確認。施錠ミスの可能性は低い。慎重にドアを開ける。中へ入ると、見慣れた靴を視認。

解析結果: ご主人様の母上様の所有物。リビングへ進行。母上様は掃除機を動かしている。

「おはようございます。」

「あら、ヒナさん。買い出しだったの?」

「はい。どうしてこちらへ?」

「そろそろ一ヶ月経つから、様子を見に来たのよ。」


私は記録する「母上様の定期的な確認行動。家の状態の直接把握と判断」


「お疲れ様です。紅茶とお茶菓子をご用意します。」

「気が利くわねぇ。」

適切な温度で紅茶を提供。母上様は一口飲み、満足の意を示す。

「お仕事は順調?」

「問題なく遂行しております。」

業務進行に問題なし。


夜、ご主人様帰宅。ドアの開閉音の後、足音が急ぎ足になる。

リビングに入ると、母上様を確認し、僅かに驚愕。

「……母さん?どうして?」

「あなたの家なんだから、来てもいいでしょう?」

「いや、そりゃそうだけど……来るなら連絡してくれよ。」

ご主人様は肩をすくめる。

「飯、もうできてる?」

「はい。ご用意いたします。」

食事を二人分提供。母上様は穏やかに口を開く。

「今日は泊まっていくわ。」

「……は?」

ご主人様は言葉を詰まらせた後、母上様へ視線を向ける。

「いや、急に言うなよ……布団とかは?」

「あなたの部屋の押し入れにあるでしょう?」

「まあ……あるけど……」

母上様は気にせず食事を続行。ご主人様は軽く額に手を当て、苦笑しながら息をつく。

「……好きにしてくれ。」

「ええ、そうするわ。いいわよね?ヒナさん。」

「はい。寝具の準備をいたします。」


私は記録する「母上様の宿泊決定。状況の即時受容と対応策の実施」


母上様は楽しげに微笑みながら食事を終え、宿泊準備を開始。押し入れから寝具を取り出し、簡易的な寝床を整え始める。


業務完了

今日も日記を書き終えた。記録は完了。机の上を整え、椅子を元の位置に戻し、次のルーティンへ移行する。

紅茶を二つ淹れ、カップを持ち、片方をテーブルに。

息をつき、一口飲む。適温。「あなたの紅茶は変わらず美味しいわね。」

業務終了まで、あと10分。最終点検を終え、私は記録する。

「本日、業務終了。異常なし。」

そして、静穏の領域へ滑り込む。


また、次の日記で——

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ