49、酩酊時々、コイバナのち迎撃戦?
49、酩酊時々、コイバナのち迎撃戦?
フィスと共に冒険者の村のダンジョンの奥底に住むシンディの父でヴァンパイヤのドレックァと会う事が出来たヒロは、ひょんな事から酩酊状態
まさか、不在にしている自分の家に王女クレア、魔術学院学院長エイミー、北東のスラムの頭目マリー、そして、ヒロにゾッコンのクリスと幼馴染のリリスが泊まりに来ている事など知る由もない
そして、その王女クレア達に危機が迫る!
「実は、私達、今夜、襲われます!」
"えええええええ???"
ここは、ヒロの家
食前の祈りが始まるのかと思っていたリリスは、突然の王女クレアの言葉に手を組んだまま声を上げた
「え?襲われる?」
クリスはその言葉に、動きが止まる
襲われる・・・
ーーーーーーーークリスの回想ーーーーーーーーーーーーー
あの時、アルジアからの帰り道、ゴブリン達に襲われた時のことが頭をよぎる
護衛依頼を受けてくれタガート達が奮戦してくれたが、回復役のミサが負傷し、ジリ貧状態だった
ゴブリンに襲われたら酷い目に遭う・・・伝え聞いただけでも嗚咽をするような惨劇・・・
もう、いっその事、舌を噛んでしまおうかと思っていた時だった
大きな白い狼が現れた
「通りすがりの者です」
と、言いながら、転がるように現れ、頭を押さえていたヒロの顔は、今でもはっきり覚えている
あの時、ヒロに助けられて、クリスは、自分の一生をヒロに捧げようと誓った
でも、そのヒロがいない!
急に怖くなり、自分の両肩を抱き抱え、下を向いてしまう
だが、"ハッ"となった
「守らなきゃ!
この家を守らないと!
ヒロさんと暮らす、大切な家!」
クリスは、勢いよく顔を上げた
「いつですか?
くっ、クレア王女!いつ来るんですか!
人を呼んでなんとかしないと!」
急に席を立ち、クレアに詰め寄る
「ちょっ、クリス、待て!」
マリーの声は届かず、クレアの両肩を掴み、軽く揺すってしまうクリス
しかし、とうのクレアは慌てることなく、左肩のクリスの手に自分の右手を優しく添え、左手でマリーを制し
「くっくっクリス姉様まままま、だだだ大丈夫ですわわわわ
準備はわわわ、ばばば万全ですわわわわわ」
"え?"
クリスは、目に涙を溜めて訴えていた
それが、クレアの言葉で、我に返り、間抜けな顔になる
「説明をしますので、座ってくださいな」
ゆっくりと椅子にクリスを座らせる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
数刻前
「マリーさん、お待たせしました」
"ブッ"
レイモンド邸の門で待っていたマリーは、クレアに声をかけられ、その姿を見て吹き出してしまった
「ずっ随分と個性的な格好です、ね」
「はい、闇に咲く麗しき夜花ですわ!」
煌びやかなドレス!
派手な色の何かの動物のようなマフラー?
帽子は、傘か?ってくらいデカい
闇に咲くどころか、夜に彷徨うマンドラゴラのようだとマリーは思った
しかし、マリーは、そんなクレアの容姿の事はさておき
「ちっ、ちょっと襟が曲がってますよ」
と、襟を直すふりをしながら、マリーは、クレアの耳元で、路地裏での怪しい者達の会話を報告し、まだ、そいつらに見られているかも知れぬと伝えた
クレアは、難しい商談中に見せる以上の真剣な顔を一瞬したが、また笑顔に戻り何かを考える
数秒後、"ヨシ"と、小さく声を上げた
「あら、忘れ物をしてしまいましたわ」
と、わざとらしく声を上げ、門兵に対して、何かを告げる
"ハッ"と、敬礼して、2人のうちの1人の門兵が屋敷に向かって走り出した
「あっそうだ、これを見てくださいな」
クレアは、マリーの方に向き直り、手荷物の中身を見せるようにして小声で話しかける
「マリーさん、私、この街に来て、何者かに襲撃されるのは2度目なんです」小声
「え?あっはい」
マリーの耳にも南の門での出来事は、入っている
ヒロが活躍した事を聞いて、惚れなおしていたところだ
「私、このまま襲撃を受けようと思います」小声
「なんで!」
一瞬、普通の声になってしまい、後退りしそうになるマリー
「なっなんですかコレは?」
何をこの人は言ってるんだ?
王女は頭がイカれたのかと思うマリーは、なんとか誤魔化すように、取り繕うように質問できた
「私も王族の端くれ、この国の王族に反旗を翻す者から逃げていては、父上達が笑われてしまいます
それに、そのような者は、いつか国民にも牙を向くでしょう
放ってはおけません
今、私の側近がきますので、作戦を練ろうと思います
マリーさん達には、申し訳ありませんが、今夜のお泊まり会は、またいつか、別の場所でお願いしてもよろしいですか?
はぁ、クリス姉様とヒロ様の事をもっと話したかったのは残念ですが・・・」小声
クレアは、手荷物を一度置き、舞踏会にでも出るのか?っていうようなドレスのヒラヒラをいじりながら、マリーに見せていた
俯くクレアの表情は、闇のせいなのか、暗く沈んでいる
その姿を見たマリーは、心を打たれた
女子会なんて、鼻から興味はなかった、ただ、姉ローズの人生を変えてくれたヒロの家を見てみたかった
いや、ヒロが住んでいて問題ないかを本当に調べたかった、ただそれだけだった
そんな自分本位な考えだったマリーが、目の前の自分より幼い女性の覚悟に・・・胸を打たれた
マリーも、クレアの服のヒラヒラに手を伸ばし、クレアに話しかける
「クレア王女・・・あっあの、私達、ぱっ、パートナーになるんですよね?」
「はっ、はい、もちろんですわ
私も、ヒロ様のお仲間に入れてもらいたいんですの」
マリーは、クレアの言葉を確認してから、"おい!"っ、と、小さく声を掛けた
(へい、ここに)
と、マリーにだけ聞こえるくらいの小さな声だけ返ってきた
(聞いていたな、アイツらを呼び戻せ!
絶対、悟られるなよ!)
(へいっ・・・)
と、返事だけ帰ってきた
派手なクレアのヒラヒラを弄りながら小さな声でマリーは続ける
「クレア王女、それと、クリスは、私が命に換えても守ります
少しでも人数がいた方がいいだっ、でしょう
どうか、協力させてくれっ、さい」
マリーも一瞬で心を決めた
今までも、これからも街の影で生きていくだろうと思っていたし、お偉い奴らなんてどうせ、安全な場所で美味いもん食って俺らの苦しみなんて知らずに生きてるんだろうと今までは、思っていた
それが、自分から囮になるなんて正気の沙汰じゃない
マリーは、この国は、まだまだ捨てたもんじゃないと思い、マリーに手を貸すことにした
いや、そんなクレアを守ろうと思った
「だっ、ダメです」
クレアは、身を引いてしまった!
マリーは、バレると思い、クレアを睨む
「こっ、この衣装は、少々、おっお高いですのよ、そっそんなに引っ張っては、いけませんの」
マリーの申し出を断ろうと、なんとか誤魔化すような会話ができた
しかし、クレアは、マリーの申し出が嬉しかった
一瞬どうしようと思っていたら、1人の男が走ってきた
「クレア様!
先日、襲撃を受けたばかりでしょう
外泊などもってのほかです」
ランディだった
マリーは、面識はなかったが、チャンスと思った
「そっ、そうなんだよ
こんな格好で、お泊まりだなんて、王族だってバレバレなんだよ!
全く、着替えさせてくれよ」
マリーは、"すいません"と、小さく誤り、マリーを抱え込むようにして、ランディに近づく
「おい、お前!何を!」
ランディの顔が一瞬で赤くなり、腰の剣に手をかけようとした時だった
「ランディ!待ちなさい!」
クレアが、ランディに抱きつくように割って入る
そして、ランディの耳元に話しかける
『相談があります、一度、屋敷に入りましょう』小声
「確かにこのお洋服では、目立ってしまいますわ!
そうだ、闇に紛れるようなお洋服に着替えますわ」
と、無理矢理、ランディを巻き込んで屋敷に戻った3人が、また、門に現れるまでにそんなに時間はかからなかった
しばらくして、門に戻ってきたクレア達
「マリーさん、コレなら、目立たないでしょう?」
そう言って、ひらりと回るクレア
長い髪の毛を束ねて被る黒いデカい帽子
上着は体のラインが分かるくらいにピタピタで、下はダボっとしたズボン、色は上下真っ黒で、そこらじゅうに鑑賞用金魚のようなヒラっヒラの付いたお召し物・・・
「はっ、はぁ・・・」
なんで、さっきより目立ってしまう格好を選ぶのか、最初は戸惑ったが、王女と分かりやすい分、守りやすいかもと、自分に言い聞かせるマリーは思いながら返事をした
「クレア様!道中は危ないので、私らもついていきますよぉ」
(棒読みのランディ)
「そっ、それがいいんじゃないかぁ」
(棒読みのマリー)
ランディとマリーがわざとらしく会話する
「さっ、クリス姉様がお待ちしてますわ、行きましょう
すみませんが、そのお菓子は揺らさないでくださいね」
クレアの言葉を合図に、歩き始めた
3人の後ろには、木箱を乗せた荷車を引く衛兵が2人と、押す衛兵が2人
ゆっくり、歩き始めた
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時は戻り、ヒロ邸
「実は、マリーさんが私を待ってる間に、ここを襲撃するであろう会話を聞いてしまったそうなんです
最初は、今日のお泊まり会を中止にしようと思ったのですが・・・」
と、下を向くクレア王女
すると、急にマリーが立ち上がり、テーブルに頭を付けた
「すまない、オレが悪いんだ
王女様が、女子会を中止にして、オレ達をここから出して、襲撃してくるやつらをやっつけるって言いだすから
そんなの聞かされて、我慢できなくて・・・
それと、王女様が、この女子会をすごく楽しみにしたんで、つい」
多分、人に謝罪など普段はしないであろうマリーが、眼をギュッと瞑って謝ってきた
「すっ、すいません
クレア王女、私と、リリスには何の事か分かりません
どっ、どういう事なんですか?」
リリスに寄り添われるクリスがクレアに問う
クレアは、マリーに説明したように、王族に刃向かう者を許せない事を伝えた
「ヒロ様のご自宅を利用してしまう事には心を痛めるのですが、どうか、このクレアのわがままをお許しください
クリス姉様とリリスさんには、安全のために別の場所に避難していただいても・・」
パンっ!
最後まで言いかける前にクリスが、テーブルを叩いた
「ここは!・・・
ここは!私の命を救ってくれた・・・
私が一生を捧げると誓ったヒロさんの家なんですよ!
そっそれをクレアさんは、戦いの場にするんですか?
許せない!」
エミリーとマリーは、それは怒るのは当然だと言う顔でクリスをみている
クレアは、揺るがない意志でクリスを見つめる
「でも、まぁ、いいでしょう
ヒロさんとは建て替えのお話しもしていたので、煮え切らないヒロさんには、いい機会でしょう
しかし、私のような未熟者を姉様と慕ってくるクレアさんを狙うとは、ちょっとムカっ腹が立ってしまいますね」
「クリス?なんかいつもと違うなw」
クリスの言葉が段々怒りを込めて来ていることに、幼馴染のリリスが気付く
「いいでしょう
この際、ギッタンギッタンにやってしまいましょう
リリス、付き合ってくれるよね?」
「ギョッ!はっ?なんて?」
眼を丸くして幼馴染の変わりようにビックリしているリリス
それを黙って見ていたエミリーが、口を開く
「面白いですね
しかし、マリーさんが、クレア王女に手を貸すと言い出してくれた事に感謝しますわ
もし、女子会の中止をしていたら、嫌いになるところでしたよ
いいでしょう、私たちの女子会を邪魔する不届き者に、私が鉄槌を喰らわして差し上げましょう
私、こう見えて、魔法を少々かじっておりますので!」
テーブルの下から、どことなくリネンが持つ杖(元々エミリーの母の杖)に似た短めの杖を取り出して見せ、クレアを見てから、マリーに視線を送る
マリーも、その視線に応える
「決まりましたわね
クリス姉様、新居の建て替えにはワタクシも協力しますのでご安心してくださいね」
すると、ここにいるメンバー以外、誰もいないはずなのに、いきなり人影が現れた
「お邪魔するよ
クレア王女様、お菓子はどちらへ置きましょうか?」
お菓子を両手に抱えて入ってきたのは、なんと、警護隊のダンテだった
「ありがとうございますわ
箱は狭くなかったですか?
お菓子は、そちらに置いてくださいな」
「ダンテさん、カリム、急に巻き込んじまって申し訳ない
この埋め合わせは絶対するから」
お菓子を置くダンテに詫びを入れるマリー
なんと、あの木箱には、警護隊のダンテとカリムが入っていたのだ
実は、マリーが無理矢理ランディとクレアを屋敷に連れ戻した時・・・
警護隊副隊長のダンテ達が、団長の指示で、警護報告をレイモンドに提出しに来て、帰ろうとしていたところ、玄関で慌てて着替えをしている王女達に出くわした
丁度いいところに来たとばかりにダンテに相談したが、王女様の衣服を無理やり脱がすマリーを叱ろうとしたダンテだったが、クレア王女から説明を受け、取るものも取らずに、ダンテとカリムは木箱に押し込められた・・・
「はははっ、団長にバレたら首だわなw
そしたら、マリー、オレ達に何か仕事を紹介しろよ」
面目ないと頭を下げるマリー
「ダンテさん、カリムさん、安心してください
そのような事態になった場合なは、わたくしクレアが、責任をもって、お仕事を斡旋させてもらいます」
ダンテとカリムは顔を見合わせてびっくりしていた
「ところでダンテさん
おうちの中は見られましたか?」
「はい、マリーが気にするほど軟弱な家ではないですね
全ての窓には内側に、取り外し可能の格子、外側には、跳ね上げ式の木窓
玄関も、あの閂では、おいそれと破られる事はないな
この家は、鼻っから防衛を考慮して設計されてたんじゃないでしょうかね?」
みんなが驚いていると
「あっ、そう言えば、裏庭に石化されたフィスさんが埋められていて、この街のギルマス達が代々、ここを管理してたとか何とか言ってました」
クリスが思い出したように軽く2〜3度頷いてから喋り出す
それを聞いたマリーは
「ならば、作戦も少し変えて・・・」
作戦はこうだ!
・ランディ達5人は、家の前を目立つように警護
・裏手はわざと手薄にし、襲撃者達を裏手から裏庭に侵入させる
・裏庭を戦闘の場所に定め、伏せているマリーの仲間が襲撃者の後ろから攻め立てる
・家からは、エミリーの魔法攻撃と、ダンテ&カリムの弓で攻撃
・マリーが、クレア達を守る
・戦闘が始まったら、少し離れた場所に潜む、王族の近衛兵が乱入する手筈になっている
「出来るだけ裏庭で撃退しようと思う
ヒロさんの家は、出来るだけ汚したくないもんな」
クレア王女が王族の人間であるが、クレアをパートナーとして扱うことにしたマリーの口調が昼間に比べると、普段の喋り方に戻ってきている
「それでいきましょう
さぁ、腹が減っては何とやら、私が腕によりをかけて作った料理、ダンテさん達も食べて食べて」
エミリーが席を立ち、ダンテ達の分も食事を用意する
それからは、本当にこれからここが襲撃されるのか?って、不思議に思うくらい楽しい時間が流れる
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ダンジョンの奥深く
「長寿なエルフどの、多分、外はそろそろ夜になると思われるが、どうされる?」
酩酊状態のヒロに絡みまくっているシンディを横目に、ドレックァと故郷の話しなどをしていたフィスにデューイが今夜の予定を尋ねた
「そろそろそんな時間ね?
私は、いいんだけどねえ
人間にとっては、1日、1日が貴重みたいだから、帰ろうかしら」
「それがいいね
どうやら、ヒロくんは、人を惹きつける何かを持っているのだろうから、ここに留め置くと寂しがる人もいそうだし
何なら送ろうかい?」
長命な2人が人間のヒロの事を心配する
「あら、助かるわ
来た時と同じようにしてもらえるかしら
なんなら、入り口の扉の開け方を教えとく?
簡単に開けられるわよ」
「え?扉なんてあるのかい?
シンディは・・・
潰れてしまっでいるね、仕方ない、私もそこまで行ってみよう」
そうと決まれば早かった
一瞬でリザードマン達が集まってきた
「オンジン、オレ、ノセル
オマエ、オレノツマ、ノセル」
皮鎧を着たリザードマンがフィスに声をかけてきた、隣には、少し華奢で肌の色が少し薄めのリザードマン(リザードウーマン?w)が立っていた
「あら、彼を乗せなくていいの?」
フィスは、ドレックァの方を見ながら、皮鎧のリザードマンに尋ねた
「アルジ、ガンジョウ、オチテモヘイキ」
その言葉に、フィスは"クスリ"と、笑い
「ねぇ、アナタ随分とみんなに好かれてるのねw」
フィスがドレックァに皮肉を混ぜて褒めてみた
「あぁ、私は頑丈だからね、みんなも雑に扱ってくれるんだろうねw」
準備が整い、リザードマン達が物凄いスピードで出発する
フィスが後方を確認すると、ドレックァの周りには、リザードマン達が隙間なく這っていた
落ちる隙間もないほどのリザードマンの数
ドレックァがみんなに愛されている事が確認できた
あっという間に、隠し扉のある場所に辿り着く
フィスがダメ元で、ヒロのマジックバッグに手を突っ込むと、簡単に隠し扉のドアノブを掴み取れた
「ここにコレを指して、回して引けば・・・・って、重っ!
何コレ、ヒロってそんなにチカラあったのかしら」
「私はまだ、全快してないので、デューイ頼むよ?」
「お任せあれ」
と、デュラハンのデューイが隠し扉のドアノブに手をかけ、扉を引く・・・
「なっ、何だこの重さは!
フンぬっ!」
と、渾身のチカラを込めてやっと開いた
「コレを恩人殿は開けたのか?」
「えぇ、片手でね」
皮鎧のリザードマンにおんぶされている酩酊状態のヒロにみんなの視線が集まる
「恩人殿は、不思議な人間なのだな」
「かもしれないね、私が歩けるようになったのも、間違いなく彼のおかげだろう」
デューイと主人であるドレックァが頷きながら話す
「まっ、私の石化も解いたのはヒロだしね
お酒には弱いみたいだけど・・・
さっ、行きましょっ」
と、フィスは、髪を靡かせて、さっさと歩き始めた
『え?』『シャ?』
隠し通路にいた全員が驚く
「長寿なエルフ殿よ、恩人殿はどうされるのだ?」
デューイが、リザードマンの背中で寝ているヒロを指差しながら、尋ねた
「えぇぇ?こんなか弱い女性に大の男を担げって言うのぉ
そのまま担いでってよぉ〜」
ドレックァと首の無いデューイが、目を合わせて(目はないけど)驚く
皮鎧のリザードマンは、驚いて立ちあがろうとして、ヒロを落としそうになった
「フィス殿・・・
私たちが、ここから出たら、人間達が驚くと思うよ」
ドレックァが、代表して当たり前の疑問を投げかけた
「あのね、きっとヒロは、あなた達を地下から出て、街で生活出来るように働きかけるんじゃない?
それなら、せめて、この村だけでも人間達と交流してみてもいいんじゃない?
ダンジョンのモンスターとは違うってところを見せれば、きっと大丈夫なんじゃないかしら?」
フィスは、歩みを緩める事なく後ろを振り向き、そう説明してウィンクしてみせた
「おおお!長寿なエルフ殿!なんとお優しい
主!ここは、お二人に身を委ねてみてはどうかな?」
「そっ、そうだね、これも、何かの縁だ
やってみようじゃないか
でも、私は、元々人間達とは上手くやっていたから大丈夫だとしても
君たちの方が、見た目が怪しいぞ!」
デューイは、フィスの言葉に喜んだが、自分に頭がない事を今更気付いた
「フン、ご安心くだされ
ホレ!」
そう言って、どこから出してきたのか、全面兜を鎧に乗せた
「おぬしはどうするのだ?」
頭の位置を調整しながらデューイは皮鎧のリザードマンに問いかけた
「オンジン、ハコブ、オレノシゴト
オレダケイク」
そう言いながら、フィスを運んできた妻と、後ろのリザードマン達に何やら、シャーシャー話しかけた
「あと、その扉は一旦閉めといてね」
通路側にリザードマン達を残し、デューイがチカラを込めて扉を閉めた
ダンジョンから出ると、受付嬢が驚いたが、フィスの仲間だと聞くと笑顔で手を振ってきた
既に空に月が登り、辺りは暗かったので、ドレックァは安心して村を歩き出したが、ヒロを背負うリザードマンとデューイの事が心配で仕方なかった
ニール邸までは、さほど多くはないが、行き交う冒険者が、フィスに鼻の下を伸ばしながら挨拶してきては、後ろの全身鎧とヒロを担ぐリザードマンに面食らうと言う、一連の流れが何度となく繰り返されたが、誰1人として臆する事なく歩いていた
「ただいまぁ
ニール、ごめーん、お客さん連れてきちゃったぁ」
すると、ドドドド!と、音をたてて赤毛のヒューが走ってきてフィスを出迎えた
「フィス姉ちゃんおかえりぃ!
うわぁ!デッカい鎧!
あっ、トカゲさん?もいる
ねぇ、みんなお客さんって事?」
「そうよお客さんよ
ちょっと、ニール達に紹介したいから、伝えてきて」
しばらくしてニールが現れた
「フィスさんおかえりなさい
それと、はじめまして、一応ここの主のニールです
フィスさんのお知り合いなら、遠慮なさらず上がってください
って、随分と大きな方ですねドアをくぐれますか?」
ニールが、デューイの体の大きさを心配した
「おぉ、これはすまぬ
コレを取れば・・・」
無造作に頭を外してしまったデューイ
「うわぁぁぁぁ」
ニールが泡を吹いて倒れてしまった
その後、少しして、居間のソファーでニールは目が覚めた
「ふぅ、夢かっ」
と、目を擦りながら起きあがろうとしたが
「って、ヘビぃ!」
心配でニールを覗き込んでいたリザードマンと目が合い、またもや卒倒しかけたニール
「オレ、ヘビジャナイ、デモ、オキタ、ヨカッタ」
ニールが起きたところへ赤毛の妹のハンナが、濡れた手拭いを持ってきた
「ニールさん大丈夫?
トカゲさん、優しいんだよぉ
ヒロさんを運んできてくれたんだよぉ」
「とっ、トカゲさん?」
ゆっくりと起き上がったニールに、フィスが、凄く簡単にドレックァ達を紹介した
ちょうどそこへ、ノラとヒューがお茶を用意して現れた
「ねぇねぇ、あのおじさんが、シンディ姉ちゃんのお父さんなんだよ」
そう紹介されたノラをドレックァは、立ち上がり唖然として見つめている
「娘がお世話になったそうで、それとハチミツ美味しかったです
でも、アレってどこで覚えたのですか?」
「え?あっはい!
私が小さい頃、体調を崩した時に、母がよく作ってくれたんですよ
口に合いましたかしら?」
笑顔で答えるノラをドレックァは、遠くを見るような目で見つめていた
「ノラ殿のご先祖は西の方の出身ですか?」
ノラが、口に手を当て驚いた
「分かります?
両親とも西の方の小さな村の出身でして、若い頃に冒険者をしていて、駆け落ちして、この村に辿り着いたと聞いてます」
「へぇ、そうなんだ
なかなかロマンチックな話ね」
ノラの話しをフィスがお茶を啜りながら答えた
ドレックァは、ノラが作ってくれたと言うハチミツ漬けを舐めた時から分かっていた
あれは、妻サンディの母がよく作ってくれていた物と同じ物だったのだ
約400年ぶりに妻の故郷の味に触れられて一体どんな人が作ったのかと気になっていたが、ノラの顔を見て、話しを聞いて納得した
間違いなく、ドレックァの故郷の村の隣村の出身だろうと・・・
シンディが、妻サンディに似ていたような事を言っていたが、あながち間違いではなさそうだ
「本当に美味しかったです
このように元気になれました
出来れば、料理が下手な娘のシンディに後で教えてあげてもらえませんか?」
「あら、喜んでいただけたのでしたら嬉しいですわ
シンディさんにいつでも遊びに来るようにお伝えください
ニールさん、お願いです
ハチミツを多めに手配していただけますか?」
そんなやり取りを何とか起き上がったニールが手を軽くあげて聞いていた
ニールは、ダンジョンとは別の通路がある事や、他にも言葉を理解する者が、地底深くに住んでいる事を聞き、今後の村のあり方を考え直すべきだと思いはじめていた
「逃げろ!」
穏やかな雰囲気の部屋で、突如大声を出したのは、もう1人、ソファーに横になっていたヒロだった
「どっ、どうしたんですか?」
慌ててニールが問いかけるが、ヒロは、寝ぼけていたかのような、ボケェっとした顔をしていた
「あっ、いや、あれ?
ここどこ?
ってか、あれ?夢?
何か、変な奴らが、蒼い炎を投げてきたんだけどっ、あれ?
うちじゃないね?
ヒック」
ヒロは、悪い夢でも見ていたのか、寝ぼけ眼で、そう言うとまた、横になってしまった
「ヒロさんは、かなり呑んだようですね」
「えぇ?せっかく美味しいお酒を出してくれたのに、ちょっと呑んだら、こうなっちゃったのよぉ」
ニールに対して、肩をすくめて、ヒロの酒の弱さをボヤいたフィス
「蒼い炎・・・」
寝ぼけて呟いたヒロの言葉に、何かが引っ掛かるドレックァ・・・
そのドレックァの沈んだ顔を見たフィスが声を描ける
「あら、ヒロが飲みすぎたのは、あなたのせいじゃなくってよ
それとも何か気になるのかしら」
「あっあぁ、蒼い炎ってのが気になってね・・・
まぁ、関係ないと思うけどね・・・」
ドレックァが、どこか遠くを見るような目で答えた
そしてフィスが首をかしげた時
バタン!と、部屋のドアが開いた
「おーいノラ!こっちにいるのか?
飯を頼むワイ
ローエもおるから3人分頼むわい
ん?
随分と珍しいメンツがおるな」
ドムが、勢いよく入ってきた
「わぁ、何この鎧!
凄い、オヤジ!コレ、かなりの作り込みじゃん」
鍛冶屋から帰ったドム達
部屋を覗くやいなや、デューイの鎧に飛びつくライリー
「おい、そやつは・・・」
ドムが、止めるのも聞かずにデューイの鎧を見たり、腕を持ち上げ、脇の下の作りを見たりし始めたライリー
「おい娘よ、こそばゆいぞ
この鎧がそんなに珍しいか?」
"キャッ"
鎧と思って弄っていたら、動き出したので、尻餅をつくライリー
「すまんな、鍛治屋をやっとるもんでな、アンタの鎧が気になっちまったみてぇだ
ドムだ、そしてすっ転んでんのが、娘のライリーだ
お詫びに手入れでもさせてくれんか?」
「なんと、おなごで鍛治師とは珍しい
デューイだ
ならば、後で、鍛治娘のお手並みを拝見させてもらおうか」
ドムがご太い右手を差し出しながら謝罪するとデューイがそれを受け入れた
「ところで、ヴァンパイアとデュラハンとリザードマンとは、中々な取り合わせだのぉ
そこで寝転んどるヒロと関係があるのか?」
そう言いながら、ライリーに手を貸し、食事に備え違うテーブルに腰を下ろすドム
フィスが、またもや、超簡単に説明をする
「おぉ、あの扉を開けれたか?
やはりアンタらは腕っぷしがいいんだな?
後で余分に取手を作っておくわい」
「おぉ、あの扉は鍛治師殿の作品か!
ちと重かったな
あのままだと、どうやらワレが門番にされそうだ」
ガハハハっと首のないデューイがのけぞりながら笑いだしたところで、ノラが、食事と酒の用意を始めたため、なごやかな時間が流れ始めた
しかし、ドレックァだけが、物思いに耽っていた
(蒼い炎・・・まさか、アイツなのか・・・)
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その頃ヒロ邸では
「えぇ!クリス姉様は、そんなにヒロ様の事を慕っているのですか?
もぉ、ならば、私などが入る余地などありませんわね」
夕飯も終わり、ヒロの家の居間には、変わったメンツの女性達は、クリスが用意した、ダ・ゴーレで一番人気のマフィンのようなお菓子を食べながらがくつろいでいる
クリスが、ヒロへの想いを恥ずかしながら披露したところで、クレア王女が、相槌を打つ
「でも、命を助けてもらったら、そりゃ、好きになっちまうわな
王女は、どうなんですか?」
「あら、私も聞きたいですわ
この国のプリンセスのコ・イ・バ・ナ!」
何故か、この短時間で、王女にも普通に接するようになったマリーが、クレアに話を振ると、年齢不詳の魔術学院学院長のエイミーが、腰をくねらせながらクレアに詰め寄る
「わっ、私は、一応、王女という立場がありますから、そのようなお話は、父上や兄上が、見つけてくださると思って、おりますわよ」
普通であれば、異性を気にするどころか、結婚をしていてもおかしくない年頃のクレア
やはり、王室となれば、恋愛も厳しいのかもしれない
「そうですかぁ?
オレは、あの、ランディって人は、ぜってぇ、王女にゾッコンだと思うけどなぁ」
「あら、流石マリーさん!
ローズさんの妹だけあって、殿方のことをよく知ってますね
私も、お二人の姿を見てすぐ分かりましたよ」
マリーとエミリーが、側近のランディとの関係をほじくり返そうとする
「ランディは、私が・・・小さい時からの側仕えです
恋愛とは・・・」
「クレアさん、思い出してみてください
ランディさんと、何か思い出とかないんですか?」
「そぉですわねぇ・・・
お父様のところにっ、
物心ついた時から、ランディが側にいたので、ほぼ全ての記憶と言いますか、全ての場面にランディが映り込んでいますねぇ・・」
クリスに問われ、顎に指を当てながら、記憶を遡るが、どんな時でもランディが側にいる事が当たり前になっている気がするクレア
「それって、もう、付き合ってるんじゃないんですか?」
「私もそう思います」
またもや、マリーとエミリーの意見が合う
「そっ、そんな事ありまっ」
タン!タタタン!
タン!タタタン!
クレアの会話を遮るように、部屋の入り口のドアが、変わったリズムで叩かれた
「みなさん!用意はいいですか?」
さっきまでのクレアとは違い、気迫のこもった声で、みんなに声をかける
「クリス、リリス!
2人は手筈通り、ダンテとカリムの手伝いを!
絶対、窓から顔を出すなよ!」
「はい」クリス
「おっ、おぉ!」リリス
既に右手に異様な刃の形をしたナイフを持ったマリーが、クリス達に指示を出す
「そして、オレは、絶対王女を守る!
エミリーさん!」
「任せて、跡形もなく、私の魔法の餌食にしちゃうわ!」
マリーと、エミリーの覚悟は決まった、あとは・・・
クレアの心は決まった、ここにいるのは、もう、パートナーなどといった利益だけの仲間では無い、身分と年齢を超えた、クレアを守ろうとするオンナ達だ
「さぁ、みなさん、もう遠慮はしませんわよ!
ヒロさんの家を汚す者どもをやっつけてくださいな!
いざ、開戦ですわ!」
お久しぶりです、超七玉です
いやぁ、色々と実世界でありすぎて、投稿に時間がかかりましたが、どうか、よろしくお願いします




