48、動きだす蒼
ヒロが住むカストーリ国の第二王子のルイスがライフィスの街にやってきた
父であり国王のジェラルドの命で、ここ最近のライフィスでの出来事に何故かいつも名前が上がるヒロを調べて来い!とのこと
面会時にヒロの能力で製作したミスリル製の盾をルイス王子が気に入ってしまい、量産したいので、製作者を呼んで来るように指示され、ヒロはフィスト共に冒険者の村へ向かった
何やらきな臭い事が起きそうな予感ですね
48、動きだす蒼
『くそったらぁぁぉ!』
ライフィスからかなり南東、タガロの村よりもさらに南東の崖?というか山の中、草木も生えていない場所で、真っ黒な小山?何かを大量に燃やしたような、黒いものが、モゾモゾと動いている
時折、燻るように白い煙が上がったりしている
そして、今度は、その黒ずみのようなものから、念話に振動を添えて発せられた
周囲には生き物の気配がないが、草木がビリビリと震えたように思える
『あの犬野郎も腹が立つが、俺の脇腹に穴をあけやがった人間め
たかだか人間風情が、この俺様に・・・
ぐぎぎぎぎぎっ』
モゾモゾ動く黒い燃えカスの物体からは、何やら、怨念のような気配が湧き立っている
『今に見ていろ、復活した暁には、まずは、あの気に食わぬ人間から、喰らってやるぞ』
黒い物体は、体とは形容し難いが、体中が、メキメキバキバキと音を立てながら、ゆっくり蘇生していく
その痛みの恨みの全てを、自分をこのような形にした人間にぶつけるために歯を食いしばり耐えいる
『この恨み・・・必ず、晴らしてみせ・・ぐぎぎぎっ』
黒い物体が、モゾモゾと痛みにもがき続けている
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「クリス、働き手は、信用のおけるヤツらを何人か用意出来たぜ
それと、いつも食料まで斡旋してくれてワリーな」
質素だが、手の込んだ調度品に囲まれた一室、座り心地の良い椅子に、肘掛けを利用して座るローズがクリスに報告と礼を述べた
「いっいえw
ヒロさんのパートナーとして当たり前の事をしたまでです
こちらこそ、急な求人対応助かります」
ここは、ライフィスの街の代表のレイモンド邸の客間兼リビング
定例の打ち合わせが行われていた
いつもなら、レイモンドお気に入りのヒロも参加させられるのだが、ルイス王子の命で冒険者の村に出かけている為不在だった
よぉし!ヒロさんは参加されてないので、私が責任持って対応しないと!
今日は、ヒロさんの考案した"冷え冷えボックス"や、冷やす事ができるなら、温める事も出来るだろうと、魔石を活用した"温めボックス"などの、制作と販売の打ち合わせの席に、最近ヒロさんから紹介されたマリーさんにも同席してもらっている
マリーさんは、北外周区の東地区にある、スラムのまとめ役!
最初は、怖かったけど、身寄りのない子や、生活に困った人達を保護してて、とても責任感のある人
しかも、とても美人で、いつも動きやすい服装をしているせいで、体のラインが・・・うぐぐっ、負けてる・・・グスン
ヒロさんのためなら何でもすると豪語していて、正直、ライバル・・・・
「なんだ、マリー、最近は、よく表に出てくるじゃないかw
でも、助かるよ、ヒロがクリスと、まぁた、新しい事を考えてくれたんでな」
「いや、そっ、そりゃ、レイさんには色々恩義もあるし・・・
それに、ヒロさんの頼みは断れねぇし!」
あら、マリーさん、ヒロさんの名前が出たら、急に耳を赤くしてる
まとめた髪のせいで、かなり目立ってるぅぅ
間違いなく、マリーさんもヒロさんに好意を抱いてるんだわ!
こっ、この際、マリーさんが、ヒロさんの事をどう思っているのか聞いてみようかしら
「あっ、あのマリーさっ」
"トントン"
「失礼いたしますわ!
レイ様!お客様ですわよ!
それと、お茶の準備ができましてよ!」
ノックと同時に突然入ってきたのは・・・クレア王女!
当然、私も、マリーさんも立ち上がる
「おっ、王女!おやめください
そのような事、他の者が!
なんなら、私が・・・」
慌てて、クレア王女の後ろから入ってきたのは、確か、魔術学院の学院長のエイミーさん
笑っては、いけないんだろうけど、あまりに滑稽で笑いそうになってしまった
「あら、エイミーさんよくってよ
私どもは、レイ様に間借りをしている身分、それに、ルイ兄様もランディもいないので、ワタクシ今日は、暇で暇で・・・
それで、レイ様のお手伝いをしてますの」
「おっ、王女!ありがたいのですが、周りが恐縮しますので・・・」
さも当たり前のように、エイミーさんに席を案内して、自分はそそくさとお茶の用意を始めるクレア王女に、慌てて近寄るレイモンド
「あら、レイ様?みんな知った顔なんですから、肩肘張らずにやりましょ?
クリスさんは、砂糖要りましたわよね?
あら、そちらの方は、初めましてですよね?
クレアです、砂糖要りますか?」
「ごっ、ご機嫌麗しゅうごっ、ございますクレア王女
オレっ、じゃなかった、自分は、マリーです
砂糖は要らないです」
ニッコリと微笑みながら、お茶とお菓子をみなさんの前に用意して、ちゃっかりレイモンドさんの隣に座ったクレア王女・・・カワイイw
「はい、私の事は使用人とでも思ってくださって結構ですわw
ささっ、お話をお続けにってくださいな」
そう言いながら、自分で入れたお茶を口へと運びながら、王女が周りを促す
「えっと・・・
王女が、こうなると後には引いてくれないので、話しを進めようか?
エイミー、紹介するよ、こちらはマリー、ヒロの新しいパートナーだ
そして、今回呼んだのは、今、魔術学院で魔石に氷魔法の魔力を注入してもらっているが、追加の依頼で、今度は、今度は、炎の魔力を注入して欲しいんだが?」
「発言、失礼いたします王女
という事は、暖房とか?何かの加熱に使うって事かしら・・・」
エイミーさんは、クレア王女とは面識があるのだろうか?恭しくクレア王女に許可を取り発言された
王家の方々との接し方の見本を見せて頂いたようで、エイミーさんには感謝しかないです
「あぁ、今は、冷やすだけじゃないか?
今度は、作った料理を入れとけば冷めなかったり、ヒロが言うには、ゆっくり調理をするのにもいいとか言い出したんだよ
んで試しに"チャーシュー"とか、"何ちゃらビーフ"って、言ってたけど、作って食べさせてくれたんだが、肉が、メチャクチャ柔らかくて、ジューシーで、口に入れたらトロけるような感じで、あれはたまらなかったよ」
そうそう、レイモンドさんが言うように、あれは美味しかったぁ
私には、料理の事は、チンプンカンプンだったけど、ヒロさんが、作ったアレを再現出来るなら、絶対、この"温めボックス"は、一家に一台!
絶対売れると私は睨んでる!
「ちょっとよろしくて?」
おもむろにクレア王女が、話しに割って入ってきた
その目つきは、先ほどまでとは変わっていた
「まず、こうやって、お茶をご一緒しているのですよ
私を変に持ち上げないでくださるかしら?
マリーさんも、ヒロ様のパートナーと言う間柄でしたら、私も、そのパートナーとやらにしてもらおうと考えておりますので、も少し仲良くしてくださるかしら
それと、レイ様、今のお話しからして、キッチンにある、おの画期的な"冷え冷えボックス"と、その新しい"温めボックス"は、どちらも、売れる事間違いなしに聞こえますけど
なぜに、商人であるワタクシをお仲間に入れてくれないのかしら?」
先ほどまでとは違った雰囲気のクレア王女・・.
ヒロさんの考案した"温めボックス"が、絶対売れると、お話しを聞いているだけで見抜いてしまうなんて、やっぱり、商人としての才と、言い方ははしたないですけど、鼻の良さは凄いです
「王女・・・あのですね、えぇっと、これらの商品は、まだ、実験段階と言いますか・・・
そのぉ、街の富裕層で試そうとしてると言いますか・・・」
王女に詰め寄られ、説明もタジタジのレイモンドを笑顔で見つめるクレア王女は目の奥は、笑っていない
「あら、レイ様、あの冷え冷えボックスで冷やされたエールは、今回、父上に持って帰ろうと思うのですが、あの冷えたエールをレイ様や、フレッドおじ様は、毎日のように楽しんでらっしゃる事、お酒好きの父上が知ったら、どうなるでしょう・・・ね」
「え?」
あら大変、クレア王女が、国王の事を持ち出して来ました!
レイモンドさんが、脅されているように見えるのは私だけかと思い、マリーさんを見たら、目を丸くして王女の行動を見ている
その様子がおかしくて、思わず''クスッ"って笑っちゃいました
「もう、クリスさんからも何か言ってくださいな
ヒロ様が発案された物なら、売れる事間違いなし!
ワタクシにも、ヒ・ト・ク・チ!
乗らせてくださいませんか?」
えっ?あっ!はい?
怖いです王女ぉぉ!
私には、
「はい、ヒロさんも喜ぶかと思います」
としか言えなかったw
でも、ヒロさんの作業が増えれば、街にいる時間も増えるだろうから、私は・・・嬉しい・・・
クリスの返事を聞きレイモンドが慌てて口を挟む
「しかし、王女、今は、"冷え冷えボックス"は、なんとか富裕層には行き渡り、生産性も良くなって来たのですが、"温めボックス"は、まず、富裕層や、商店などに展開しようとしているところで・・・
箱自体も大きめで、魔鉱石を使っているので、重量もあり、流通には不向きでして・・・
それに、魔石に魔力を貯めるのも、なぁ、エイミー?」
レイモンドは、助けてくれと言わんばかりに、魔術学院学院長のエイミーに話しをふった
「学院としては、報酬を頂ければ、生徒だけでなく、教員にも鍛錬の一環として協力させていただきます、王女!」
"オイ!"と、つい声が出てしまったレイモンド、まさか、助けてもらうつもりが、裏切られてしまった
「あらレイ様?
魔術学院の学院長様からもご承諾は、いただけましたわよ
運搬は、私どもの商会にだって、大きな馬車はありましてよ?」
クレア王女は、何か問題でもありますか?と、言わんばかりのドヤ顔でレイモンドに詰め寄る
そこへ、目を丸くして話の流れを見守っていた、スラムのボスのマリーが、話しに割って入った
「くっ、クレア王女・・様、運搬に携わる人手が足りなければ、俺たち・・・いや、私どものような、街の端っこで暮らす者どもで良ければ、いくらでも使ってください
馬車なら、ヒロさんと鍛冶屋のドムさんに頼めば、凄い荷馬車を作れるんじゃねぇ・・ないかと(汗)」
なんとマリーが、ここで勝負に出た
それを見ていたクリス
ならば、私も!と
「僭越ながら
ヒロさんと最初に(ここは大事なので大きな声で言わせてもらいますw)、パートナーとなった、このテイラー商会のクリスが責任を持って、王都向けの商品の製作をヒロさんとドムさんに約束させる事を誓います
よろしいでしょうか?レイモンドさん」
ふふふ、最後は、格好つけちゃったかしら、ヒロさん引き受けてくれるかしらw
「おいおい、お前ら、クレア王女を味方に付けるのはやめてくれよぉ」
ほぼ、泣きっ面のレイモンド
「もぉ、分かりましたよ!
どうせ、この街の大体の富裕層の家には、"冷え冷えボックス"は、買わせたんで、版図を広げようとは考えていたんで、王女の商会にも流しますよ!
それでいいですか?
その代わり、輸送量や魔石への魔力注入料、人手などは、今の、倍・・・いや3倍はいただきますよ」
「あら!やはりレイ様!
お引き受けくださるのですね
しかし、レイ様、随分とおふっかけになられるのですわね?
でも、王都の私の顧客達をお舐めになってもらっては困りますわ
エイミーさん、マリーさん、そしてクリスさん、ここはひとつ、ガッポリ稼がせてもらいますわよw」
なんと、王女が、右手の親指と人差し指で、丸を作り、左手で口を隠しながら笑い出した
「さすがです王女!
私、この国の国民でよかったですわ
魔石への魔力注入はお任せください」
「働き口が無くて困ってる人間は、いくらでもいます
本当に、助かるぜ・・じゃなかった、助かります」
"あらやだ"と、言いながら、慌てて左手で、右手の"お金マーク"を隠す王女の顔が、満面の笑みを浮かべた
「子供達に勉強や魔法を覚えさせるという事は、未来のこの国のために欠かせない事です
それと、仕事がないという事は、悪い事に手を出してしまったりして、悲しむ人が増えるということです
私は、未来のこの国のためであれば、いくらでも稼ぎます!
そして、還元したいと考えております
御三方とも、私より人生経験が豊富かと存じ上げます
どうか、このクレアを利用してくださいませんか?」
凄い・・・としか言いようがない
私より5歳も若いというのに、なんという志!
気付けばクリス、エイミー、マリーの3人は、クレアの言葉に心酔してしまっていた
それを見ていたレイモンドが口を挟む
「はぁぁぉ、まったく!
王女!いつもの人タラシが発動してますよ!
もう、私は、何回もそれを真に受けて、大変な思いをしてますからね!
まっ、王女の考えは、本心からなんで協力は惜しみませんが、いつも、急なんだよなぁ
エミリー達も気をつけてくれよ!」
「あらっ、レイ様?私は、ひと言も嘘など言っておりませんわよ!
私は、常々、国民の皆様の事を考えておりますのよ
まぁ、多少、お願い染みていたかもしれませんけど」
と、言葉の最後にウィンクするあたりは、かなりの策謀家だ
でも、クレア王女のまっすぐな瞳は、レイモンド達を納得させるだけの迫力がある
「はいはい、大丈夫ですとも
ここライフィスは、王都には逆らえませんので、対応はしますとも
と、言うことなんで、みんな、悪いが手筈を頼む!」
レイモンドが、クレア王女を含めた、"温めボックス"や"冷え冷えボックス"の事業展開に向けて、重い腰を上げ、ジュディを呼び入れて、何やらバタバタと話し始めた
「さぁさぁ、みなさん、難しいお話しは、レイ様にお任せしまして
スイーツをいただきながら、女子同士、お話しいたしませんか?
先日、フレッド叔父様・・・、ギルマスさんの娘さんが、首飾りをしてましてね
今の巷ではあのようなペンダントが流行ってるのですか?」
「え?王女?フェンリーとお知り合いなのですか?
アイツ、もう、そんな小洒落た物をを身に付けてるんですか?」
「えぇ、フレッドの娘さんって、まだ、12歳くらいでしたわよ
王女さま、それは、どのような形でした?」
凄い、凄いですぅ
王女なのに、私達に目線を合わせて、お話しをしてる
なんて素敵なんだろう
これが、女子力ってヤツなのでしょうか?
よぉし、ヒロさんを振り向かせるために、王女から女子力を盗んでしまいましょう
「それは、多分、私の仲間のイリナ達がですね・・・」
レイモンド邸の一室で、身分など度外視した女子会が始まってしまった・・・
それを呆れたように見ていたレイモンドが、部屋に入って来たジュディと諦めたように今後の事を話し始めた
しばらく、王女クレアをはじめとした女子会が、レイモンド邸の客室兼リビングで行われ、途中から、会議?の終わったジュディまでも参加したので、もうテーブルにはお菓子の包み紙などで溢れかえっていた
夕食の準備も始まっているのか、ほんのりといい匂いが部屋に漂い始めた頃、部屋にレイモンドが入って来た
「あのぉ、クレア様、そろそろ、お開きにしませんか?」
すでに、ジュディと王都向けに商売の版図を広げる屋台骨案を築き終わり、商人に支持を出して来たらしく、当たり障りのないようにレイモンドが声をかける
「はっ、私としたことが!
クレア様申し訳ありません、まだ、学院での仕事がある為そろそろお暇させていただきます」
「あっ、俺も・・・じゃなかった、私も、つい王女の話しが興味深くて聞きいっちまっ・・いました」
「あら、いけませんでしたね
ついついお話が盛り上がってしまいましたわね
みなさん、門まで見送らせてくださいな」
レイモンドさんに追い出されるように屋敷を出たにもかかわらず、楽しげに会話をしながら門に向かっていると
「せっかくお近づきになれましたのに、まだまだ、話し足りませんわね?
どうですか?クリス姉様のお家で、お泊まり会でもしませんか?」
「ええええええええ?」
いきなり、王女が泊まりに来るんですかぁ????
クリスが、驚きのあまり声を出してしまった
「クレアさ・・ま?
そのぉ、王族の方が、私の家に泊られても良いのですか?」
「はい?何を言ってるのですか?
もう、私達は、お友達ですのよ
確か、お友達は、お泊まりしながら、殿方のお話などをして夜を明かすと、王都の娘達は言っておりましたわ」
クレア王女は、意外にも、庶民の事に精通していた
「それにクリス姉様は、ヒロ様のお屋敷にお住まいになっていると伺いましたわ
ヒロ様は、兄の頼まれ事で街を出ていらっしゃるはず、お一人では寂しいのでわ?」
何か企んでいるに違いないが、恩着せがましくクリスに言い寄るクレア王女
「おい!クリス!ヒロさんと暮らしているのか?
それは、ちょっとヒロさんの安全のためにも、俺が一度屋敷を点検しねぇとな!
おし、俺もっ、あっ、私も泊らせてもらってもいいですか?王女」
うわぁ、なんでそうなるのぉ
今朝は、寝坊して、部屋の中に、寝巻きが脱いだままになってるのにぃ
マリーの申し出にクレア王女は、まるで問題ないとばかりに承諾をしている
それを見ていたエミリーまでもが
「あら、羨ましい、なんなら、私も学院の仕事を終わらせましたら、合流させてもらいますわ
確か、ヒロさんのお宅にはお風呂がありましたわよね?
私も魔術を扱う者の端くれ、お湯くらいは用意できましてよ」
「決まりましたわね!
それでは、一旦お別れしまして、後で伺いますわね」
クレア王女が話をまとめると、そこへ2人の衛兵さんが、両手に持ちけれぬほどの荷物を持って現れた
「みなさま、今日はお近づきの印として、王都で私の大好きなお菓子を沢山持っていってくださいな」
しかし、ものすごい量の手土産で、女性では持てそうになく、エミリーとクリスが目を見張っていたら
「おい!」
と、マリーが声をかける
すると、いきなり6個ほどの人影が現れた
そのうちの2人を指で指ししめし
「王女様からのお土産だ、まずは子供達に配ってくれるか?その後、お前達も食べていいからな
それと2人ずつ、エミリーさんとクリスを送るように、俺は、今日は、クリスの家に泊まるから、後のことは頼むぞ」
"へい"と、返事をした男達が、衛兵からお土産を受け取り、2人はエミリーの元に、そして、片目の無い怖そうな男性がお土産を手にクリフの元に近づく
一緒にいた小柄な男の子?がクリスに話しかける
「そろそろ暗くなるんで、足元気を付けてくれ・・さい」
女性だ、と言うより、女の子か?
敬語など使った事がないのだろう、辿々しい話し方で、手に持つランタンでクリスの足元を照らす
「あら、ローズさんは帰られないのですか?」
お土産を男の人達に預けたローズさんが門にもたれ掛けていたのを見て王女が尋ねた
「はっ、はい、今日は、女子でお泊まりとなれば、ここからクリスのうちまでは、私が同行します」
「あら、ありがとうございます
ならば、急いで支度をしてきますわね」
見た目によらず、気が効いて、指示も丁寧なマリーを見て、ハッとなるクリス
(部屋を片付けなきゃ!)
クリスは王女にお礼を言い、そして、皆さんに挨拶をして帰路につく
心なしか歩くのが早いのは、みんなが来る前に部屋の片付けをしたいのと、お友達とお泊まりをするという事が、これまで経験してこなかったので、嬉しくてたまらない
『』リリスとは、小さい時から一緒に寝たりしたけど、ほとんど姉妹のように暮らしていたからなぁ、どうしようお菓子でも、買っていこうかしら
そうだ、リリスも誘おうかしら!
いいわよね?
うん、そうしよう』
あれこれ考えていると、クリスの歩く速度に拍車がかかる
「ちょっ、ちょっと、早いよ!」
ランタンで足元を照らしてくれている少女が慌てる
あっ!お菓子が少なかった!
「ちょっと寄り道します」
敷石に爪先を引っ掛け、転びそうになりながら、クリスは歩く速度をあげた
クリスは、初めてヒロとデート?で行った、"ダ・ンゴーレ"に向かって、走り出した
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「ノラさん、ヒロさん達は?」
「はい、先程、食事を済ませまして、今頃は、夢の中だと思いますw」
昨日、ライフィスから村に来たはずのヒロと、未だにろくに顔も合わせていないニールが、ノラに尋ねた
夢の中と言ったが、もちろん寝ているって事だと、ニールは、ノラが最近、冗談を交えるような会話をしてくれることに小さく喜ぶ
「ニール様!
ノラさんに休んでてくれって言ってくれよ
俺、もっと頑張るからさぁ」
「ははは、ヒューのいう通りですよ
ノラさんは、無理をなさらずに座って、2人に指示を出すだけでいいんですよ」
ヒューと呼ばれた赤毛の少年が、ノラを厨房の中にある椅子に無理矢理座らせた
そこへ、ヒューと同じ赤毛の女の子が、小皿と匙を持って近寄る
「ノラさん、出来た、味みて」
「あら、いい匂い、どれどれ」
と、ノラが差し出された匙をパクりと口に入れる
「あら、私の作ったのより美味しいわよハンナ!
これなら、みんな喜ぶわよ
あとは、そうね、ヒューとパンを焼いちゃいましょ!」
「うん、分かった
ヒュー手伝って」
後ろから見たら、どっちがどっちだか分からないヒューとハンナは、ダンジョン1Fで、つい最近まで生活していた双子で、新しいルールでダンジョンでの不法な寝泊まりが出来なくなり、路頭に迷っていた所をサントス夫人のノラに見つけられ、連れてこられた
ノラが親代わりをする条件で使用人としてニールに雇われ始めた
「ニールさん、あの2人を雇っていただいて、本当にありがとうございます
私、こんなに楽をしていいのでしょうか?」
「いえいえ、あの2人は、ノラさん達が見つけてくれた事を感謝して、一生懸命ノラさんの役に立とうとしてますよ
それに私は、あんなに聞き分けのいい子達を連れてきてくれたノラさんに感謝していますよ」
自称10歳のヒューとハンナ、ノラが、娘と、フィスの3人で食材の買い出しに行った時に、八百屋の陰で、物欲しそうにしているところに声をかけたらしい
・・・数週間前
「お腹が空いてるの?
おばちゃんのお手伝いしてくれたら、ご飯をいっぱい食べさせてあげるわよぉ」
「えっ?ホント!
うん!手伝う!」
「うん、手伝わせてほしい!」
その返事を聞いて、ノラがフィスを見る
「いいんじゃないの?
私の持つ荷物が、少し軽くなって助かるわw
ねぇ、何か、すぐ食べれるものある?」
フィスは、ノラの優しいところが好きで、2人を面倒見ようとしている事に賛同して、八百屋の亭主に食べ物を要求した
「おっ!ニールの旦那の所のエルフさんだな!
隣で、かみさんが、団子を焼いてるから、食ってってくんな
お代は負けとくよ!」
「よかったわね、あなた達
まずは、お団子を食べてからにしなさい」
"やったぁ!"
"2人、好き!ありがとう!"
2人は、フィスの計らいに両手を挙げて喜んだ
ヒューとハンナは、競うように団子を頬張り、約束通り、ノラの荷物持ちを始めた
「もっとゆっくり食べていいのよ」
2人は、両親が冒険者で、弱肉強食の世界では、仕事をしなければ食べていけない事を小さい時から、教わっていたため、まずは、食べ物をもらったからには、一生懸命に荷物を持った
屋敷に戻ると、ニールがすぐに2人の衣服を用意し、ヒューとハンナはその日から、ノラの手伝いを始めた
娘とお腹の子に、急に出来た双子のお兄ちゃんとお姉ちゃんが、一生懸命にパンを作る後ろ姿をノラはニコニコと見つめていた
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「やぁ、ランディ!
クレアが何か始めたみたいだが、大丈夫かな?
また、君や、他の人に迷惑をかけてないかな?」
「ルイス王子!
迷惑ですか・・・
レイモンド氏には、迷惑をかけていると思うのですが、当の本人は
"仕方ないでしょ"と、笑うばかりで・・・
他の方々からも、苦言などは入っておりませんw」
ランディーは、レイモンドにご執心のクレア王女がレイモンドに迷惑をかけているのではないかとヒヤヒヤしている
また、屈託なく誰にでも接するため、彼女のいい噂しか入ってこない事をこの国の第二王子であるルイスに報告した
「まったく、あいつは、自分が一国の王女である自覚がないのか!
っふぅ、困ったもんだ」
「お言葉ですがルイス様!
クレア様は、ご自分が、国王の姪という立場で、皆様と同等の扱いをして頂いている事に深く感謝をしておられると思います
なので、少しでも、国民と王族の架け橋になろうと奮闘しておられるのだと思います
まぁ、多少行き過ぎと、言いましょうか、常に、破天荒なのですが・・・」
ランディが、言葉の後ろの方を濁しながら話した
「そぉか、ランディには、いつも面倒をかけてしまうね
時には、キツく言ってくれて構わないから」
「いえ、滅相もございません
しかし、目に余るときは、私が責任を持って止めますので・・」
血は繋がっていなくとも、兄妹なので、心配してしまうルイス
しかし、そんな心配をよそに、クレアは、いつも、心配の斜め上を行くため、ランディが大変な思いをしているのは間違いない
「ところでランディ、これを見てくれないか?」
ルイスは、テーブルの上に置かれていた、一つの盾をランディに手渡す
「すっ、素晴らしいですね
ミスリル・・・ですか?
盾の前面に槍?ですかね?
大きい割には、軽い・・・」
「しかも、これが、簡単に・・・」
ルイスは、ランディが持つ盾をあっという間に分解してしまった
そして、テーブルの上に並べる
「どうかな?
これなら、運び易くないかな?」
「まさか!
盾と言うのは、身を守る物、頑丈でなければ意味がないのですよ
それが、分割できるなんて・・・
ははぁん、王子、これは見せかけの盾ですねw
通りで、軽いと思ったんですよ」
ランディの感想に、ご満悦のルイスは、ヒロからこの盾を取り上げ(没収)てから、楽しくて、何度も何度も組んだりバラシをしているので、あっという間に、盾の状態に戻した
「さぁ、ちょっと構えてくれるかランディ?」
「え?」
ニヤリと口元だけ口角を上げたルイスが、ランディに盾を渡し、2〜3歩後ろに退がる
「こっ、こうですか?」
ランディが、訝しげに盾を構えると、何やら、ルイスがブツブツと呟き始めた
それは、歌のような祝詞のような言葉だった
「俺の怒りをこの右手に・・・」
「ちょっ!王子!それは!」
ランディが慌てるのも無理はない
目の前でルイスが呟いているのは、小言やぼやきではない
ルイスの得意とする炎系の魔法の詠唱なのだ
ランディは1度だけ軍団戦において、ルイスが放ったこの魔法で、相手の先鋒の騎馬隊を何十騎と吹き飛ばしたのを見ている
その時の戦は、そのまま、出鼻を簡単に砕かれた敵陣が崩壊したのを覚えている
なので、室内で放つような代物ではないのだ
それが、今、目の前で、右手をまさに真っ赤にして、魔力を放とうとしている
その名は
「ファイアバースト!」
「王子っ!」
ルイスの右手から赤い炎の塊が、ランディの構える盾に向かって放たれた!
自分は、何か失態でもしてしまったのか?
先日、クレアにキツく言ったことか?
いやいやいや、王子もキツく言っていいって、さっき言った・・よね?
そんな考えがよぎったかは、分からないが、目を瞑り、盾を構え、衝撃に備える
って、その間1秒程・・・
一瞬で、木っ端微塵になる事を覚悟したランディの構える盾にルイスの放ったファイアバーストが炸裂・・・
バシュンっ
「へっ?」
「ね?凄いだろ?」
ストンっ
死を覚悟したランディが、腰を抜かして、その場に座り込む
そして、ゆっくり盾を見る
表面から、ちょっと湯気が出てるような気がする
「一体・・・何が?」
「凄いだろ?
この盾は、もう、5発は、私の魔法を当ててるのに、全て消滅してるんだ」
はい?魔法が消滅?
何かの間違いでしかない
魔法が消えるわけがない!
と、いうか、それならそれで一言あってもいいのでは?と、ランディは心でつぶやいた
「魔法が消えるってあり得るんですか?
魔石に魔力を貯めるとかなら聞いた事がありますが・・・」
ランディの言葉にルイスが反応する
「はっ?もしかして、私の魔法を吸収したのか!
そうだ!ランディ!流石だよ
やっと答えが分かった、この盾は、魔石と同じで、魔法を、魔力を貯められるんだよ!きっと!
って事は・・・」
何気ないランディの言葉に、何かを気付いたルイスが、ランディの持つ盾に手のひらを当てる
「やっぱり、魔力を感じる
凄い、凄いよこの盾は、魔力を貯めておけるんだ
この盾は、凄いぞ!」
「そっ、そんな事があり得るんですか?」
ルイスが、手を差し伸べ、ランディを立たせ、自分の推測、それとこの盾がなぜ此処にあるのかを簡単に説明した
「ヒロ殿が持っていたのですか?
一体、おの御仁は何者なんだ」
「そうなんだ、簡単に持ち運べる盾が珍しかったので、ちょっと意地悪して没収したんだけど、これは、凄い物を手に入れたかもしれないな」
盾を両手で持ち、子供がおもちゃを買ってもらったような眼差しで、見つめるルイス
しかし、ランディは、違う事を想像した
魔法が通じず、魔力を貯められる
それは、考えようによっては、魔法が効かず、尚且つ、魔法が使い放題なになるという事だ
「王子!もしも、その盾が敵に渡りその効果に気づいてしまったら、それこそ、大変なことになるのではないですか?」
「そうだね・・・
だから、しばらくの間は、まだ内緒にしてくれるかな?
それと、君が今から、この盾の所有者になってくれ
先日の襲撃もある、クレアを守るために私から譲り受けたとでもしておこう」
貴重な盾を渡されて硬直するランディ
「しっ、しかし、このような代物・・・」
断るランディ、しかし、ルイスの視線は、さっきまでの目とは違う、何か決意したような視線に圧倒された
「分かりました
責任持って、お預かりします
そして、クレア様をお守りします」
その言葉を聞いて、ルイスの目は、また、子供のような目に戻った
「よし、あとは、ヒロさんがその鍛治職人を連れてくれば、盾の量産に漕ぎ着けるかもしれないな
よぉし!これなら、父上や兄達の鼻をあかせられるぞぉ」
高揚するルイスを見て、ランディは笑顔になった
ランディは、これまでずっとクレアの護衛をしてきてはいるが、王族次男のルイスの事もよく見てきている
優秀な兄メイナードに追いつこうと頑張るルイスが、手柄を立てられそうなチャンスがやってきて嬉しくないわけがない
ランディは軽いはずの盾だが、責任がのしかかっているようで何故か重く感じる
しばらく見つめてから背中にかけ、あれやこれやと妄想するルイス見て
卸兄妹、そっくりで何よりだ!
と、笑みを浮かべた
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「おーい!
いるんだろぉ!
さっさと出てくるだわさぁぁ!!」
ここ、冒険者の村のニール邸では、徹夜明けで朝飯を食べた後に倒れ込むように就寝したヒロ達(多分ヒロは、徹夜をしないで寝てたはずw)をよそに、他の住人は食堂で昼食をいただいていた
食後のお茶が配られ、午後からの予定を確認し合っていたところに、玄関から、女性の声がした
「あら、騒がしい子ね」
なぜか、徹夜したはずだが、眠気などとは無縁なフィスが、カップに口をつけようとしたところでつぶやいた
「フィスさんのお知り合いですか?」
「ほら、前に話した、ヴァンパイアのご近所さん
ヒュー?ほっとくといつまでも、大声あげそうだから、入れてあげて」
"わかった、フィス姉ちゃん"
フィスに頼まれて、赤毛の男の子が立ち上がり、キチンとイスを戻して走り出した
礼儀正しいヒューを見て、ノラが微笑む
「もぉ、なんだわさ!
アタイは、アイツに会いに来たんだわさ
一体、どこに連れて行くだわさ
げっ!エルフ!」
「フィス姉ちゃん、連れて来たよ
ねえねえノラさん!
この人、ハンナより、綺麗な赤い髪をしてるよぉ」
ヒューが手を引っ張りながら、ハーフヴァンパイアのシンディーを連れて来た
「初めまして、私がこの家の主人という事になってますニールです
フィスさんのお知り合いと伺いました
もし、昼食がお済みでなかったら、一緒にいかがですか?」
ニールが、挨拶してテーブルに誘う
元々、人間と接する事が大好きなシンディは、一瞬喜んだ顔をしたが、嫌いなフィスの手前、ちょっと不貞腐れた顔をしながら
「シンディだわさ
別に知り合いなんかじゃないけど、アイツに頼みたい事があって来たんだけど・・・
もし、迷惑じゃなかったら、たっ、食べたいだわさ」
ちょっと、口を尖らせながら、席に着いたシンディ
いつの間に用意したのか、ハンナがお茶を出す
「どうぞ」
「あっ、ありがとうだわさ」
口は悪いが、お礼はちゃんというシンディ
ヒューが盛り付けた、シチューとパンを見つめるシンディー
「いつも、こんな暖かい物を食べてるのか?」
「そーだよ!
そのシチューはハンナが味付けして、パンは、俺とハンナで焼いたんだぞ!」
「だよ!食べてみて」
恐る恐るシチューを救って一口食べるシンディ
「おっ、美味しいだわさ」
「あぁもぉ、お姉ちゃんなってないなぉ、ツウは、パンをちぎって、シチューを付けて食べるんだよぉ」
シンディが、ヒューに言われた通り、パンをちぎってシチューに浸す
それを口に放り込んだ
「美味しい!」
「だろ!ノラさんは、はしたないって、言うけど、ブレンダさんは、それが最高の食べ方だって言ってたよ
ねっ!ニールさん!」
急に話を振られて慌てるニール
しかし、シンディが、食べかけのパンを見つめて動かない事に気づく
「どうかされましたか?」
ニールの呼びかけに我に帰るシンディ
「いつも、こんな暖かい食べ物を食べてるのか?
いつも、そうやって、喋りながら食べてるのか?」
シンディの言葉で、大人達は、息を呑んだ
こう言う時にどんな言葉をかけるのが正解なのかなんて、人それぞれで、とてもデリケートだ
「お姉ちゃん、美味いと思ったら、いっぱい食べるんだよ!
じゃないと大きくならないよ!」
「いっぱい食べてもヒューは私より少し小さい」
"ハンナは髪の毛が俺より少し多いだけだろ!"
少年と少女の言葉に大人達がハッとなる
「シンディさん、おかわりはありますから遠慮なさらないでくださいね」
「あっ、ありがとうだわさ
美味しいから、おかわりするだわさ
それにしても、ちょっと、うらやましいだわさ」
と、シチューのお椀をノラに渡すシンディ
「騒がしいだけじゃないみたいね
今日は、なんの用?」
「っくぅ、ちょっと私より強いからって、むかつくだわさ!
アイツここにいるんでしょ?
アイツの血のおかげで、父上が回復しただわさ
だっ、だから、ちゃんとお礼を言いたいのと、父上も、会ってみたいって言うから、呼びに来たんだわさ」
フィスに対して、一段と口が悪くなったが、全く声に怒りが籠っていない
「あら、良かったじゃない
仕方ないわね、起こして来てあげるわよ」
と、物音ひとつ立てずにフィスが立ち上がり、食器を台所に置いて食堂から出た
「はい、お姉ちゃん!
いっぱい食べてね」
「あっ、ありがとだわさ」
おかわりのシチューを手にしたシンディが、笑顔で答える
「もぉちょっと寝かせてくれよぉ〜
どうしたんだよ
帰ったんじゃなかったのかよぉ」
昼食を終わらせて居間に移っていたシンディのところに、無理矢理起こされたヒロが入ってくる
用意されていた、お茶を飲んで、顔をパンパンして、目を覚ますヒロ
「聞いてほしいだわさ
父上が元気になったんだわさ」
シンディが、400年間、火傷と怪我に悩まされていた父ドレックァが、回復の兆しを見せた事
間違いなく、ヒロの血液から作った血の玉で回復した事
お礼に会ってみたいと言っている事を伝えた
「400年も寝込んでたのか?すごいな!
まぁ、俺の血液のおかげか分からないけど、それは何よりだったな
ヴァンパイアのオヤジさんかぁ
なんか、怖いけど会ってみたいな」
「怖くないだわさ!
世界で1番優しいんだわさ
さぁ、行こうだわさ!」
せっかちとしか言いようがないシンディだが、どう見ても嬉しくてたまらない感じが湧き出していて断れそうもない状況だ
「分かったよ!
ちょっと待っててくれ準備するから」
「あら、なら、私も行こうかしら
私も、一応、謝罪しないといけないでしょうから」
フィスが、そう言うとシンディが一瞬嫌な顔をしたが
「そっ、それがいいだわさ
多分、父上も話があると思うだわさ
あっ、あと、パンをもう一個食べてもいいか?」
「もちろんですよ
ヒュー!パンを2つ焼いてきてくれる?」
"まかせて"と、右手でグーを作り走り出すシュー
"私の方が上手に焼けるんだから"と、あとを追うハンナ
しばらくすると、顔を洗って、マジックバッグを持ったヒロが現れる
同時にノラさんも食堂から何やら小包を持って現れた
「シンディさん、私は、ヴァンパイアの方々の好みは分かりませんが、体調を崩してる時は、栄養が大事です
食べやすく、擦った果物にハチミツを混ぜて冷やした物です
お父様の口に合うか分かりませんが、私が小さい頃、熱を出した私に母がよく作ってくれた物です」
ノラから小包をもらったシンディが、嬉しかったのか、小包をぎゅっと抱く
「ノラ・・・さん?
ハグしていいか?」
「勿論です」
シンディは、お腹の大きいノラの負担にならないように斜めからハグをした
「母上の匂いがするだわさ」
「あらやだ、お風呂は入ってますよw」
シンディは、頭を横に振り、ノラの胸に顔を埋める
「いい匂いだわさ」
「嬉しいわ
シンディさんのお母様には到底敵わないけど、お腹が空いたら、いつでも、遊びに来ていいんですよ」
シンディはゆっくりノラから離れ、目を拭った
「勿論だわさ!
赤毛の2人にもよろしくだわさ」
ニールの家からずっと、機嫌がいいのか、頭の上にノラからもらった小包を両手で持ったまま乗せて、ずっとスキップしている
そのままスキップで、ダンジョンに入ろうとするシンディを入り口の受付嬢が慌てて、引き止める
「え?入場料ってなんだわさ!
うちに帰るだけなんだわさ!
はっ!」
ボン!
いつもは、コウモリの姿で出入りをしていた事を思い出し、あわてて変化して、ダンジョンに滑り込む
「あぁ、俺が払うよ!」
呆気に取られる嬢に、ヒロが銀貨3枚を渡す
「まぁ、あの子の言い分が正しいわね
ここからしか帰る道がないんだものね」
「そうだね、後で、ジムさんやブレンダに相談するとしようか」
そう答えながら、自分たちの分の銅貨を支払い、ダンジョンに入る
"いってらっしゃぁい"
受付嬢の声に背中を押されるようにダンジョン1Fに入り、すぐ右に曲がり、階段の部屋を目指す
1Fでの寝泊まりを禁止した為、その分のスペースで
商いをする者の数が急増していた
まぁ、ジムさんによる悪徳商人排除が効いているのか、表で商売できない奴が隠れているかもしれないが、初めて来た時より、全然空気が軽い
物乞いなどはいないし、嫌な視線すら感じない
「寄り道は、帰りにするだわさ!
悔しいけど、アンタの血のおかげで、父上が元気になったんだわさ!
早く、父上に会ってほしいだわさ!」
いつのまにか、変化していたシンディが、キョロキョロしてまっすぐ歩けていないヒロの手を引っ張り始めた
「わっ、分かったって
イタタタ!
チカラ入れすぎだって」
「あっ、スマんだわさ
つい、チカラが入っただわさ」
と、顔を若干赤くしたシンディだが、ダンジョンのため、ヒロ達には気付かれていなかったようだ
階段の部屋に入ると、すぐにコウモリに変化して、部屋の片隅の通気口から、隠し通路に移動したシンディ
「早く来るだわさ!」
当たり前の様にせがまれたが、人間とエルフが通れる様な大きさではない
「全く、ちょっと待ってくれよ!」
ヒロは、階段の部屋の入り口を一度確認した
誰も見ていない事を確認して、通路側の壁の左端の方を弄っていく
「ヨシ、ここだ!」
顔を近づけなければ、わからないくらいの模様の違う壁を押した
すると、高さ1m、幅40cm位の壁が、ドアのように通路側に開いた
「あら、隠し扉なんて、イカしてるわね」
フィスが、驚いた
「いや、そんな大層な物じゃないよ
取っ手がない扉だよw」
そう言って、扉の通路側をフィスが覗き込むと
「ホント!帰りはどうするの?」
「あぁ、それは、ここに、取っ手を付けて開けるだけだよ」
と、マジックバッグから、扉の取って手を取り出して見せた
扉の通路側に開けた、小さな縦穴に取っ手の裏側の突起を差し込んで、回して引くと抜けない構造にしている
実はこの扉は、鍵も何にもなく、嵌め合いをキッチリしてあるだけで、ピタッと収まるようにしてあるだけの扉だ
しかし、ちょっと重いし、取っ手を外すと掴みどころが無いため、閉めたら開けられないのだ
って言っても、ヒロ以外の人間が推したって、何故か動かないほど重いのだ
「へぇ、ヒロって、頭いいのね!
まぁ、それはともかく、通路に入れたのはいいけど、近づいて来るわよ!」
「へっ?」
耳を澄ますと、すごい数の足音、何かを擦る音が、通路の奥の方から湧き上がるように聞こえてくる
「おい!まさか!リザードマン?」
「そうだわさ
ものの数秒で、ものすごい数の光が近寄ってくる
こちらのランタンに反射したリザードマン達の目だ!
「みんな、お客さんだよ
乗せてあげるだわさ!」
シンディがそういうと、2匹のリザードマンが、ヒロとフィスの隣に四つん這いになって立ち止まる
「おっ、おいシンディ
大丈夫なのか?」
「大丈夫も何も、この子らは、私の友達だわさ」
"シャー!"と、言いながら、ヒロの隣にいるリザードマンが、自分の背中を左手の親指?で指差した
「じゃ、じゃぁ、お言葉に甘えて」
と、ヒロがリザードマンの背中に跨った途端、すごい速さで走り出した
振り落とされそうになるのを踏ん張りながら、周囲を見ると
ヒロを載せるリザードマンの周りを何体ものリザードマンが並走する
ヒロが落ちたとしても、誰かしらの背中に転がれる感じだ
ある意味、動く歩道やエスカレーターの感覚だ
「へぇ、揺れもないし、速いし、快適ぃ!」
「いやいやいや、この間は、戦っていたじゃんか!
俺は、怖いよ」
フィスが、暗闇の中に、歓喜の声を残していくなか、ヒロは、どこに連れて行かれるのかヒヤヒヤしている
ヒロ達を乗せたリザードマンの集団は、ものすごいスピード(体感的にねw)で、坂になった通路を滑るように降って行く
しばらくリザードマンの背中で暗い通路を進んでいくと、薄ボンヤリとした光が漏れてくる点が見えてきた
その点が徐々に大きくなり、通過する頃には、リザードマン達の速度が遅くなり、気付いたら停止していた
そこは、薄暗い広い空間で、光る植物や、光る鉱石、また、ランタンのような物で、ある程度の明るさを保っている感じだ
「あら、じめっとした所を想像したけど、案外、幻想的な空間ね
空気も澱んでないし、いい感じね」
ヒロは、ゆっくりと足元を確認しながら、リザードマンの背中から降り立ち、周囲をゆっくり見回す
「すげぇ!ここは、地下だろ?
なんだこの空間は?」
「いらっしゃい
ここに住んでから、400年くらい経つが、初めてのお客さんが、あの時のエルフ殿と、そちらは、ヒロ・・・くんかな?」
さっきまでは、何も気配を感じなかった空間に、突如として、1人の青年が現れた
400年などと言葉にするからには、シンディの親父さんだろうか?
しっかし、見た目は、30歳くらいにしか見えない
「あら、あの時の?
謝罪が遅くなったわね
勘違いとはいえ、ムキになっちゃってごめんなさいね
でも、そちらの同族が、先に手を出したのよ!」
「こちらこそ、遠縁とはいえ、同族がしでかした事をキチンと謝罪もせずにその場を離れた事、申し訳なかった
それに、聞けば、故郷の復興に御助力してくださったとか、感謝しかない、ありがとう」
ヒロは呆気に取られてしまった
以前、シンディやフィスの話しを聞いた時の記憶では、エルフの森の周辺に住む人間の村がヴァンパイアに襲われ、その事をシンディの村に話しを聞きに行ったフィスに対しても夜襲を仕掛けて、ヴァンパイアの近くの村で戦闘が行われ、そしてエルフの逆襲でヴァンパイアの村まで襲撃された、被害者が相当出たっていう争いだったはずだ
それが、今、当時のエルフ代表とヴァンパイアの党首の息子が、立ち話で終わらせようとしている
元いた世界で、もし大掛かりな争いがあったら、こんな簡単には済まないだろう
「ごめん、第三者の俺が口を挟むのは申し訳ないけど、そんな簡単に争いの謝罪って済むものなの?」
「あら、今、お互いちゃんと謝罪したじゃない
それに、元々の原因のこの子の同族さんには、その時、キッチリ罰は与えてるわよ」
そんな、ウィンクされても・・・
って、エルフのウィンクの破壊力ハンパないな、一瞬、胸に穴が空いたぞ!
「さぁ、立ち話もあれでしょう
たいしたおもてなしは出来ないが、座ってお茶でも飲んでいかないかい?」
「あら、いいわね
お菓子なら、ヒロ?持ってるわよね?」
なんなんだ?コレが何百年、何千年と寿命のある者達の余裕なのか?
ってか、さっきから、なんか、ものすごい視線を感じるんだけど、周りに何かいるんじゃない
ブルブルっと背筋を震わせたヒロが、小走りに2人の後をついていく
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「はい、こちらが、私の父上
で、父上!コイツが、ヒロ
多分、っていうか間違いなく、コイツの血から作った、あの玉で、父上は元気になれたんだわさ
ヒロ・・・ありがとうだわさ」
建物に入り、ランタンの数は多いが薄暗い居間のような部屋に通され、シンディがお茶を用意してくれながら親父さんを紹介してくれた
それと、珍しくシンディが、俺を名前で呼んだし、お礼を言われたよ
「シンディ、お客人に、しかも、私の恩人に対して失礼だよ
改めて、私が、シンディの父でドレックァださ
ヒロくん、シンディが失礼な態度で申し訳ない
1番大事な時期に私が動けなかったものでね
躾がなってなくて申し訳ない」
ドレックァが、礼と謝罪を込め軽く頭を下げた
「いえいえ、俺は何もしてないです
ひょんな事からシンディと知り合って、血を抜かれただけですからw」
既に傷跡もない首筋を無意識に撫でながら答えたあと、マジックバッグから、買い置きした手頃なスイーツを出す
「コレコレぇw
あら、あなた達って、甘いものは食べられるのかしら?」
と、既に気に入った物を手に取り、食べようとしながら疑問を口にするフィス
「バカにしないでよね
何でも食べるんだわさ
ねぇ、父上」
「あぁ、味も分かるよ
まぁ、シンディと違って、私は、お腹が一杯になるまでは食べないけどね」
"へぇ"と、答えた時は、既に一口ほぉばっていたフィス
「でっでもさ、俺の印象では、ヴァンパイアって、もっとこう・・・怖いというか、そのぉ・・・」
「ははは、ヒロくんは正直だね
確かに私たちは、生ある者
の血を吸って生きる種族、君たちからしたら、野蛮な存在かもね
でも、昔はどうだったか知らないが、私たちは、人間と共存を望む一族だよ
まぁ、ここに住むようになってからは、ずっと、床に伏せていたけどね」
ん?
フィス達とヴァンパイアの争いは400年前だから、ここに住み出したのもそのくらい前だろう
じゃぁ、400年も動けなかったって事は事実なんだ?
「まぁ、あの時のあなたの同族さんには、一生起きられないくらいの怪我をプレゼントしてあげたけど
あなたは、何が原因で怪我をしたのかしら」
げっ!!さらっと、フィスから怖い発言があったけど、そうだよ、一体、何があったんだろう
「まぁ、たいした事はないんだけど
村を出てから、夜な夜な東へ旅をしてね
まだ、この辺には街なんて無かったんだが、ちょっと南に小さな村があってね・・・
そこにお世話になってたんだが、やはり私が夜しか外に出れないせいで、妻とシンディに苦労をかけてしまってね
それに無限の体力を誇る私でも、血を摂取しないと徐々に体力が落ちてしまってね
でも、村の人達には頼れず
そしたら、ここに地下への入り口を見つけてね
入ったところ、彼ら・・・リザードマン達がいたので、助かったよ
体力も回復したし、地下まで下がってきたら、ここを見つけたんだが・・・」
ドレックァは話しを一旦止めて、果実水な手を伸ばす
「その時、この建物から、ここに住んでいると思われる白髪の老人が出て来てね
いやぁ、挨拶しようとしたら、いきなり捲し立ててきてね・・・」
ドレックァの口調はやわらかい・・・
だが、話しを進めるのを躊躇しているようにも見受けられる
ドレックァは再度、お茶を一口啜った
と、言うより、唇を濡らした程度だ、ヴァンパイアは、血以外は、あまり口にしないのだろうか?
「私は、勝手に侵入した事を謝罪し、頭を下げたんだ
ちょうどその時、妻が私を心配して探しにきていたんだよ
それを見つけたアイツが・・・」
ドレックァが言葉を詰まらせた
視線は、手に持つカップを見ているように見えるが、すごく遠くを見ているようにも思える
「アイツの放った蒼い炎が、妻の体を掠めたようにみえたんだが、なぜが蒼い炎が妻の体に燃え移だてしまったんだ
はたこうが、私の衣服を被せようが消えないんだ
少しずつ蒼い炎が広がっていき、もうどうしようもなくなった時には、私の理性が音を立てて崩れていくのを感じたんだ・・・」
目の前で、自分の妻が炎に包まれていく状況が、ヒロには想像できなかった
そりゃ、辛いだろう・・・もしも、俺の時・・・、あの時俺の目の前で妻を亡くしていたら・・・
ダメだ、想像できないし、胸がはち切れそうだ
ドレックァさんは、そんな経験をしてしまったんだ・・・
しかし、何だろう、ドレックァの話しをの中に出て来る、白髪の老人ってのに、何かが、引っかかる・・・
「気がつけば、私は、目の前の老人に襲い掛かり、持てる全ての攻撃を打ち込んでいたよ
何故か、老人が、途中から、大きな鳥に変貌していたが、そんな事はどうでもいい
サンディへの・・・妻への攻撃が許せず
自分の体に蒼い炎が燃え移るのも気にせず、攻撃を続けたよ」
ドレックァは、まだ、火傷の痕が残る左腕を見つめる
少し感情が、和らいだ気がするが、ドレックァの視線は、虚空を見つめていた
「主よ、その続きは私がしましょうか?」
突然気配もなく、ドレックァの後ろから、浮かび上がるように現れた、首の無い鎧!
こっ、これは、ゲームにも出てくる、デュラハーンじゃないのか?
「おお、デューイ!
来てくれたのかい?
紹介するよ、彼は、ここの先住民の1人で、私が前の住人を追い出した事に恩義を感じてくれて、ずっと私たちの面倒を見てくれている
彼は、ヒロくんで、どうやら彼の血のおかげで、私の怪我が回復したようだ」
ドレックァは、デューイと呼んだ相手が現れても慌てる様子もなく、ヒロ達に紹介した
「いやいや、そんな、俺の血だけじゃないと思うけど・・・」
「おお、主の恩人殿であるか!
話しを折ってしまうような形で、お邪魔してしまい申し訳ない
ここに住む者を代表して心から感謝を申し上げる」
ガシャと音を立てて鎧がこちらに傾いた
頭が存在すれば、頭を下げた形になるのだろう
「へぇ、あなた達が、主人を持つなんて珍しいわね
前から思ってたけど、その声ってどこから出てるのかしら?」
前から知り合いであるかの様に話しかけるフィス、これが、エルフの特性なのか?
「これはこれは、長寿なハイエルフ殿、ワレのようなはぐれ物の身、いつからか、ここに住ませてもらっておるのよ
それと声など、この世に生を受けた時から出ておるので、仕組みなど考えた事もないですな」
デューイと紹介された鎧の人も、最初からここに住んでいたわけじゃないみたいだ
「それはそうと、ドレックァさんは、その蒼い炎のヤツをやっつけたの?」
少し、ジョーダン的な雰囲気になっていたけど、俺も気になるんで話しを戻させてもらった
「それはそれ壮絶な戦いでな、我らでは、太刀打ち出来なかったアヤツを主は、倒した
流石にアヤツを消滅させる事は出来なかったが、我らの根城から追い出してくれたのだ
残念なのは、奥方様・・・
我らの様な、神に信仰をしていない者達では、傷を癒す事が出来ず・・・
だがしかし、この場所を取り戻してくださった主は、頑丈だけが取り柄のようでな、命だけは取り留め、今に至ったのだが、恩人殿のおかげで、ようやく動けるようになったのだ」
デューイは、ドレックァのの隣に立ち、身振りを交えて過去の出来事を話してくれた
彼が代弁する事で、ドレックァも気が楽になったのか、今度は、楽な感じで話し始めた
「おいおい、頑丈なだけではないよw
しかし、目が覚めた時は、妻を失った現実を受け入れられなくてね
死のうとも考えたが、あいにく体が動かなくてね・・・
デューイ達の熱意に負けて、今まで、生きながらえたようなものだよ」
またもや、左手の火傷を見つめるドレックァ
「そっそうなのだわさ!
あの時は、父上も母上も急に居なくなって、凄く寂しかったんだわさ
そしたら、この子が迎えにきてくれただわさ」
と、言いながら、シンディが横に手を伸ばすと、8個の赤い球がキラッと光って、徐々に姿を現した
「うわっ!デカっ!」
椅子に座っているシンディの横に大きな顔を出した"クモ"!
「恩人殿は、コイツを見た事がないですかな?
コレ、恩人殿に失礼のない様にな!」
デューイと呼ばれた首の無い鎧に注意をされた大きなクモは、軽く足を挙げて静かに後ろに下がった
「嫌な事を思い出させるようで申し訳ないんだけど、その蒼い炎の奴が、白髪の老人だったって言ってたけど、どんな奴だったの?」
俺は気になって聞いてしまった
「あぁ、冷めた目をして、薄暗いローブを纏っていたね
身の丈は、ヒロくんより小さかったかなぁ
でも、鳥に変貌した時は、私の倍くらいの大きさになっていたかもしれないね」
白髪の老人って、なぁんか、引っかかるんだよなぁ
エルフやヴァンパイヤでもないのに400年も前に存在しているわけもないしなぁ・・・
しっかし、白髪の老人ってのが気になるんだよなぁ
「その白髪の老人ってのは、ここに前から住んでたの?」
俺は、もう少し、その老人について尋ねてみた
「恩人殿よ、そやつは、主がここに来る、ほんの少し前に現れて、このフロアに住む我らの仲間を次々とあの忌まわしき蒼い炎で葬りながら、我らに服従を迫ったのよ
あのバジリスクですら、いとも容易く倒されてしまってな
ワレが皆を説得して、仕方なく服従したのだ
しかし、われらには自我がある為、アヤツが望むような服従が出来なくてな」
「え?そいつが望む服従ってなんなの?」
1人でバジリスクを倒したのも凄いけど、そいつがどういった服従を望んだんだろう?
「アヤツは、地上に住まう、家畜や鳥どもの魂を抜いてしまうのだ
魂を抜かれた奴らは、目から蒼い炎を出し、アヤツの命令しか聞かなくなってな
地上に出て行っては、下僕を増やしてきてな・・・
あのままでは、ここいらの地上は、アヤツに蹂躙されていたであろうな」
うーん、なんだろう、確か、俺達が蒼い炎を纏った大猪に出くわした時の取り巻きの猪も、今思えば、なんか操られていたような、ないような・・・
んでもって、蒼い炎の大猪と鳥・・・うーん、仲間なのかなぁ?
同一人物って事はないだろうなぁ・・・
「なぁんか、色々な事を聞いて、頭がパンクしそうだよ」
「ふふ、悩むなんて、ヒロには似合わなわよ」
ぐっ、フィスに痛いところを突かれたよ
ん?てか、ドレックァは、通路から入って来たって言ってたな
「ところで、ここに来る手段って、あの通路だけなの?」
「ああ、私が入って来たのは、あの通路だけど、地震で入り口が塞がってしまってね
一度だけ、みんなに背負われて、通路のどこの壁に穴を開けた気がするな
シンディ達はそこから、地上に出ていたと聞いているよ」
通路の壁?
もしや、先日、ジムさん達とバジリスクを倒したとあの部屋の壁の穴の事か?
って事は、俺があの壁の穴を塞いじゃったから、出入り口がなくなっちゃって、今じゃ地下1階の階段の部屋の通気口と、秘密のドアだけになっちまったってことか?
「他には、ここに来る手段はないの?」
「あとは、ダンジョンに繋がる扉があるが、さすがにダンジョンのヤツラは手強くてな、ワレでも通り抜けるのは無理であったな」
ドレックァが指を指すが、暗くてよく見えない
そこに扉があるらしい
「じゃぁ、地上に出るには、通路を通るしかないんだ?」
ここへ来るための手段があの通路しかないって事になると、現状のままでは、シンディと、多分ドレックァだけしか地上に出れなくなっちゃうな
入り口をちゃんと作った方がいいのか、ダメなのか、俺だけでは決められないなぁ
そんな事を考えていると、俺とフィスの間に、ヌルッと真っ赤なリンゴが2つ差し出された
「あら、ありがと
見かけによらず優しいのねw」
「あっ、ありがと
って、クモ!」
そう、さっきシンディの隣にいたクモがリンゴを差し出してくれた
「えっ?でも、このリンゴ、新しい・・よね?」
「それは、こやつが、ダンジョンを抜け出て、主の為にいつも取って来るのだが、どうやら、こやつのお礼の気持ちらしいので、受け取ってやってくれたらありがたい」
"ありがとう"と、言いながら、齧った
「あっま!」
ヤバい甘さだ!
ん?
「でも、今、ダンジョンを抜け出してって言ってなかった?」
「ははは、恩人殿、こやつは、身を隠すのが得意でな、ダンジョンを守る者どもにも見つからずに地上に出る事が出来るのだ
それに、うまい果物を探すのも得意なので、安心して食べてくれていいぞw」
どうやら、あの大きなクモは、擬態が得意で、身を隠しながら、ドレックァの為に、地上に出ては、果物を採ってくるそうだ
しかし、あの大きなクモだって、あの大きさならかなり強いだろうに、身を隠しながらでないとダンジョンを通過できないって、どれだけ下層のモンスターは強いのだろう
「こやつの話では、ここから、5階層は、ここと同じようなフロアになっておって、木々が生い茂るフロアや、マグマの流れるエリアもあるらしい
そこに住まう者どもも、かなりの猛者であろうな」
「おいおい、デューイ、そんな危ない場所なのかここは?
私は、そんな危ない場所に400年も、寝込んでいたのかい?
今更になって、背筋が震えてきたよ」
凄い情報だよ、このダンジョンは、下層に来ると、フロア全体が、一つの世界のような広がりをもってるんだ!
こんな事、ジムさん達に教えたら、たまげるだろうな
「でもさ、このダンジョンって、下層に進めばどんどんモンスターが強くなっていくんだろ?
なら、デューイなら、上の階層のモンスターなんて、簡単に倒せるんじゃないの?」
俺は、元の世界でのダンジョンRPGの鉄則、また、このダンジョンの地下6階までの出現モンスターは、ジムさんからもらった地図に記載されていたが、下層に行けば行くほど何やら強いモンスターに出くわす感じだったので、素直に聞いてみた
「そうでもない
全てのフロアではないだろうが、フロアを守る者がいるのだ
もしも、そやつに見つかったら、ワレなど逃げるしか出来ぬ」
なんだってぇ?フロアボスがいるなんて、面白すぎる!
これ、地上から、アタックしてる冒険者には、マジで言えないじゃんか!
「そんな話しは、今まで聞いてないだわさ!
じゃぁ、その守る者ってやつは、ここにはいないの?」
俺の出したお菓子に夢中になっていたシンディが、何気なく聞いた
デューイがゆっくりシンディに向きを変える(と、思う、顔がないから体の向きでそう思う)
「おお、シンディ嬢!さすが主の娘!
実は、ここもワレらを率いる者がおったのですが、蒼い炎のヤカラにやられてしまって、今だに燃えてる状態なのです
まぁ、あの方を倒したヤカラを主が倒したのですから、実際、ここの守り主は、主になりますな」
このフロアを救ってくれたドレックァに対しての立ち振る舞いは、服従に近いものを感じたが、そういう事があっなら、絶対的信頼を寄せてもおかしくはない
「おいおいやめてくれ、君達からしたら、私なんて新参者だろう
仲良くやっていこうじゃないか」
急に話しを振られ、慌ててティーカップをおろすドレックァ
「でってもさ、その負けちゃった人が、未だに燃えてるって事は、まだ、死んでないんじゃないの?」
「いやいや、いくら妖精王と謳われたあの方でも、流石にあの燃えようは・・・
それに、炎を消す術もないのでな・・・」
そう言ったデューイは、少し沈黙した
もしかしたら、その元の守り主?の事を考えたのかもしれない
でも、燃え続けるには、燃える為のものが必要、そう、"燃焼の三要素"!
これは、こっちの世界では、意味を成さないかもしれないけど、俺は、そこに燃えるものが存在すると思うが、ここは、ドレックァやデューイの居場所なので、深くは詮索しないことにしよう
「それならいいんだけどね
ところでさ、ここが、ドレックァさん達の住む場所だとして、ここに、そのぉ、住んでる人?達って、さっきの話じゃ、その蒼い炎の人に魂を抜かれなかったって言ってたけど、もしかして、みんな自我というか、そのぉ、意志を持ってるの?」
俺は、ここに来てから、多分だけど、かなりの数の視線を感じてる気がしたので、確認のために聞いてみた
ドレックァやシンディが、何を言ってるのか?みたいな顔をしてきた時だった
シャァァァァァ!!
ズルッズルッ
喉の奥から出される、リザードマンとは違った重みのあるシャー音!
絶対、大きな体と断定できる、地面を引きずる音
間違いない、この威圧感と、音は、奴しかいない!
「バジリスク!」
俺は、振り向いた瞬間に、椅子から転げ落ちた!
そこには、前に倒したはずのバジリスクと同じくらいの大きさのバジリスクが、舌をチロチロ出しながら俺を覗きこんできていた
「コラ!ソイツは、父上を助けてくれたヤツだから、食べちゃダメだわさ!」
シャァァァァァ⤵︎⤴︎?
若干、疑問系的なシャー音!
俺は、ゆっくり、後ろに這いずる
って、なんで、フィスはくつろいでいられるんだ?
「これ、いきなり現れるでない!
おお、恩人殿、失礼した
そやつらは、ここの元の守り主に可愛がられていた者の子孫でな、話題が出たので起きてきたのでしょう
先ほどの質問の答えになるか分かりかねるが、ここに住む者は全員、主を守っており、言葉を理解し、また、簡単な指示にも従う優しい者ばかり
まあ、暴れ出したら手のつけられない者も多いですがなw」
やっ、ヤバイ、ちょっとチビったかもしれない
でも、デューイの話では、ここに住む者全てが、俺たちの言葉を理解するって事か・・・
「ヒロ、驚きすぎよ
全然、殺気を感じなかったでしょ?
まぁ、私も、不思議な感じはするけど、あなたには好意的な雰囲気よ」
なっ、なんで俺に好意的なの?
ん?ドレックァさんを元気にさせたから?イヤイヤ、それなら、シンディの調合のおかげだろ?
「ふん、悔しいけどアンタの血のおかげって、みんなは分かってるんじゃない?」
「でっ、でも、正直に言うけど、俺達は、この間、あそこの通路とダンジョンで、リザードマンやバジリスクを倒しちゃってるんだよ?
みんなに恨まれるんじゃない?」
俺は、みんなが勘違いをしている事を正そうとした
だって、もし、俺だったら、仲間を傷つけられたりしたら、その後にいくら優しくされたって、すぐに許せるわけじゃない
実際、俺は、シンディをあの時、ぶん殴ろうとした(出来なかったけどw)
ただ、色々話しを聞いたりして、大変だった事も分かったし、謝ったから、許そうと思っているだけだ
でも、俺は、謝っていない
なのに、なんで、こんなにも恩人扱いされるんだろう?
「ソレチガウ、ナカマハ、アルジマモルタメニタタカッタダケ
オマエ、アルジ、タスケタ
アルジカラ、オマエカンジル」
「うわっ!」
ここの住人は、わざとかってくらい、後ろから現れる!
見たら、革鎧を着こんだリザードマンが立っていた
息が漏れるような感じの声というより音に思えるが、しっかりと俺の目を見て話してくれた
「でっ、でも俺たちは、かなりの数のリザードマン達を倒しちゃったし
バジリスクだって、そんなにいないんだろ?
それを倒してしまったのに・・・」
「恩人どの、気になさるな
われらにとっては、何をされたかより、何をしてくれたか!
の方が大事な事
前の主は、確かによくしてくれて、恩はある、しかし、ここを守れなかった
しかし、今の主は、身を挺してここを取り返してくれた
そして、その主を恩人どのが元気にしてくれた
われらにとっては、それが大事な事なのでな」
デューイが、ゆっくりと、そして明らかに気持ちを込めて話してくれた
なぜか、大きなクモも、リザードマンも頷いている
シンディまで、目を瞑った状態で、腕を組みながら、首を縦に何度も降って頷いている
「そうなのだわさ
アタイ達は、やられたらやり返すけど、受けた恩は、ちゃんと返すんだわさ!
悔しいけど、アンタには、父上を助けてもらったから、ちゃんと恩は返すわさ」
と、プイっと、横を向いたが、全然怒りを感じない
「まぁ、ヒロくん、そんな事だから、デューイ達の好意を受け取ってあげてもらえるかい?
それに君に助けてもらった私も、何かしら協力させてもらえたらありがたい」
「いやぁ、そんな改まってやめてください
俺たちだって、あの時は、人を探しに来たんだけど、色々してしまって申し訳ない
それと、言いそびれてたんだけど、さっきドレックァさんが言ってた、ダンジョンへの入り口の壁をふさいじゃったんだけど、問題ってあります?」
え?というようなドレックァと、若干、リザードマン達にザワつきが広がった
「恩人どの、ここには地下水の川も流れていて、我らは、ここでの衣食住は事足りているのだが、やはり、少し欲を出てしまってな
ダンジョン内の魔物を糧にしたり、アイツのように地上に出る者もいる
決して、地上で住む者とモメるつもりなどはないが、ダンジョンや、地上に出れないってなってしまうと、ちと不便ではある」
「ですよねぇ・・・・
外の新鮮な物も食べたいですよねぇぇぇ」
俺は、無い頭をフル回転させた
ただ、単に、通路の入り口を直したところで、地上にいきなりリザードマン達が地上に現れたら、それは、大変な事になるよなぁ
しばらく悩んでいると
「そうだわさ
父上!
街には、母上のような優しい人間もいたんだわさ!
いつ遊びに行ってもいいって言われただわさ!
その人・・・ノラって人が、コレをくれただわさ
栄養つけなさいって」
「そうかい?
どれ?おっ、これは懐かしい味だね
サンディの母君が、たまに作ってくれたのと似ているね・・・」
感慨深くノラの作ったシロップの入れ物を見つめるドレックァ
「シンディがお世話になったんなら、お礼に行かないとね」
「そうなのだわさ!
ノラを見たら父上もびっくりするだわさ」
シンディがこんなに笑顔が可愛いとは思わなかったし、その娘の街での出来事をそれまた笑顔で聞くドレックァさん、これが親子なんだろうなぁ
多分、ヴァンパイヤってめちゃくちゃ強いんだろうけど、この2人は、間違いなく、普通の親子だ
って、ノラさんってホント気が効くなぁ
「ドレックァさんが、よかったら、今度、晩飯にでも遊びに来てくださいよ
俺から言っとくんで」
「いいのかい?
何から何まですまないね
本当に、今日はありがとう」
ダンジョンの中ということもあり、時間の流れが分からないが、最初は、ちょっと怖かったが、この世界には、自分と外見が全く違う存在でも、意思の疎通ができる生き物?魔物?が、いる事実が分かって、だんだん面白くなってきた
「あのさ、ダンジョンの壁を塞いじゃったお詫びにさ
ちょっと、夕飯?になるかな?
作らせてもらってもいいかな?」
俺は、調子に乗って、マジックバッグから、ダイヤが獲ってきて、保存していた肉や野菜といった食材が、まだまだ余裕たっぷりだったので、シチューを作る事にした
「恩人殿は料理もできるのか?」
「くやしいけど、コイツの作る物はうまいんだわさ
みんな、手伝うだわさ!」
なんだか、知らないけど、リザードマンをはじめ、さっきの大きな蜘蛛まで手伝おうとしてくれている
「オンジン!サカナモイルカ?」
「あっあぁ、いいね!
焼いて食べたら美味いよ!」
話しかけてきたリザードマンが、"シャー"と、一声発する、ザザザっ!ザパパパパァーン!と、川になにかが飛び込む音が、少し離れた所から聞こえてきた
シチューに、具材を入れ終わる頃には、足元に、魚やら、カニかエビのような生き物やら、何かの幼虫みたいなのが、メチャクチャ集まってきた
「げ、流石にこれは・・・」
と、カブトムシの幼虫のデカバージョンのような虫を俺はつまみながら眺めた
「アタイもそれは無理だわさ
でも、かなり美味いとみんなは言ってるだわさ」
「ワタシも無理よ!」
当たり前だが、女性陣には人気がない、ってか、俺も無理
すると、これを掘ってきたと思われるリザードマンが2体、肩を落として"シュー⤵︎"と、息を吐いた
「コレハ、オレタチクウ!」
と、防具を着たリザードマンが言うと、"シャー⤴︎"と、何体かのリザードマンが、幼虫の取り合いを始めた
もしかしたら、マジで美味いのかもしれないw
あまりの魚の量に、焚き火を増やして、魚には、俺の持参している塩をかけて、串焼きにして、まずは、獲って来てくれたリザードマンに食べてもらったところ、飛び跳ねて喜んでくれた
シチューの方は、フィスをはじめドレックァからも称賛をもらえた
意外と大きな蜘蛛が、シチューが好きなのが知れて驚いた
「オンジン、シロイノ、ナンダ?」
「ん?これ?塩だよ
なんなら、沢山あるから少し置いていくよ」
俺は、マジックバッグから、紙袋に10kgくらい入った塩を皮鎧を着たリザードマンに渡した
「アリガトウオンジン、ワレラ、オンジンニフクジュウスル」
シャッシャッシャッw
明らかに笑っていると思われる音が、リザードマンから発せられた
「いやいや、ドレックァさんがいるじゃないか?」
「アルジ、ガンジョウ、ダイジョウブw」
そしてまた、シャッシャッシャッwと大口を開けて笑った
どうやら、リザードマンは案外ユニークらしい
「ちょっとぉ、私にも、食べさせるだわさ
ヒロは、私が連れて来たんだからね」
シンディが、1人?のリザードマンに飛び掛かり、持っていた焼き魚を奪った
「美味しい!もっとかけてよぉ」
「あまりかけると喉が渇くぞ!」
皮鎧のリザードマンから塩を奪おうとするシンディを俺はたしなめた
美味しいものがあれば、その場はまとまる
さらにアレがあれば尚更のこと・・・
少しいなくなっていたデューイが、何やら小さな樽のような物を持って現れた
「主の快気祝いを兼ねようと持ってきたが、恩人殿がイケるくちならありがたいな・・・
主、開けてもよいか?」
「デューイ、良いも何も、君達が管理してるものだろう
しかし、まさか、それが飲める日が来るとはね」
デューイは、ドレックァの返事を待たずに、"シュポッ!"と、樽の栓を開けた
なんとも言えない、芳醇な香りが漂い始めた
「さぁ、恩人殿、長寿なエルフ殿、杯を・・・」
俺とフィスは、自分達の魔石制カップを差し出して、注いでもらった
美味い!と、感じたのは確かに覚えているんだが、なぜか、その辺からの記憶は、だんだん薄れていて定かではない・・・
脳裏に焼き付いているのは
リザードマン達のファイヤーダンス
デューイの変な兜を使った芸
大蜘蛛の糸を使った射的
(いやぁ、これは凄かった、かなり遠くに置かれたリンゴを絡め取っていた!)
それと座った目で俺に何かイチャモンをつけてる赤ら顔のフィス
なぜだか、シンディが俺の腕にしがみついていた事か・・・
いやぁ、なんだろう、この浮遊感
あの樽の赤い酒は、果実酒?ワイン?
まぁ、あっちの世界でもあまり酒を飲まなかった俺にはよく分からないが、こりゃ、かなり酔ってるな
まぁいい、このまま寝ちゃおう・・・
みんなそれぞれが、ワイワイ楽しんでいる声が、何故か心地よく、ここ最近の激務のせいか、俺は眠ってしまった・・・
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「ほお、あの男は、東のダンジョンの村に向かったのか?
まぁ、あの盾の製作者が、そこに滞在しておるからであろう
して、他の者どもの動向はどうじゃ?」
レイモンド邸の壁と隣の屋敷の間の通路
灰色のローブを纏った白髪の老人が、目の前に跪く数名の男達に問いかける
「はっ、あの男と同居していると思われる女達4名と仲間が、街を出て南に向かっております
多分、アルジアへの行商かと思われますが、何故か、あの忌々しいダイヤウルフも同行しております」
「ほぉ、ワボアの奴を倒したあの狼か?
まぁ、ソイツが街を離れてくれたのはありがたいな
他には、ないか?」
白髪の老人は、どんな些細なことでもいいから報告しろと促した
「はっ、どうやら、クレア様が、今宵は、あの男の屋敷に泊まるらしいです」
「なぬ?あの狼の飼い主の家にか?」
これまで慌てたそぶりすら見せなかった白髪の老人が、皺だらけのほっそい目を見開き確認した
「はっ、レイモンドの屋敷を出る際に、そのような事を話しておりました」
白髪の老人は、皺の多い口元をニヤリとさせた
「街の外でと思っておったが、案外簡単にいけそうだの・・・
よし、まずは、小娘から始末してやろうかの・・・
ひぇっひぇっひぇっ」
路地裏に白髪の老人の気色の悪い笑い声が響く
「全く、なんてこった
ヒロさんが居ない時にそんな事させられるかってんだ」
路地裏の入り口、壁の一部が、少し動いた
その壁の一部が悪態をついたと思ったら、既にそこには誰も居なかった・・・・
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「ごめんくださぁい!」
ヒロの家の横の路地の扉の前で大声で呼ぶ女性
「ちょっ、目立ちすぎです!」
「大丈夫ですわ!
見てくださいな、1番地味な服装で来たのですよ
目立つはずがありませんわ!
ランディは心配しすぎですわよ」
・・・
しばらく沈黙があり
「全然、目立ってますよ」
隣に立って周囲に気を配りながらマリーがボソリと言う
ツバは小さいが、長い髪の毛を丸ごと纏めて被る帽子
色は黒いがヒラヒラのついたシャツ
ズボンではあるが、こちらもヒッラヒラのついていて、ここに来るまで、通りすがる人達が振り返りまくっていた
しばらくすると、扉が開き
「いらっしゃい
王女様?かい?さぁ、入ってくれてかまわないよ
あっ、わたしは、クリスの幼馴染のリリスです
さっ、そっちの人も速く入って入って」
リリスは、相手が王女だろうが、知り合いに接するような態度で、路地にいた全員を招き入れた
「今、クリスは、慌てて片付けしてるから、とりあえずくつろいでくれるかい
しっかし、王女様、目立つ服装だなぁ」
「えぇ、ショックですわ
暗がりに紛れるようにシックに纏めてきたのですわよぉ」
クスッと、ランディとリリス目を合わせてが笑ったが、クレア王女は気にしない
「少し荷物が多いので、ランディ達に運ばせますわね」
ランディと衛兵が木箱を2つ家に運び込んだ
「では、我々は表の警備をしますので、朝まで楽しんでくださいぃ」
と、何故か棒読みのランディ
「なっなんか、ぎこちないね
まぁ、いいか
っていうか、お忍びで出かけるなら、ちゃんとしたお忍び用の服も必要だね
後で、見繕っておくよ!
あっ、うち、服屋だから
そっちの姉さんも、ヒロさんのお仲間だろ?
一緒に見繕っておくね」
「あっ、オレは、このままでいいよ
いつでも動けるようにしときたいんだ」
肩を窄めるリリス、今度は、家の方に向かって声をかける
「エミリーさんだったっけか?
クリスがアレだから、お客さんを頼むよ
私は、おもてなしの仕方とか分からないからぁ」
リリスが言い終わるや否や、ヒラヒラエプロン姿のエミリーが裏口から顔を出し
「おまちしておりました 既にお風呂の用意はしてありますので、まずは、皆さん汗を流してください
今、夕食を用意してますから」
魔術学院に戻ったはずのエミリーは、仕事を全て部下に任せ、先に来て魔力で風呂を沸かし、料理がからっきしのクリスに代わり料理をしていた
「えぇぇ!お風呂があるのですか?
しかし、私は皆様の後でもよろしくてよ!」
「ダメでしょ!
オレもっ、私も入りますから、先に洗っちゃいましょう」
マリーの申し出にエミリーが怪訝な顔をする
「マリーさん、いくらお泊まり会と言っても、さすがに、王女と一緒は・・・」
エミリーがマリーに注意を始めたところ、話しを遮るかのように、エミリーの耳元でマリーが何かを伝える
一瞬目を丸くしたエミリーだったが、落ち着いた様子で
「あら、そんな事が?
では、マリーさんお願いしますね、私は、こちらで、料理を仕上げておきますね
王女、安心してください!
今夜は、美味しい料理を用意してますのでw」
「嬉しいですわ!
では、ゆっくり長湯ができそうですわね
エミリーとマリー、そしてクレア王女は、互いを見つめて頷いた
口元は笑っているが、目は笑っていない
クレアが、一度外に出て、おもむろに手を挙げた
すると、暗影から、猫の鳴き声が聞こえた
「なんだい?外に何かあるのかい?
しっかし、王女って言うから、もっとこう、偉ぶってる人なのかと思ったら、親しみやすい方なんだな」
「ちょっと、お外の温度を確認したまでですわ
ワタクシ、今夜は、普通の女の子ですので、リリスさんも普通に接してくださいね」
"あいよ"と、いつも通りの口調で返事をするリリス、生まれてこの方、偉い身分の人と接した事がないので、よく分からないが、この王女が、普通じゃないことは分かったようだ
「ずいぶん気さくな方なんだね」
「ふふっ、10年前にお会いした時は、可愛らしい方でしたが、今は、もう、素敵な王女になられましたわ
リリスさんも素敵な対応ですわね
王女は、リリスさんのように接しられるのが好きなはずですよ」
リリスが、注意されたのかと少し慌てた
しかし、素に戻り、手に持った人数分の着替えと拭くものを持って浴室に向かっていた
「エミリーさん、誠に申し訳ありません
私から、キツく言い聞かせておきますのでお許しください
私も、リリスも、冒険者の親に育てられましたので、育ちが良くないのです」
部屋の片付けを終えたクリスが、階段から降りてきた
「いえいえ、いいと思いますよ
何やら、今夜は、イベントも用意されているようなので、早めに夕食にしちゃいましょ
クリスさん、並べるの手伝ってくださいね」
クリスが慌てて、小走りになる
食事を並べるくらいなら!と、鼻息荒く挑むのだった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
クレアとマリーが、風呂から上がり、他もメンツも風呂を済ませて、食卓に腰を下ろしたところで、クレアが話し始める
「クリス姉さん、リリスさん、最初に謝らせてください
実は、私達、今夜、襲われます!」
"えええええええ???"
いつも読んでいただきありがとうございます、超七玉です
少々、プライベートでバタバタしてしまい、投稿がくれました
書きたいことは、いっぱいあるのですが、繋げるのが難しく、悩んでおります
どうかよろしくお願いさます
・訂正の報告
文章の途中で、魔術師学院の学院長エイミーをエミリーと記載していた箇所があったため、修正しました(2026/9/29)
エイミーの名前に決める時に、ずっとエミリーにしようか、エイミーにしようか悩んで決めたので、頭の中にエミリーが存在してしまったようです
以後、気をつけます
また、学生時代、国語の成績は、自慢ができるほど低かったので、誤字脱字が、あっても、どうか優しく見守っていただけたら幸いです
ありがとうございます




