第45話 聖剣の報酬
各々の成長ぶりを感じつつも、私の思考は冷静だった。
確かに勇者パーティーの飛躍は素晴らしい。
元はその一員だった身としても、喜ばしい変化であった。
とは言え、彼らを贔屓することはない。
私は決して情に流されず、公正な行動を取らねばならないのだ。
シアレスも私のことはよく知っている。
無償の救援を頼めるとは考えていないだろう。
私は朗らかな口調のまま、最も大切な部分に触れる。
「目的は分かりました。では次に報酬を決めましょう。これによって私の攻撃能力が変動します」
『……やはり契約なのだな』
「当然です。私の本業は傭兵ですから」
私は胸に手を当てて微笑する。
そして癖となった決まり文句を口にした。
「一太刀につき金貨一枚です。どうぞ自由にご提示ください」
『ううむ。念のために訊いておきたいのだが、少額の報酬でも依頼は達成できるものなのか?』
「別に可能でしょうが、かなり回りくどい方法になりますね。私から積極的に仕掛けられない以上、策を巡らせることになります」
攻撃回数が限られると、あらゆる行動に制約がかかってくる。
以前と同様に勇者パーティーと協力することになるだろう。
他にも考え付く手段はあるものの、やはり効率は良くなかった。
正面切って私が攻撃できる状態が最も望ましい。
「今回の依頼内容は謎の組織と黒幕の殲滅なので、実際のところは少額だと厳しいです。私を効果的に運用するなら最低でも金貨二十枚……余裕を見るなら百枚は欲しいところですかね」
『分かった。汝への期待に見合った報酬を用意しよう』
「それと言い忘れていたのですが、私は前払い制で働くようにしています。報酬を受け取るまでは攻撃できません」
『問題ない。汝が砂漠の大陸に来るまでに支払える』
シアレスが即答した。
妙に自信に満ち溢れている。
その反応を受けて、私は咳払いをしてから述べる。
「失礼ですが、それは可能なのですか。シアレスさん、あなたは砂漠の大陸にいるのでしょう?」
『そうだ。だから我が遺産の在り処を汝に伝える。歴代勇者の一人から継承した物だ。こちらへ来る前に回収してほしい。それを報酬とさせてもらう』
「なるほど、そういうことでしたか。実に良い案ですね」
歴代勇者と歩んできたシアレスならではの方法だ。
しかも勇者の遺産ともなれば、かなりの額になるのは想像に難くない。
今回の依頼は派手に暴れられそうである。




