第44話 それぞれの成長
説明するシアレスの口調は苦々しかった。
己の判断の甘さを悔やんでいるようだ。
勇者パーティーが窮地に陥ったことに責任を感じているのかもしれない。
「皆さんは殺されるか捕まったのですか?」
『どちらも違う。退路を断たれた我々は、大陸内で逃亡生活を続けている。しかし、いずれは限界が訪れるだろう』
「その状況を見かねたシアレスさんが、私に救援を要請したということですね」
『然り。勇者が反論するので、我の独断ではあるがな。彼は汝の力を借りるべきではないと考えているそうだ』
シアレスは淡々と語る。
ただ、言葉の端々に呆れが混ざっていた。
勇者の主張に思うところがあるらしい。
私は率直に疑問をぶつける。
「それは妬みですか?」
『否。事態の解決は勇者の責務であると捉えている。汝を超えるための試練とも捉えているのだろう』
「ほほう、随分と意識が高いようで。あなたの指導の賜物ですね」
『我の成果ではない。本人が血統に劣らぬ根性を見せているだけだ』
シアレスはすかさず断言する。
その口ぶりからして、勇者に対する評価がよく分かった。
半年間で本当に努力しているのだろう。
少なくとも、今代勇者として及第点には達したらしい。
ただ、その命は危機に直面している。
だからシアレスは勇者の意向を無視して思念を飛ばしたのだ。
私は話を本題へと移す。
「それで、私に要求する行動は具体的に何でしょう」
『砂漠の大陸に赴いて、兵器開発を進める謎の組織を殲滅してほしい。可能ならば背後関係を明らかにして、諸悪の根源を消せると尚良い』
「勇者パーティーの援護はしなくていいので?」
『必要ない。そこまで助力されることを勇者達も望んでいないだろう。汝の参戦に合わせて、こちらも為すべきことを為す』
シアレスがそこまで言うのだから信じるしかあるまい。
つまり別行動で目的を遂げればいいのだ。
私の得意分野である。
性格上、誰かと共に動くと不都合が生じやすい。
シアレスはその辺りも考慮して決めたのではないか。
(さすがは歴代勇者を支えた聖剣ですね。気が据わると見違える)
今のシアレスは固い信念を持っている。
一時は私を担い手にしようと迷走していたが、あの心境は克服できたらしい。
勇者の成長を間近で見て、勇者の名を継承できると分かったからだろう。
どうなるかと思っていたが、物事は丸く収まるものみたいだ。




