表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/58

プレイヤーの総力戦なの!

 

 私たちがリビングへ戻ると、そこでは男子会? が開催されていた。


「ようやく出番か」

「おおっ! タカマチ殿。死んでしまうとは情けない!」

「久我……久我じゃないの! あの時のアレって何だったの?」


 あの時。

 確かに逃げ遅れて、姫様共々潰されたと思った。


 けど、実際にダウンしたのは久我ひとり。

 あれ、身代わりになってくれたのよね?


「あれはディメンションランナーのスキルで、対象と対象の居場所を入れ替えることのできるスキルですよ。実は決闘レース前に鏡を忍ばせていましてね。その鏡を所持する場所へ瞬間移動できるわけですよ」

「ああ。だから久我と決闘レースする際は鏡を仕込まれていないか確認する必要がある。油断すると一瞬で逆転されることになる」

「でも鏡なんて」

「タカマチ君には私が仕込んである。ポケットを探ってみたまえ」


 言われて手を入れてみると、小さな折りたたみ鏡が出てきた。

 これが目印ってこと? こんなの言われなければ普通に使ってしまいそうな小道具だ。


「他にも条件はありますが、今回はそれで我らが姫様を守ることに成功しましてね。上手くいきましたよ」

「知らされていなかったのは癪だけど、助けてくれてありがとう」


 聞くとデス子ちゃんも知らなかったらしく、久我をゲシゲシ蹴っていた。


「戯れるのはいいが、そろそろ倒された頃じゃないか? HPは残り僅かだったんだろ?」

「ああ。我々で倒せなかったのは残念だが、他のギルドの有志が倒した頃合いだろう。なあに、タカマチ君が初めに倒してくれたおかげで、貢献度は十分だ」


 あと数発で第二形態のトドメもさせたのに、ちょっともったいないことをしたかな?

 今ゲームにログインできるのは流星と草の2人。

 どちらかがインして情報を持って帰ってこないと、私たちは状況を知ることができない。


 インしなくても掲示板にログインできれば楽なのに。


「そういえばアイツは?」

「まだ寝てるらしい。さっき起こしたが、二度寝でもしたか」

「さすが闇の住民、朝は弱いのね」

「アイツ何しに来たのよ」


 結局ボス戦には参加しないし、活躍したのは情報収集してお菓子買ってきたくらい?

 ただの雑用係じゃないの。


「ここは俺が行こう。状況を把握し、1時間後には戻ってくる」

「すまない流星。よろしく頼む」


 うちのエースしかログインできないなら仕方ない。

 情報は大事だし、アカバンの囚人があの後どうなったかも気になるし。

 せめてリアルでもゲーム内の知り合いがいれば、情報共有できるんだけど……ここにいるメンバー以外で。


「そういえばクルセさんって、他ギルドと交流はないの?」

「あるにはある。だが傭兵を名乗っている以上、あまり親しくはしないな。現にアジシャンズのアジトにも近づかないだろう?」

「たしかに」


 いろんなメンバーとパーティは組むけど、一期一会を大事にしているそうな。

 姫さんは……論外かな。


「その視線は言わなくてもわかる。あまり私を見くびらないでもらおうか」

「え、姫さんってトモダチいたの?」

「これでも初期プレイヤーだからな。ギルド同士の連携は取れるようにしてある」


 何でもトップギルドの集まりに呼ばれるほど……ではないけど、個人的な交流はあるとのこと。

 さっきからパソコンでカタカタしているのは、チャットでもしているのかしら?


「ねえ」

「何、デス子ちゃん」

「貴方姫様に失礼じゃない?」


 指摘されて、私と姫さんは視線を合わせる。

 ……確かに失礼な物言いばかりしていたけど、あれで姫さんはアヴァロン・トラジティでも有数の実力者、らしい。

 ステータスは平凡どころか底辺だけど。


「気にするな。そういう人物が1人いたほうが新鮮味に溢れるというものだ。それに」

「げ……」


 私の前に、練乳に浸かったままのトーストが出される。ご丁寧に生クリームもたっぷり乗せてある。


「そのほうが仕返しされても文句は言えないだろう?」

「…………いただきます」


 胸焼けがしそうなくらい、とっても甘ったるい朝食でした。






「詳細が判明した。どうやらまずいことになっている」

「どんなのだ?」


 姫さんのパソコンを覗き込むクルセさん。

 2人が夫婦ってことはわかっているけど、距離が近すぎない?

 顔を向き合わせれば、キスでもしそうな距離感だ。

 私は直視できず、思わず視線をそらしてしまう。


「これは……まずいな」

「何があったので?」

「簡単に言うとだ。第二形態は倒された。そして待機組を全て巻き込み、第三形態へ移行したらしい」

「え、どういうこと?」


 他のギルドからもたらされた情報によると。

 私たちが倒しそこねた第二形態を撃破。

 レイド戦待ち、またはおこぼれ狙いの待機組が全て消される。

 そして、第三形態の巨人が出現した。


「つまりどういうこと?」

「まずは落ち着くがいい。遠距離プレイヤーはほぼ全滅だな。マップを覆うような巨人を近距離職メインで倒さないといけない」


 それほぼ無理よね?

 まず近づけるのかも不明だし、アクティブユーザーはどれだけか。

 さらに、情報はそれだけではなかった。


「街の中は安全だが、今回はマップ全てが戦闘領域となる。巨人故に移動範囲もだだ広いな」

「逃げ場はないに等しいのね」


 第二形態のときは理不尽にBANされたみたいだけど、今回も何か罠があるのかしら。

 姫さんが受け取った情報はまだ続きがある。


「まだ不確定情報ではあるが、街から出たプレイヤーのステータスが半分になったらしい。フィールド全てが敵の領域なら、我らは半分の力で奴を倒さないといけない」

「ダメ押しじゃない」

「最後に。巨人に挑む勇者たちよ。恐れを知らない戦士たちよ。我らと共に光を求めよ! と書いてある」

「ガリバー旅行記?」

「作戦名は『ドレッドノート』だと。奴が戦艦並みの強敵なのと、恐れ知らずをかけているのだろう」


 そんなシャレたことを言われても、私たちの作戦はいつもひとつだ。


「どれ、流星が帰還次第、我らアジシャンズも出向くとするか」

「我らがエースと共にできないのは残念でありますが、話によると図書館サーバーの住民も集めて総力戦をしかけるとのこと。ちなみに待機勢までBANはさすがにないと掲示板が炎上しているようです」


 すごくどうでもいいです。


「我らも総力戦だ。全員、全力で走れ!」

「やっぱり?」

「ああ、滅多にない機会だ。ステータスが半分になるというなら、番狂わせが起きてもおかしくない。実にワクワクするではないか」

「ふふ。次のエースは私。兄さんの代わりは誰にも渡さない」

「おやおやぁ! これは実況のしがいがありますねぇ! 総力戦など何ヶ月ぶりでしょうか。エースが交代するか見ものです!」

「えーと、ボスはどうするの?」


 ポン、と唯一無関係であるクルセさんに肩を叩かれた。


決闘レースメインだ。ボスは障害物、いいな?」

「ですよねー」


 うん。

 そろそろ私もわかってきた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ