難易度ヘビー級なの
守ればいいだけなら、この前のメンバーみたいに『ステルス・プロテクション』でも使ってもらえばいいのだけど。
それを言ったら鼻で笑われた。
「私が使えるとでも?」
「すみません」
ただでさえ引きこもり気味な姫さんが、DEF500までステータスを上げるわけがなかった。
「いくらギミックが解除されたからといって、油断はするな。現にプレイヤーはあまりダメージを与えていないようだ」
「そうね。動かない敵というのも厄介ね」
「いくら的がデカくても、広範囲攻撃ばかりですし困りました。ここは私もディメンションランナーらしく次元を駆ける時がやってきたようですね」
よく見ると、久我はスノーボードのようなものを抱えていた。
懐から出したクロスで念入りに磨いている。
「何なのそれ?」
「よくぞ聞いてくれました! この道具こそがディメンションランナーの武器であり、私のとっておきでもありますライディングボードです! この足で走れないのは残念ではありますが、コイツを使えばどんな攻撃も――」
「次は私達の番だ。準備したまえ」
マシンガントークが止まらない久我は放置して、姫さんをデス子ちゃんがおんぶする。
「………………」
「何だ? 何が言いたい?」
「いえ、ナンデモアリマセンヨ?」
苦しそうな顔のデス子ちゃん。
察するに、彼女の「おっそーい!」という口癖が一文字変わっていることだろう。
……私もアレをホウキに乗せるのかあ。墜落しないかしら?
「ふん。旦那は涼し気な顔で持ち上げてくれるのだがな。そういえば流星もよく後ろに乗せてくれた」
「え!!」
「あの時は振り落とされないように、しっかりとしがみついたな」
姫さんは、まるでデス子ちゃんを挑発するように自慢している。
でもそのスレンダーボディ、あまり説得力がないような?
しかし、当のデス子ちゃんは違ったらしい。
「もうすぐ始まるわ! 姫さまも、もし振り落とされちゃっても知らないんだから!」
「ああ。できるだけ長く持ちこたえてくれ」
「………………」
30秒のローテーションの話よね。
デス子ちゃんの体力と、背中の重りに押しつぶされる話……ではないはず。
そうして、私たち4人の挑戦が始まった。
「敵は動かない! 範囲攻撃の前兆が見えたら回避しろ! 何、0.5秒もあれば十分だ!!」
「何それ聞いていないんだけど!」
予備動作。
ボスには攻撃の前に、パターン化された行動が定められている場合もある。
今回のアカバンの囚人第二形態には、広範囲攻撃の前にその予備動作が存在するらしい。
「来るぞ! 各自避けろ!」
「「了解」」
「え、ちょっ!」
あらわになった第二形態は、巨大な龍のような姿をしていた。
その巨大な岩みたいな身体の足が高く掲げられ。
そして……ドガァァァァン!! と振り下ろされた。
「きゃっ! アースクエイク? あれが予備動作なの?」
空の住人には効かないです。
久我もライディングボードに乗って空を飛んでいるし、肝心のデス子ちゃんは……キャノン砲を地面に対して撃つことで空を跳んでいた。
「うぐっ、いつもより低いぃ」
「そりゃ自身よりも重いモノ背負っていたらね」
「……ほう。今からスキルを使おうと思ったが、詳しく聞かせてもらいたいところだね?」
「あっ」
デス子ちゃんの嘆きに思わず反応してしまったけど、その後ろからぬうっと姫さんの顔が出てくる。
死んだわこれ。
「あーと、えっと、つまりアレですよアレ」
「ほう。来るぞ」
「え?」
今度は閃光玉のようだ。
一面がピッカァァアアア!! と眩しく光ると、身体を動かそうにも動けない状態に陥る。
今の何万ボルト? 飛行に電気は弱点だ。
視界も真っ白だし、もしかしたらマヒ状態かも。
「二人共もろに食らったか。まずいぞ」
身体も動かない真っ白な世界で、誰かに強く抱き寄せられた。
そして次の瞬間、全身を焼き尽くすかのような熱風が吹き荒れる!!
「あづっ!! 痛い痛い!!」
「我慢しろ。動くな」
「姫様、まだ?」
やがて肌を焦がすような風も収まり、ようやく身体に自由が戻ってくる。
「うっ、なにが、何があったの?」
「奴は閃光玉で動きを封じ、灼熱嵐で焼き尽くすというコンボを使ってきた。これも先程のプレイヤーに使っていた技と同じなので、対策は容易だったが」
どうやら姫さんが発動した水のヴェールに救われたらしい。
というか、わかっているならもう少し早く守ってほしかった。
「さて、私は今から詠唱に入る。これより30秒は何もできない。その間、奴のモーションを参考に避けてくれ。できるな?」
「できません」
「やれ」
移動だけでもヒーヒー言っていたデス子ちゃんが避けれるとは思えないし、久我に至っては「ライディングボード? 一人乗りですよ」と言っていた。
つまり、可能性があるのは私だけ。
「攻撃はデス子に任せ、防御は久我に任せろ。タカマチ君は回避することだけ考えていてくれ」
「もし被弾したら?」
「その時は今までの無礼と重ねて、君の食事は炭水化物マシマシにしよう。もちろんお菓子も好きなだけ食べるがいい」
「私を太らせる気なの!?」
敵の攻撃が来る前に姫さんを乗せ離陸する。
「うっ……」
「もし被弾したら、君のそのゴスロリ魔法少女をデス子に広めてもらうか……リアルで」
「さあ私の走りに付いてこれるかしら! 姫さんもちゃんと掴まっていてね!」
デス子ちゃんは姫さんの命令ならやる。
というか、ノリノリで写真をバラまいてもおかしくない。
「おのれアカバンの囚人! そうなったら絶対許さないんだから!!」
「――時は満ちた。そして、悠久の刻を駆け抜ける。彼の者は歩み続ける……」
詠唱は開始された。
避けるだけっていうのも退屈だけど、私の公開処刑がかかっている。
「久我! 守りは頼んだわ!」
「イヤッッホォォォオオォオウ!! さあ広範囲攻撃といえど死角はあるのか! それはまるでドラゴンのような巨体の真下だ! ここには攻撃は届かないィィィ!」
「いや守ってよ!!」
ブレスなのでなんとか上空回避できたけど、後ろのウエイト……げふんげふん。
姫さんを乗せたままあと何回避けられるか。
残り、25秒。
姫は引きこもりでもスレンダーですよ?




