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視線がバレバレなの

 

 小鳥遊さんは土日をはさんだ休み明けに登校してきた。


 私はあの時、余っていたSPをAGIに全振りしたあとは開き直ってレース三昧な休日を過ごしていたけど……今日やってきた小鳥遊さんの顔は、相当やつれている。


「お、おはよう……小鳥遊さん、大丈夫?」

「あっ、高木さんね。ごめんね、返信できなくて」

「それはいいけど……」


 彼女の目は虚ろだ。

 まさかログインできないからって、小鳥遊さんがここまでゲーム廃人だったとは……。

 目を疑うほどの変わりように戸惑っていると、そんな私を見て察してくれたらしい。


「一応言っておくけど、情報収集して寝不足なだけよ?」

「え? てっきりゲームできない病で落ち込んでいるのかと」

「……………………そんなわけ、ないでしょ」


 長く空いた間に関しては、ツッコミしちゃダメなの?

 とにかく、彼女が来たことによってようやく詳細を聞くことができた。



 いわく。

 気づいたら目の前にそれ・・はいたらしい。

 逃げようとしたけど、AGIが800を越えていたのに追いつかれた。

 追いつかれて、腕と足を拘束されたがすぐに解放された。

 一瞬だけ胸を触られた。

 強制ログアウト後、どうあがいても再ログインできなくなった。


 とのこと。



「質問していい?」

「何かわからないことでもあったかな?」


 いくつか気になる点はあるけど。

 私が一番聞きたいのは、やっぱりあのことだ。


「AGI800越えってホントなの?」

「うん。これでもレイド戦では活躍しているんだよ。あ、でも魔法職じゃないから|あいつら(暴走族)と一緒にしないでね?」

「そ、そう……わかったわ」


 魔法職でAGIをあげるのが異常なだけで、物理職では珍しくないのかな?

 それでもAGI800って、相当やりこんでいるか、私みたいに極振りでもしないとたどり着けないと思うけど。


 ちなみに同じ話を聞いていた男子二人は、胸を触られたと言ったところで盛り上がっていた。


「いくらアバターでって言っても、体格とかは大幅に替えられないはずだから……ゴクリ」

「ちょっと男子、私の胸見ないでくれる?」

「でも……いや……その……災難、だったな……ああ」

「君もバレバレだけど? チラチラ見ないでよ」


 もうっ! と膨れながら抗議する小鳥遊さんは、同性の私から見ても可愛い。

 愛らしい可愛さというか、無邪気な可愛さというか……とにかく、男子二人はセクハラなんだからね!


 結局、小鳥遊さんが知る以上の情報は得られなかったみたい。

 他のクラスの友人にも聞いたけど、運営への抗議が殺到しているという情報くらいだ。


「とにかく、今は対応を待つしかないから。長期連休までには解決してほしいんだけどなー」

「連休はガッツリやる予定だったの?」

「もちろん! レベル上限までもう少しだから、連休中にカンストしようかなって予定立てていたけど、あのイベントも参加できないし、ギルドのみんなにも…………ああっ、ごめんなさい!」

「え、ええ」


 想像以上だった。

 レベル上限? カンスト? 小鳥遊さんってガチ勢だったの?

 ……これならパーティに誘われなくてよかったかな。どう見ても私は足手まといでしかない。


「高木さんも、あまりソロでうろつかないほうがいいよ。見つかったら最後、逃げられないと思って」

「私も逃げ足には自信があるけど、わかったわ」






 …………そう別れたにもかかわらず、何でいるのかな?


 いつものようにレベリングをして、流星に見つからないように遊んでいたら……チラっと腕が6本ありそうな人影が見えた。

 空を飛んでいたらからマジマジと見ていないけど……アレってアレよね。


「気づかないフリをして、このまま追いかけてこなければ良いのだけど」


 後ろを見たらすぐ近くにいそうな気がする。

 何これ! ホラーゲームとかノーサンキューなんですけど!


「ようやく街が見えた! ……え?」


 目の前に、街の外観が見えたはずだった。

 でも何でかな? すぐ後ろから腕のようなものが2本、横に見えるような……。


「まって、無理ムリむりだから!!」


 これがもし、噂のアレで、さっきのが見間違いじゃなかったら……と思ったときには既に動いていた。

 私の指は素早くウィンドウを開き、通常のログアウトをする。


 これは一種の賭けだ。


 小鳥遊さんの話や、被害にあった体験談では皆触られたあとにログインできなくなっている。

 なら、例え目をつけられても触れられなければ?

 誰か試しているかもしれないけど、完全に逃げ切れる自信がない以上、リスクは侵したくない。


 ま、敵に目をつけられた状態でログアウトっていうのも一種のリスクだけど。


 現実に戻り、再度プレイ可能になるまで一時間。

 この間、小鳥遊さんにアイツと出会ったことや、その対処法。もしログインできなくなったら? などの話題で慰めてもらった。

 もし私もログインできなくなったら、連休中は二人で毎日カラオケに通ってやるんだから!


 そんな会話をしながら、早一時間。


「――アクセス!」


 ――ようこそ、タカマチさん。

 ――いってらっしゃいませ。



 あっ、普通にログインできたみたいです。

 よかった、セーフだ。

 小鳥遊さんには悪いけど、カラオケはもうちょっと待ってもらおうかな?



もうすぐギルメンのターンです。

リアルパートは筆の進みが遅くなりますね。

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