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レース決着なの!

 

 相変わらず流星がトップだけど、盗賊さんには追いつくことが出来た。

 ホウキに引っ張られたときはどうなるかと思ったけど……案外うまくいくわね、これ。


「くっ、簡単には追い抜かれてくれませんか」

「私、負けず嫌いなの!」


 彼女と併走するように走っている間にも、トップの流星と邪神くずれとの距離は縮まっている。

 私がターンしたタイミングと同時に、流星がさらに加速した。


「行くぞ! アクセル・ブーストォォォ!!」

「ここで使うの!?」

「ワォォォォオオン!!」

「えっ、ちょ!」


 流星の加速と連動するように、私達の後ろにいたフェンリル……犬も加速して瞬く間に追い抜かれる。

 もちろん、上に乗っているデス子ちゃんも一緒だ。


「なるほど。どうやら召喚獣は主の補正も受けるみたいですね」

「え? ということは」

「彼らもまた、スキル所持者であり能力補正を受けるということです」


 つまり……フェンリルのAGIもプラスされて、その結果デス子ちゃんにも抜かされたことになる。

 というか、一つ言いたい。


「デス子ちゃんのそれ、反則じゃないの!!」

「馬鹿ね。レース中は使えるものは使うべきよ!」

「ワンワン!」

「シャラップ!」

「クゥーン……」


 私の言葉に反応しながらも前を走っていく犬っころ。

 その後に私と盗賊さんが続く。


 トップは流星。

 そして、流星とこちらに向かってきた邪神くずれの距離がゼロになる!


「ここがお前の墓場だ、ゴッドウィンド!!」

「グゥァァアアア!!」


 ブォォォオオン!!

 というエンジン音が響いた。


 加速する者同士がぶつかったとき、そのエネルギーが大きければ大きいほど衝突の被害も大きくなる。

 流星が言うにはそれがATKに加算されるみたいだけど……ダイレクトアタックが決まった後、まだ加速しているのは……邪神くずれだけ、だった。


「あとは任せた」

「わかった!」


 バイクは音をたてるだけで走らない。

 代わりに、先程の流星のスピードに負けないくらいの速度で邪神くずれがふっ飛ばされていた!

 そして、その姿をフェンリル……ワンワンに乗ったデス子ちゃんが追いかける!


 バァァァアン!


 レイド戦によって隔離された壁に、邪神くずれが打ち付けられる音が響く。

 ターゲットはついに加速しなくなったらしいけど、それを追いかけるハンターの加速は止まらない。


「コタロウ、GO!」


 デス子ちゃんがワンワンから飛び降りる!

 そして――。


「ゴッドウィンドォォォ!!」

「それあんたが言うの!」


 ようやく抜かせた元トップ、流星が叫ぶ声が聞こえた。

 同時に、ワンワンも邪神くずれへと突撃する!


「グルォォォオオ!!」

「グアァアァァ!!」


 ワンワンは大口を開けるよりも頭突きを選んだらしい。

 そのままのトップスピードで邪神くずれへと突撃すると、器用に空中で方向転換し、壁を蹴って少しだけ距離を取る。

 もちろん、それは続くハンターのための布石であり……。


「これが私の吹かせる死神の風よ、ゴッドウィンド!」


 デス子ちゃんもワンワンよりはスピードが落ちるけど、邪神くずれへと突撃した!

 そしてスピードがなくなったデス子ちゃんは近くにいたワンワンが素早く回収する。


 ……これで、3回。まだ奴は息があるみたい。




「残ったのは私たちですね」

「ええ。このまま最下位争いでもするのかしら?」


 私の言葉に、彼女はフフと笑いをこぼす。

 盗賊さんは必死に走っているように見える。

 けど、その顔からは余裕の笑みが消えることはない。


「貴方の本気、私に見せてくださいな!」


 そう言って、何かを投げられた。

 これ、MP回復ポーション? 

 盗賊さんを見ると、相変わらず余裕の笑みで頷かれた。


「……上等!」


 つまり、私に本気を出させてその上で勝負したいってことね!

 すぐさまMP回復ポーションを飲み干し、そのスキルを使用する!


「行くわ! マジカル・フルバースト!」

「いって……らっっしゃい!!」

「えっ! きゃぁあああ!!」


 私がスキルを発動した途端、横にいたはずの盗賊さんに力強くキックされる!

 推進力にはなったけど、彼女はこちらを見て何故か満足げだ。

 何で!?


 しかし、もう邪神くずれは目の前だ。

 疑問よりも今は先に――。


「これが私の全力全開、ゴッドウィンド!!」


 いまだ壁にめり込んでいる邪神くずれへと、全力の突撃をお見舞いする!!


「グアァアァァ!!」

「手応えは……くっ」


 ダメージは与えた。

 与えたけど、蓄積ダメージがなかっただけあって相当しぶといようだ。

 やっぱり、レイド戦を残った人数では無謀だったのかも……。


 スキルの反動で、私はもう動けない。

 しかし、邪神くずれはまだ倒せていない。

 すでにボロボロのボスは、それでも一番近くにいる私へと攻撃しようと腕を振り上げ――。




「ゴッドウィンドォォォ!!」


 遠くから流星の叫びが聞こえる。

 けど、もう突撃できる人なんて――。

 その時、私達の後ろから黒い影が勢いよく突っ込んできた!


 その影はそのまま、邪神くずれへと一直線に飛んでいき……。



「ガァァァァアアアアア!!!」



 ――レイドボス、トレイターデーモンおよびヘレシーデーモンを討伐完了しました。

 ――各プレイヤーの貢献度によって報酬が配布されます。



 そんなシステムアナウンスと共に、結界は解除された。

 そして、倒されたボスが消え代わりにいたのは。


「…………クルル」

「よくやった、ラプターイーグル。やはりお前を呼んでおいて正解だったようだ」


 ターンの目印でもあった、例の鳥でした。

 それを見て思いついたことがあるけど、なんとも馬鹿らしい考えだと思い頭を振りかぶる。


「これが本当の大トリ……ですか」

「え?」

「何か言ったか?」

「聞こえなかったからもう一回」


「あ、いえ……何でもないです」


 そういって顔を赤くした盗賊さんだったけど。

 ……やっぱり、考えることは一緒よね。


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