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魔法の物理はダイレクトアタックなの?

 

 コースは長老とレイドボスを囲んだ周りになる。

 長老は動かないからいいとしても、最小範囲を走って時間を短縮しようとすると、必然的にレイドボスの側を通過する。

 ……そうなると、敵もこちらを妨害するわけで。


「あら? どうやらあの子に釘付けみたいね! 今のうちに距離を稼ぐわ!」

「簡単にV字ターンがキメられるとは、コイツも大したことない」


「なんで遠くの私に攻撃がくるのよ!!」


 真横にいる彼らは無視して、悪魔はこちらへ波動弾を打ってくる。

 ヘイト稼ぐ行為していないはずだけど?


「おおっとー!! ここでタカマチ選手に波動弾だあぁー!! トレイターデーモンはまず彼女を脅威と捉えたぁ!!」

「何でよ!」

「レイドボスは素の能力値が自身よりも高いプレイヤーから狙う傾向があります。おそらくは、AGIの値がタカマチさんより低いのでしょう。あとは俗説ですが、見た目がより悪者に見えるものから排除して、正義感あふれる勇者と一騎打ちを望んでいるという――」

「よくわからないけどわかったわ」


 つまり、私が狙われているってことが。


 もちろん攻撃をもらうつもりはないので、すぐさまホウキに飛び乗って回避する。

 向かう先は……真面目に戦闘しているパーティの邪魔をしないためにも、流星たちと同じコース。

 彼らの攻撃は効いているみたいで、私の通過した後を波動弾が飛ぶ頻度も少なくなった。


 そして、半周遅れの私と暴走兄妹二人がすれ違う。


「半周ハンデとは随分と舐められたものだ」

「わたしの本気、見せてあげる!」

「本気って……え!」


 すれ違いざま、デス子ちゃんが背中のキャノン砲をこちらへ向けた。

 まさか、フレンドリーファイアでもするつもりなの!


 レイドバトルとなってはいるけど、味方の攻撃は普通に被弾する。

 パーティを組んでいるときは関係ないのだけど、レイド戦はサバイバルみたいなものだし……。

 もちろん4人でパーティは組める。現に今いるレイドプレイヤーは3:3でパーティを組んで前衛、後衛、左翼・右翼とうまく連携しているようだ。


 私たち?

 レースは妨害もアリだからパーティ組んでいないけど。

 なのでデス子ちゃんの攻撃は普通に当たる。

 というか、大ダメージだ。


 ドォォォン!


「きゃぁ!」


 放たれた砲撃は私の真横を通り過ぎ……トレイターデーモンと呼ばれたボスへと直撃する。

 風圧で少し姿勢を崩したけど、攻撃が当たらないで本当によかった。

 キャノン砲をぶっ放した反動で、レースはデス子ちゃんがリードしているみたい。


「どう? わたしの21センチ砲ちゃんは」

「危ないじゃないの!」


 既に二人の姿は見えない。

 しかし、ギルドチャットから音声として聞こえてくる。

 ギルドチャットするくらいならパーティ組んだほうが良いと思うけど、レース相手は皆、敵。

 ルールを遵守して効率をないがしろにするのは……まあ、ギルマスがそういう方針なら良いのかな?


 私はトレイターデーモンの横を通り過ぎながら、向かってくる他のレイド戦メンバーの攻撃も避け方向転換する。

 その時、追い越したばかりのトレイターデーモンから眩しいくらいの光が発せられた!


「逃げろ!」

「マジカル・フルバースト!!」


 考える時間はない。

 本能的に危機を感じた私は、逃げるための全力を出し距離を稼ぐ。


 その直後。

 周り一面を眩い閃光が包み込む。

 それは、光の速さでレイド戦メンバーを飲み込み、逃げようとしていた私も例外なく飲み込まれる。




 光が収まった時、私は地面にダイブしていた。

 私だけじゃない。

 6人いたレイド戦メンバーも5人が倒れ、残っているのは盗賊の人だけだ。


 私は自身の体力を確認する。



 HP: 30/430 MP: 0/710



「おぅ……」


 かろうじて生きている。

 しかし、それだけだ。

 同じように倒れている彼らも、瀕死状態か既にHPが0になったのだろう。


「広範囲の即死攻撃か。やってくれる……だが」

「連発はできないはずよね! チャンスよ!」

「え、無事だったの?」


 盗賊の人だけじゃなかった。

 どうやら長老のいた場所までは広範囲攻撃も届かなかったのだろう。

 ボスの方を見ると、確かに私のいる場所よりも少し下が、黒く焦げたように変色していた。


 動けるのは、盗賊、流星、デス子ちゃん……あとは久我かな?

 あ、でも離れた場所で黒焦げになってるアレが久我かもしれない。


「デス子、ここからはゴッドウィンドで勝負だ」

「ええ! 死の風の力、見せてあげる!」


 コースとして定めた道は外れない。

 違う点は、トレイターデーモンに向かって一直線だということだ。


「タカマチ。どうしてこのゲームがSTRやVITではなく、ATKとDEFなのか考えたことはあるか?」

「疑問に思ったこともないわ」


 だってそういうものとしか思わないし。

 確かに重量制限、所持数制限はあるけど、ゲームによっても違うし。


「それはな……こうするためだ。ゴッドウィンドォォォ!!」

「わたしが先よ! ゴッドウィンド!!」


 そうして二人とも、ボスへ突撃していく。

 無事だった盗賊さんがすぐに離れたのが印象的だったけど、文字通りトップスピードでデス子ちゃんが突撃した!!


「ダイレクトアタック!」


「グォォォォォオオ!!」


 反動でデス子ちゃんはその場に留まったけど、デス子ちゃんの加速エネルギーが全て乗った一撃はトレイターデーモンを突き飛ばした!


「ここから先が俺のターンだ。召喚士の実力を見せてやろう」



 ゴッドウィンド。

 神風とも言われるソレは、文字通り……ダイレクトアタックだった。


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