第二ラウンドは生き残りレースなの!
加速度がゼロになったデス子ちゃんは、そのまま流星のバイクに回収される。
レースの途中だというのに二人乗りをするなんて。
「うふふ。お兄ちゃんの背中あったかーい」
「まだ決闘は終了していない」
「回復するまでだから、ね?」
ま、幸せそうだからいいのかな?
けど、ギルドチャットでまでイチャつくのはやめてほしいかなー。
「サモン! 俺はMPを消費し、魔法陣からストームウルフを4体呼び出す! このモンスター1体につき、周囲のプレイヤーはAGIが20上昇する!」
流星のバイクと併走するように、いきなり狼が4匹現れた。
これが召喚魔法なの?
「さらに! 周囲にストームと名のつくモンスターが2体以上存在するとき、同じ領域にいるラプターイーグルをMP消費ナシで呼び寄せることができる! サモン、ラプターイーグル!!」
バイクの頭上に、ワシのような鳥が滑空しながら出てきた。
デス子ちゃんによって突き飛ばされたトレイターデーモンはすぐ目の前だ。
そして流星も――
「ラプターイーグルは召喚者のAGIを半分得る! 行け、ラプターイーグル!」
ラプターイーグルがトレイターデーモンへと突き刺さる!!
流星はその真横を通り過ぎて、すぐさま反転した。
その間に、ストームウルフはトレイターデーモンを包囲して襲いかかっているようだ。
「条件は整った。ここがお前の墓場だ」
「何か一人でやっているけど、これレイド戦よね? 他のプレイヤーの見せ場はどこ?」
もう流星一人でいいんじゃない? というほど圧倒的だ。
そんな実力があるならレースなんてやらずに普通に倒したほうが良いって言うのは禁句なの?
「周囲にウルフと名のつくモンスターが4体以上存在し、敵を包囲した時……全てのウルフを送還することで奴を呼ぶことができる……」
「コタロウがくるのね!」
コタロウって誰よ。
「俺はストームウルフを4体送還することにより、別領域から伝説の銀狼を呼び寄せる。狼王よその姿をここに現せ! サモン――フェンリル!」
奴を囲んでいたストームウルフが消えた。
同時に、包囲網の中心に魔法陣が描かれる。
それは白く輝き、困惑しているトレイターデーモンの真下から大口を開けて飛び出てきた!!
「ガルオオオオォォォ!!」
「コタロウ!」
「でかっ……」
圧倒的だった。
トレイターデーモンの下半身を噛みちぎり、それは雄々しき姿を地上へと現す。
そして、ポイっと……先程までレイドボスだった残骸を捨てると、その場で舌を出しながら伏せの姿勢をした。
「ヘッヘッヘッヘ」
「よしよし、いい子ね」
「ワンッ!」
「……犬じゃないの!」
先程の凛々しい姿はどこにやら。
今はデス子ちゃんにワシャワシャされて嬉しそうにしている。
これ、私が見たどんなモンスターよりも巨大なんだけど……襲いかかってこないわよね?
「ボスはどこにいった?」
「………………アレ」
唯一無事だった盗賊さんが、トレイターデーモンをつついている。
しかし、上半身だけのボスは何も反応しない……。
ようやく私も行動制限が解除されたので、HPだけ回復して流星の近くまでいく。
「何かレイドボスなのにあっけないわね」
「まだ決闘は終了していない」
「え? まあ、ゴールしていないのは確かだけど……」
途中で即死攻撃がきたり、ダイレクトアタックしたりして中断されたのは事実だけど……もうボスはいないんだし終わりじゃないの?
そう思ったけど、盗賊さんも不思議そうにしている。
「そうですね。まだ周辺の結界が解除されていません。残ったのは私達だけ。来ますね」
「ああ。油断はするな」
「はい。といっても、あのフェンリルに任せれば簡単なような気もしますが……」
盗賊さんはコタロウと呼ばれた狼を見ている。
デス子ちゃんとじゃれあっているようだけど、確かにあの狼……犬でいっか。
あの犬に任せればどんな敵でも簡単そうだ。
そう身構えている時、強い揺れがきた。
立っていられないほどの揺れに、流星もバイクごと倒れる。
デス子ちゃんはコタロウと一緒に伏せ、盗賊さんもうずくまる。
私は……空を飛んでいてノーダメージだったけど。
そして――。
廃墟と化した教会を壊しながら、トレイターデーモンを一回り大きくしたような敵が現れた。
「あれ何よ」
「ぐっ……どうやら邪神のお出ましだ」
「ええ。お怪我は大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、問題ない」
流星はそういって、バイクを立ててブォン! ブォン! と吹かす。
どうやら第二ラウンドが開始するようだ。
「せっかくだ。アンタも走ってみるか?」
「はい?」
「平原の丘で俺たちを抜かした走りは見事だった。AGIに相当自信があるに違いない。全体攻撃から逃げ切れたことがそれを証明している」
「………………」
そういえば、私達を抜かしていった盗賊が一人いたっけ。
それがこの人なの?
珍しいことに女性プレイヤーだけど、AGI重視のためか、薄着すぎて同性でも直視するのに勇気がいりそうだ。
……デス子ちゃんといい勝負ね。
「俺たちの決闘に参加しないか?」
「……いいでしょう。その代わり、負けませんよ!」
「いい心意気だ」
――そして、私達は走り出す。
流星がバイクで。
盗賊さんが素早い身のこなしで。
私がホウキで。
デス子ちゃんがコタロウに乗って。
ん?
ふと、気になって後ろを見てみた。
「なんで邪神が追いかけてくるのよ!」
そこには、惚れ惚れするようなフォームで走ってくる邪神の姿が!
レイド戦って、いつの間に鬼ごっこへ変わったのかしら?




