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まほカン  作者: jukaito


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第130話 部活! 鈴の報せがつなぐ少女の絆 (Dパート)

『なるほど、地下ね』

 かなみは、あるみへ連絡して事情を説明するとすぐに合流を提案して数分でやってきた。

「かなみちゃん、本当に地面の下から鈴の音が聞こえたの?」

 あるみが確認する。

「はい、間違いありません!」

「そう……どおりで、魔力感知に引っかからなかったわけね」

「母さんは地下にいるんでしょうか?」

「あなたが鈴の音を地面の下から聞き取ったのならね。しかも、戦っている真っ最中だとみたわ」

「戦っている!? 音速ジェンナとですか?」

「ええ、地下で戦う空間を用意できるとしたら、支部長や十二席くらいよ」

「か、母さんは、大丈夫なんでしょうか?」

「鈴の音が聞こえているうちはね」

 かなみはゾッとする。

 鈴の音が聞こえているうち……それは言いかえると、鈴の音が聞こえなくなったら、大丈夫じゃなくなるということだから。

「大丈夫よ。あなたの母さんを、涼美を信じなさい」

「……はい」

「さて、と」

 あるみは変身する。

白銀(しろがね)の女神、魔法少女アルミ降臨!」

 名乗り口上を簡潔にすませる。

 ドライバーを地面に向かって構える。

「あとでコウちゃんに頼んでおかないとね」

 それをきいて、かなみの脳裏に、「しかたないのう」としかめ面をしている煌黄の姿が浮かぶ。

「マジカル☆ドライバー!」

 必殺の魔法のセリフを叫ぶとともに、巨大ドライバーを地面へと突き刺す。


ズシャーン!!


 爆音とともに砂塵が巻き起こる。

「さ、いくわよ、かなみちゃん!」

「いくってどこ?」

 かなみの問いに答えることなく、アルミは飛び降りる。今自分が作った大穴に向かって。

 ヨロズは何も言わずついていく。

「え、えぇ……」

 かなみは呆然としつつも、状況を整理する。

 アルミが大穴を作る。

 穴へ飛び降りる。

 自分もそれについていかなければならない。

 そこまで考えて、かなみは変身する。

「マジカルワーク!」

 コインを放り投げて、コインから降り注いだ光がカーテンになる。

 そのカーテンから黄色の魔法少女が姿を現す。

「愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミ参上!」

 他に誰もいない。砂塵が巻き上がって誰も姿を見えない中、いつもの名乗り口上を上げる。

 そして、トコトコとアルミのあけた穴へ歩み寄る。

「これ、相当深いよね……」

 底が見えない。

 間違いなくかなり深い。

 飛び降りるには、ちょっと勇気がいる。

「ええい!」

 そのちょっとの勇気をだして、飛び降りる。

 そして、やっぱり深かった。

 どんどん落ちているのに、まだ底に辿り着かない。

「どこまで掘ったんですか社長!?」

 カナミは、アルミへ文句を言いながら、落ちていく。

 地獄まで続いてるんじゃないか、もしかして、このまま真っ逆さまに地獄行きなんじゃないか。そう、カナミが思ったところで底が見えた。

「カナミちゃん」

 遅かったじゃない。と言いたげにアルミは呼びかける。

「スズミの鈴の音、どっちから聞こえる?」

「え、それは……」

 かなみは戸惑う。

 周囲を見回せば土の黄土色が視界を文字通り埋め尽くしている。

「周囲の環境に惑わされないで。むしろ地底(ここ)は静かよ」

 アルミに言われるまま、カナミは神経を研ぎ澄ましてみる。

 アルミの言う通り、確かに地底は静かだった。


チリリン


「聞こえた鈴の音! さっきよりはっきり! あっち!!」

 カナミは音のした方向を指差す。

「あっちね! よし!」

 アルミは指差した方向へドライバーを突き刺す。

「マジカル☆ドライバー!」


ズシャーン!!


 けたたましい音をたてて、もう一つの穴が出来上がる。

「まるでトンネル堀りだな」

 ヨロズは言う。

「やってることは、ドリル戦車だけど」

 カナミは呆れ気味に言う。

 アルミは穴に向かって走り出す。今回できた穴は急こう配の坂のようになっている。

 その坂を下りていくと、コンクリートの壁に行き当たる。

「これは?」

「見ての通り、壁よ。強い魔力を感じるわ」

「魔力、確かに……それじゃ、ここに母さんが……?」


チリリリン


 壁の向こう側から鈴の音がより大きく聞こえた。

「鈴! 母さんの鈴がこの向こうに!!」

「よし、それじゃここをぶち破るわよ!!」

 アルミはドライバーを壁へと突き刺して、一気に突き破る。




 一方のスズミは、音速ジェンナのパンチやキックを受け続けていた。

 折を見て、鈴の反撃を繰り出すも、音速ジェンナは高速で動いて、これをかわしてしまう。

 音速ジェンナは音速を超えた速度で動ける。

 スズミの鈴もその鈴から発せられる音も置き去りにして動いている。

 しかも、だんだん速くなっている。


ドォン!!

チリリリリリリリリリリリン!!

ドォン!!


 それでも、スズミはついていこうと必死に食らいついていく。鈴の音を鳴らしながら。

「張り合いがない」

 音速ジェンナは攻撃の手を止めて言う。

「何がぁ?」

 スズミは口答えする。

「せっかくぅ、私がぁこんなにぃ戦ってあげてるのにぃ? 何がぁ不満なのぉ?」

「戦ってあげてる? これが戦いだというのか?」

「少なくともぉ、私はそのつもりよぉ。一方的にぃ、やられてる方だけどぉ」

 スズミは答える。

 そのスズミは音速ジェンナの攻撃を防御し続けている。

 そうして、致命的な一撃は避けているものの、防御している腕や足はボロボロになっている。

 普通の人間だったら、両腕両足が粉砕骨折で再起不能になっていることだろう。

 正直立っているのも辛くなってきたし、ベッドに入って休みたい気分でもあった。

「一方的にやられている? それがおかしいのだ」

 音速ジェンナはスズミに向かって指差して言う。

「貴様がもっと攻勢に回っていれば、ここまで一方的になるはずがない。私に勝つ気概がない。それがあれば私にも相応のダメージがあるはずだ」

「買いかぶりぃすぎじゃぁないのぉ?」

 スズミは微笑みを浮かべて答える。

 音速ジェンナの物言いは正しい、と、スズミは考えている。

 音速ジェンナの攻撃は速く、激しいけど、対応しきれないわけじゃない。

 鈴の反撃はしているけど、それの目的はさらなる追撃をかわしたり、攻撃の出鼻をくじいたりするためといった防御の比重が大きい。

 防御よりも攻撃に比重を置けば、音速ジェンナにもそれなりのダメージを与えることができた。そうなると自分の敗北、ないしは死も見えてくるリスクはあるけど。

 それだけはどうしても避けたいことだった。

 絶望(リスク)のある勝機――勝利を掴むことより、助けが来ることを期待して耐え忍ぶ道をとった。

 音速ジェンナが不満に思っているのはそこだ。

 相手を傷つけ、自分も傷つけられるからこそ戦いだと思っている。そして、この魔法少女スズミとなら最高の戦いができるとも。

 それだけに、ここまで一方的になるのは自分が望んだ戦いではなく、スズミがそういう展開になることを望んでやっている。

 そのことに怒りを感じてならない。

 一体何が彼女をそうさせるのか、何故自分と戦い、勝利を得ようとしないのか。

 その態度が癪に障る。

「私は貴様を買い被っていない。私の攻撃をこれだけ持ちこたえているのだからな」

「持ちこたえるだけでぇ精一杯なのよぉ」

「持ちこたえるだけで精一杯か。何故勝とうとしない? まるで何かを待っているかのように……何かを待っている? そうか、何かを待っているのか、貴様は?」

 音速ジェンナは気づく。

「何を待っているというのだ? 助け? 助けが来ることを期待しているのか?」

「気づいたぁ?」

「なるほど、そういうことか!」

 音速ジェンナは得心を得ると、また新しい疑問を口にする。

「だとすると、誰が助けにくる? ここは地下千メートル、助けなどくるはずがない」

「そうはいってもねぇ、助けにこれるのよねぇ」

 スズミは鈴を振るう。


チリン! チリン! チリン!


 鈴が高らかに鳴り響く。

「その鈴の音は地上までは届かない。鳴らすだけ無駄だ」

「ところがねぇ、――届くのよ」


ズシャァァァァァァン!!


 轟音が轟き、闘技場が揺れ動く。

「なッ!?」

 音速ジェンナは驚愕する。

 闘技場が大穴が空き、その大穴から二人入ってきた。

「母さん!?」

 カナミはスズミの姿を見つけると、心配そうに駆け寄ってくる。

「カナミ、来てくれるとぉ信じてたわぁ」

「母さん、大丈夫なの!? 音速ジェンナと戦ってたんでしょ!?」

「まあぁ、なんとかねぇ」

「強がり言って」

 アルミが歩み寄ってくる。

「本当はフラフラなんでしょ?」

「立っているのがやっとなのよぉ」

 スズミは身体は少し震わせている。

「母さん、大丈夫!?」

「ええぇ、なんとかぁ大丈夫よぉ」

 スズミはいつもの調子で答える。

 カナミには、それがかえって無理しているように見えて不安になる。

「母さん……母さんをここまで追い詰めるなんて……!」

 カナミは音速ジェンナの方を見る。

 彼女はただじっとこちらを見ている。

 長身でスラっとした体系の流麗な女性。しかし、その身体から放たれる圧倒的存在感は人間のものではなかった。

(怖い……なんて魔力なの……!?)

 まともに見ることさえ難しい。

 あまりに強い炎で周囲の空気が揺らめているように、音速ジェンナの魔力は周囲の空気、光を

 歪ませている。

 それほどまでに強力で、強大な存在だった。

(ここまで強いのは、ヘヴル……いえ、それ以上……母さん、なんて怪人を相手にしてたの!?)

 改めて感じるヘヴルの恐ろしさ。そして、それを相手取って戦ったスズミの凄さ。

「水を差された、というわけか。いや、この場合は泥か。いや、コケにされたともいうか、フフフ……」

 音速ジェンナは不気味に笑う。

 次に彼女のどう動くか、最大限の注意を払う。

 そうしなければ、次の瞬間に自分の首が飛んでいても不思議じゃないと感じたからだ。

「では、私のこの気持ちをどうやって晴らせばいいのやら」

 その瞬間、眼光がカナミに突き刺さるように向けられた。

「――!?」

 カナミは心臓を掴まれたかのような寒気が走る。

 戦っても勝てる気がしない。

(でも、母さんはこいつのせいで、酷い目にあったんだから、許せない!!)

 そう思って奮い立たせる。

「フフ、いい目だ! 母ほどではないが、娘も楽しませてくれそうだ!」

 音速ジェンナがそう言うと、リズミカルにジャンプをはじめ、戦闘態勢に入る。

――来る。

 カナミがそう感じて身構える。

「あー、そこまで」

 アルミが割って入る。

「もうスズミと十分に戦ったから満足でしょ? これ以上は退きなさい」

 アルミは音速ジェンナの鋭い眼光をものともせず言い返す。

「いいや、まったく満足できていない。スズミは貴様を呼ぶために鈴を鳴らしていただけだったからな」

「なら、その鈴に招待されてやってきた私の意味――あなたならわかるでしょ?」

 アルミは眼光を睨み返す。

 アルミがこの場にいることは、この上なく頼もしい。

「わかる、が、大人しく帰らせるほど今の私は落ち着いていない!」

「それじゃ、私と(おど)ってみる?」

「悪くないかもしれない。が、今日(ダンス)相手(パートナー)は、魔法少女スズミと決めている」

「スズミと戦いたいなら私が相手になるって言ってるのよ」

「そうか……なら、仕方がない!」

 音速ジェンナは戦意をみなぎらせる。


ブゥゥゥゥゥン!!


 それだけで突風が巻き起こる。

「これが最高役員十二席、これが音速ジェンナか」

 同行してやってきたヨロズは瞠目する。

 ヨロズにとっては上司にあたるのだけど、この場合、音速ジェンナの味方でもなければカナミ達の味方でもない、中立の立場だった。

 音速ジェンナの方もそれがわかっていて、あえて気にも留めてない。

 そして、標的は魔法少女アルミであり、魔法少女カナミであった。

 とはいえ、標的にされてこの突風とともに戦意をたたきつけられればたまったものではない。

 しかし、アルミは、それをそよ風と受け流す。

「そう、仕方がないわね」

 アルミはドライバーを構える。

(最高役員十二席の一人と社長の戦い……! 社長は前に、同じ十二席のヘヴルに勝ってるし、壊ゼルとも互角に戦っている……! 社長ならなんとかできるはずよ……!)

 カナミはそう信じてやまなかった。

「――!」

 来る。

 音速ジェンナが仕掛けてくる。

 そう感じた次の瞬間、音速ジェンナはピタリと止まった。

「いや、今日はここまでのようだ」

 妙に落ち着いた調子だった。

 迸る戦意が、空気の抜けた風船のように抜けてしまっていた。

「急にぃ、どうしたのぉ?」

 スズミが問う。

判真(ばんしん)からの勅命だ」

「なるほどねぇ」

「今回はやりすぎたものね。そろそろなんじゃないかと思ってたわ」

「魔法少女アルミ……貴様との衝突は避けろとの勅命だ。その勅命には逆らえない」

 音速ジェンナはエレベーターの方へ向かう。

「魔法少女スズミ、次会うときはもっと楽しいひとときになることを願う」

「そんなときがぁこないことをぉ願うわぁ」

 スズミは笑みを浮かべて答える。

 音速ジェンナはその回答に対して満足そうに振り向いて、エレベーターを乗って上がっていく。

「行ったぁ、みたいねぇ……」

 音速ジェンナが去ったことを感じて、スズミは安堵したように発言する。

「何とかなってよかったわ」

 アルミは警戒を解く。

「生きた心地がしませんでした」

 カナミも緊張が解けて、力が抜ける。

「まったくねぇ」

 スズミが同意したことで、二人はスズミの方を見る。

「母さん、大丈夫!?」

「うぅん、ちょっとぉ、大丈夫じゃないかもぉ」

 声色にいつもの余裕が感じられない。

「相当無理したんじゃないの?」

「えぇ……もう立っているのもぉ……でも、必ず来てくれるって信じてたわぁ……」

 スズミはそう言うと、倒れかかる。

「母さん!!」

 カナミは慌てて、スズミの身体を支える。

「気が抜けちゃったぁ……」

「母さん、ごめんね。遅くなっちゃって……」

「遅くぅ? うぅん、十分早かったわよぉ。来てくれないかもぉと思ってたくらいだからぁ」

「そんな……! 母さんがそんなボロボロになってるのに、見つけるのに時間がかかって!!」

「カナミはぁ、見つけてくれたぁ……母さん、とぉてもぉ、うれしかったぁ……」

「母さん……」

 かなみはこれ以上言葉が出てこなかった。

「さあ、帰りましょうか」

 アルミは穴の方へ向かう。

「え、そっち!?」

 カナミは、エレベーターがあるのに、と言いたげに言う。

「さすがに敵が使うエレベーターに乗るっていうのはね。生きて帰れなくてもいいかもしれないっていうんなら別だけどね」

 アルミにそう言われて、カナミはブンブンと首を振る。

「じゃ、母さん、帰ろうか」

「ええぇ……」

 スズミの足取りがおぼつかない。かなみが抱きかかえながら歩くことになった。

「これが母娘というものなのか」

 なんてヨロズは言ったけど、怪人に親という概念はないので、理解にまでは至らなかった。

「母さん、重いわ……」

「う、カナミからぁそう言われるとぉ、傷つくわぁ。ダイエットぉ、しようかしらねぇ」

「うぅん、母さんがやせると心配になるから、このままでいい」

「そぉう……ふふ、カナミはぁ、もっと重くなった方がいいと思うわねぇ」

「それだったら、ごはん、ちゃんと作って、ね」

「あ……!」

 スズミは気づいた。

「ごはん、かうお金ぇなかったわぁ」

「あ……」

 カナミの血の気が引く。

 母を探しまわってきた疲労が一気にやってきた感じだ。

「アルミちゃん?」

 スズミはアルミへ声をかける。

「お金ならいくらか貸してあげるわ」

 そのやり取りを聞いたカナミは、「(しゃっきん)に腹は代えられない」と思った。




「母さん、ご飯できたわよ」

「待ちかねたわぁ」

 あれから、かなみは少しだけ寝て、あるみから借りたお金で買い出しをした。

 米は炊く時間がかかるので、ひとまず買ってきたパックの米とみそ汁は作った。

 部屋に運び込んだ涼美は、布団をかぶって眠り込んでいた。

 よほど疲れとダメージがあったのだろう。

「母さん、大丈夫?」

「うぅん、まだ立てないわぁ。食べさせてぇ」

「仕方ないわねぇ」

 かなみは歩み寄って、箸でつかんだ米を涼美へ差し出す。

「あぁん」

 涼美は口を開ける。

「なんだかおかしい……でも、母さんらしい」

 かなみはそう言って、口を入れる。

「おいしい、しあわせ」

 涼美は満面の笑顔で言う。

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