ビキニとビキニアーマー
ビキニとは不思議なものである。
下着だと恥ずかしくて歩けないだろう。
だが、ビキニでなら海とプールは問題ない。
ではビキニアーマーはどうなんだろう。
【ダンジョンでは数年に一人くらいきました】
レンがいうには5000人に一人くらいらしい。
まぁそうだろう。防御力皆無。虫に刺されまくりな格好で冒険するやつなどそう何人もいないだろう。
よほどの事情がない限り。
作業員が騒いでいたので、俺たちは水着のまま駆けつけてしまった。それも異常事態なのに。
堀の対岸はさらに異常だった。数十人のビキニアーマーたちがそこにいる。
泳ぎにきたわけではないだろ。泥水だぞここ。
「バカな絶滅させたはず」
ヴェルが変なこと言ってるな。
「帝国の兵士たちですね」
あれ、アッシュも変な事言ってるな?もしかしてヴェルとアッシュでなんかした?
「帝国にも魔王がいたのはご存知ですか?」
アッシュキメ顔はいいんだけど、ビキニ姿でギャップがひどい。
「第六天魔王ってやつか、あれは美術業界でもすごい人だったみたいだな」ノブと呼ばれた魔王は美術品の価値を高め、それを巡る争いを引き起こしたという。セラも一目置くレベルの収集家かつ実戦派。
「その側近です」
「……あのビキニアーマー軍団が?」
俺の指さした先では、槍と盾を装備したビキニ勢が整列している。風で揺れ
る布面積の少なさに、別の意味で攻撃力が高そうだ。
「はい。あれは《六天魔軍・蒐集部隊》と呼ばれる、特別な選抜兵です」
「美術品……として戦場に?」
「違います。彼女たちは、戦場そのものを“美”として表現するんです」
「芸術戦……!?」
モナが目を見開いている。うん、そこに反応するのはちょっとズレてる。
「何度かの大戦で私たちも戦ったことがあります。その時全滅したと思ってたのですが」
「また集結してたと、でなんでここにくるんだ?恨みか?」
「魔王の視察か、レンかリザが目的かもしれません」
「よく分からんな」
作業用の橋の前で並ぶビキニアーマーは体は曝け出しているのに顔は鉄仮面をかぶっていて表情が読めない。
ただ規律正しく並んでいる。
異様な光景に作業員はどよめいていてたが、次第に収まり両者が対峙する。水着魔王軍とビキニアーマー集団。
なんだこれ?
「セト、どうする?こっちから仕掛ける?」
ヴェルが肩を回しながら、さも当然のように戦闘態勢に入ろうとしてる。
「待て待て! まず話し合いだろ!? 彼女たちはまだ戦う意志は見せてない」
その瞬間、ビキニアーマーの整列が二つに割れる。
その間を仮面をつけていない少女が歩いてくる。
「お初目にかかります。魔王セト。お迎えに上がりました」
──青い瞳と栗毛の長髪の少女は可愛い顔して、変なこと言ってきた。
言葉に違和感はなかった。ただ、格好と表情と内容が全部一致してない。
仮面をつけたビキニアーマーたちの間を、悠然と歩いてきたその少女は、上品な笑みを浮かべ、礼儀正しく頭を下げていた。
だが──
「……迎えって、どこへ?」
「第六天魔王ノブ様の居城です。正式に、“収蔵”させていただきます」
「収蔵って言ったな? 俺を?」
「いいえ。“作品”としてレン様を。あなたの作品は極めて高い芸術的価値があると判断されました」
俺の目の前で、ヴェルが肩を震わせて笑いを堪えてる。
「ちょ、ヴェル、笑いごとじゃ──」
「ごめ、だって……ぷっ、収蔵って……レン、展示されるの?」
「させねぇよ! 断るに決まってんだろ!」
【旅行?】
いやレンそれも違う。
少女は、少しだけ不満そうに眉をひそめた。
「申し訳ありませんが、拒否権はございません」
「それって、つまり──」
「……貴方とレン様にはご同行いただくことが決定してます、そういう意味です」
あ、これあれだ。
拉致の前フリだ。




