水着回続き【レン挿絵】
プールは連日稼働中。
村人用も作業後の楽しみとして賑わってるようだ。あとトレーニングに良いらしい。
作業であれだけ体使って、趣味でも体使うのね。すごいな。
「遊びと労働は別筋肉です」
あーうちにもいたわ。フィーナが嬉々として泳いでる。潜水が多いのは筋肉が重くて浮かないのかな。
【うまく泳げません】
一方で、レンはレンで沈まずに苦労していた。
というか浮かびすぎてバランスがとれない。骨と空洞ボディが仇になってるな。
レンが困ってるのは、新鮮でなんか可愛いな。
「水上歩行、できると思う?」
そんなことを言いながら、ヴェルが真剣な顔で水面に足を出している。
……その顔やめてくれ、笑うから。
「できるよ。重さが伝わる前に強く水を蹴るんだ」
横から真面目な顔でモナが答えた。うん、やっぱり君たち感覚がおかしい。
「モナはやれるのか?」
「獣の姿なら数歩はね。川渡るときにやるよ。兄弟もできる」
やるのかよ……。ていうか獣一族、やっぱり人間の常識じゃ測れねぇ。
「まじか。じゃあ城の堀とか意味なくない?」
「うん、でも武装してたら無理だから。意味はあると思うよ」
「意味あるんだ……あるのか……?」
獣人の大群が来たら攻め込まれそうだな。モーナフェルムだけの特性なのかな。
「それで、モナは泳がないのか?」
「うん。獣の姿ではうまく泳げないんだよね。足が沈むの。浮かない」
「またルナに教わるか」
「そうだね。あとでお願いしてみるよ」
水上を歩けるのに、泳げないというこの謎の生き物。
やっぱりモナはモナで、いろいろおかしい。
ちなみに今日は、セラとルナは不在。
代わりに、アッシュがプールサイドでリザの面倒を見ている。
水着を着たアッシュが、なんだかんだで優しくしている光景が見える。
女性陣の水着はしっかり用意されていた。
サイズもぴったり、色合いも好みが反映されてる。なんだこの気合いの入り方は。
……で、俺の分は?
「ないよ?」とセラにサラリと流されたので、仕方なくハーフパンツを着用している。
「──って、おい、ちょっ、何するヴェル!?」
水に入ろうとした瞬間、背後からパンツを引かれ、バランスを崩して転がされる。思いきり尻もちをついた俺を、ヴェルがニヤニヤと見下ろしていた。
「ふーん。セトの水着、見ごたえゼロじゃん。せっかくのサービスシーンなのに」
「サービスって誰にだよ!?俺はただ泳ぎたいだけなんだが!」
「じゃあ、ちゃんと見ごたえあるの用意しようか? たとえば……ぴっちりしたやつとか♡」
「断固拒否だ。今の俺にはハーフパンツが命綱なんだ」
「それ、泳いでるうちに脱げるやつだよ?」
「その手の動きはなんだ脱がせるき満々じゃないか!」
ヴェルが楽しそうなのは何よりだが。魔王城の戦闘集団がプールに集まりすぎだが、大丈夫かね。
そんな心配が的中したのか、堀の方が騒がしくなる。
──その時、俺はまだ知らなかった。
この“平和な水遊び”の裏で、ビキニアーマーをまとった勇者が、この砦を目指していたことを。




