同行者は全員嫁
貴族と言ったり王族と言ったりどっちなんだと聞いてみると
ルナから説明された。
始まりの国王の兄弟の家柄。御三家ってのがあるらしい。
今回はジウロノア家。主に軍事に関わる家柄なのだが、今の当主アレク=ジウロノアは軍にはお飾り副司令として存在し。
実務は、前当主と総司令が別にやっており、ちなみに総司令の孫娘をアレクは正室にしたらしい。
正室。つまり他にも嫁がいる。
3桁ハーレムは本家ノアの国王と王子くらいで、アレクのハーレムは30人程度。
それでも多いし、なんで人数が大まかなんだよ。
「下賜されたり、新しく入る方が多いからですね」
「下賜ってなんだ」
「身分の高いものが低いものへ贈り物をするということですね」
「嫁を贈るってなんだ、想像を絶するんだが」
「私も理解はしかねます。ちょっと苦手な方です」
「で、そんな方とセラは知り合いなのか」
「アレク様は、美術品のコレクターでもあるのですよ」
「なるほどな」
「こないだの刀も随分気にいいたみたいで、製作者に興味を持っていたので、今回の話があったともいえます」
「……あれか」
話しながらも、ルナは俺の衣装をいくつか取り出してくる。
だが、格式ばった服が苦手な俺には、どれも落ち着かない。
「襟が硬いんだよな、こういうの」
「見た目は重要です。せめてボタンは留めてくださいね」
「せめて、って……暑苦しいだろ」
そう文句を言いつつ、着替えは進んでいく。
最後にルナがきっちりと襟を正し、笑顔で言った。
「おしゃれの基本は我慢ですから。ボタンは最後まで閉めてください」
顔が近くにきてドキッとする。
ルナもハーレム入りをしたのだから、ここで触れても怒られないのでは……
「服が崩れるから、イチャイチャは後でな」
後ろから、モナの声がする。
「うおっ。モナいたか」
「いたか。じゃないよ私もいくの」
振り向くと、メイド姿のモナがいた。
いつもより露出は減ってるのだが、なんと言うか新鮮で可愛い。
「よく似合ってるが、どうしてその格好なんだ」
「ルナはセラのそばでお付きになるから、私がセトの護衛兼お付きだよ」
「なるほど、って王族の集まりで危険もないだろう」
「そうかもしれないけど、そうじゃないかもしれないだろ。念の為でもあるし」
モナが言いかけると。
「ハーレムの主がいくのです。お嫁さんを見せるのも演出ですよ」
ルナは衣装の片付けをしながら補足する。
「そう言うものかね」
「お茶飲み仲間との談合じゃない世界へ行きますから」
なんか苦手」
「私もですよ」
ルナは苦笑しながら、セラのためにきびきびと動いている。
ハーレム入りしても、それは変わらない――それが、いい。
モナがすっと横に立ち、俺の腕を軽く取る。
「どんな相手でも、旦那様はお守りいたしますわよ」
芝居じみた口ぶりに、思わず笑みがこぼれた。
――これで十分だ。服が窮屈でも、“俺の立ち位置”は、悪くない。