青白いゾンビ娘。
リザは回復した。ゾンビではある。だが、腐敗する肉体は再生を繰り返している。
その肉体への負担が、どれほどのものかはわからない。
目はまだ虚ろだが、呼びかけには反応する。
──感情を表現する程度しかできない、そんな回復だ。
それでも、傍から見ればただの色白のお嬢さんにしか見えない。
「俺は、自分のエゴを押し付けたのかな」
「まだ、そんなことで悩んでるの?」
ヴェルが俺のそばにきて背中を押す。
「私達が頼んだことです、気に病まないでください」
「気にはするよ。その上で背負っていこう」
リザは、レンと手遊びをしている。笑っているようにも見えた。
聞きたいことは山ほどあるだろう。
だが──今は、そっとしておこう。
フィーナも同意見のようで、質問は後回しにしているらしい。
そもそも、答えを期待していないのだろう。
ゾンビを大量発生させている“何者か”への、切り札として。
リザは、その役目を──静かに待っている。
俺とヴェルとアッシュは地下墓地を離れ地上に出てきた。
「そういえば、他に回復できそうなゾンビはいないのか?」
「スケルトンがレンのようにならないのと同じで、レンやリザが特殊のようですね」
「あるいは、特殊に作られたのかです」
「作られた?」
「リザの場合は明白で、ゾンビに噛まれたわけではなく、死亡してからの発症でもない」
「というと?」
「生きながらゾンビにされたのです」
アッシュは静かに語る
「過去に奴隷への仕打ちで、生きながら殺す。仮死状態を意図的維持し精神を壊す方法がありました。それと似た方法でゾンビ化させれていました」
ヴェルは唇をかみながら話を聞いている。
「考えることなく、肉体の限界を超えても動けるそれは、奴隷としては良かったのでしょう」
「手に追えない奴隷を見せしめのように殺し、お前達もゾンビ化するぞって脅しだよ」
「ただ、その場合……厳密には、ゾンビではないのです」
アッシュは淡々と続けた。
「仮死状態で蘇生して、精神を壊された場合でも──それでも、“生きている”のです」
「でも今回は、違う」
「生きたまま殺し、ゾンビ化させてきた。まるで、“死んで蘇らせる”ことそのものが目的のように」
「……なんの意味がある」
「死者の蘇生。神の奇跡。それを大真面目に研究していたのが──ハスにドクロの印を持つ集団、蓮華会です」
「教会に潰されたと聞いたけど」
「はい。──私たちが潰しました」
その一言に、俺は息を呑んだ。




