【モナ挿絵】嫁の脱ぎっぷり問題
モナが起きたようだ、寝室から布の擦れる音と、軽く咳き込むような気配が聞こえる。ほどなくして扉が開き、昨夜と同じ背中の大きく開いたナイトドレス姿でモナが現れた。
「……おはよう」
昨夜と同じ服のはずなのに、朝の光の中で見ると雰囲気がまるで違う。
淡い光がドレス越しに肌を照らし、露出した背中がひどく眩しく感じた。
「……その格好、また着たのか?」
「ん。せっかくだし」
モナはさらりと答えてから、少しだけ目をそらして微笑んだ。
「……昨日、あんまり着てる時間なかったから」
あぁ、それは――こっちも何も言い返せずに、喉が少しだけ鳴った。
「さすがに寒かったから獣姿で寝たよ。」
そう言って、モナは何気ない素振りで腰のあたりを整える。
ドレスの薄布がさらりと揺れた。
「……もうちょっと、見たかったかもな」
「え? ……ふふ、じゃあ今日は長めに着とくね」
冗談めかしたやり取りの中に、互いにちょっとだけ照れが混じっていた。
朝の空気が、ほんのり甘く香っている気がした。
セラが忙しくてすぐ居なくなったので、なんだか久しぶりにのんびりしてる。三人。
やれる仕事も途切れることはないし、ヴェルは別件で動いてくれてる。
嫁の稼ぎを当てにするわけでもないが、ヴェルはやる気だ。頼もしい。
さて、最近はご無沙汰してた道具屋仕事をするかな。
モナはテーブルの上の布を不思議そうに見てる。
「あーそれセラから、モナの新装備というか服をどうするかってことで、持ってきた」
「沢山あるから何かと思ったけど、なんか水着も混じってる」
ほんとだ、あいつ何考えてんだ。
「水着だと、獣の時シュールだな」
「それ以前に水着で街中とかダンジョン歩くのも変だよ」
「ビキニアーマーというのもあるぞ」
【たまにきてる人来た】
「たまーーーにでしょ!一般的じゃない」
「まぁ街中で見かけると二度見はするレベルで珍しいな」
モナが獣人と獣の変身をできるようになったので、鎧だと獣かした時に持ち運びが不便。
あとは獣から獣人になった時の着替えか。
「モナの里ではどうするんだ?」
「ここまで人に近い獣人は珍しいんだって、本来ならもっと毛皮部分が残るみたい」
「それこそビキニアーマーみたいにか」
「そうだね。確かにそうだ」
モナはみょうに納得してる。身近にビキニアーマーみたいなのが居たのだな。
「兄弟とかは?」
「みんな変身はできないよ。けど、下の妹がやる気満々だった」
「その妹はレンに敵対心持ってるって言ってた子か」
「そう、獣姿で負けたから獣人になってリベンジするんだって」
モナは肩をすくめる。
「獣人になった方が、さらに差が開きそうだな」
「そんなこともないよ、私より上手く獣人状態で戦えると思うよ」
先ほどは呆れたような顔をしていたが、自慢の妹なのだろう。
「その子が来たら賑やかになるな」
「そうだね、たぶん。すぐセトに喧嘩売るよ。“お姉ちゃん取ったやつ!”って」
「うわ、面倒くさい」
とは言うものの、モナの家族が来るなら、もちろん歓迎しよう。
「さて、服の試作も考えるか。レンと同じスタイルから見直すかな」
「ブラウスにコルセット?」
「コルセットは邪魔になるかな。ブラウスは最悪破れてもいい」
「もったいないよ」
「緊急事態はそこは考えなくていいってくらいに覚えといて。
ためらって危険な目にあってほしくないから」
モナはしばらく黙っていたが、やがて小さくうなずいた。
「うん……わかった。破けたら、また作ってね」
レンもそっと横から笑ってうなずいている。
「それに……そうやって、私のことちゃんと考えて作ってくれてるの、ちょっと嬉しい」
「俺としては、嫁の全裸帰宅を防ぎたいだけだが」
「それ、もうちょっと言い方ないの?」
「あるだろうけど、想像すると面白いな。いや、獣のまま帰ってくればいいか」
モナが笑う。レンも、ふっと微笑む。
今日の朝は、静かで、少し照れくさくて――そして、とても幸せだ。
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それではまた、次回でお会いしましょう!