仕事の依頼 赤い目
どうしてこうなった?
「調査に人手が欲しいので協力をお願いしたいのです」
目の前に金髪ポニーテールがいる。赤い目。アッシュと呼ばれるバンパイアハーフ。
「主には8階層より下で起こっていることの調査になります」
淡々と説明されているが、俺の意識はとっくに飛んでる。
この人、話してる間ずっと目が合うし、まつ毛長いし、声が静かに低いし、ちょっと怖い。
「危険な戦闘は私とヴェルが行います。身の危険を感じた場合は引き返すか、私たちを呼んでください」
アッシュの大きな瞳に俺が映る。集中できん。綺麗で怖い。
――話は遡る。
フィーナからこの二人の話を聞いて翌日。店のドアがノックされた。
ノックする時点で客だ。ちなみにセラは違う。あれは侵入者。
不法ではないという理屈は「大家だから」だそうだが、
大家でも不法侵入は不法侵入です。
そして今、俺に仕事の依頼をしている。
うちに来るような話じゃない。間違ってる。いろいろおかしい。
しかも、レンとモナ、そして俺も同行前提。俺、戦力外なんですが……?
アッシュが淡々と俺に説明している横で、妹のヴェルは、レンとモナに興味津々で迫っている。
「ねぇねぇ、どっちが告白したの?」
「もうキスはした? したよね?どっちから?」
「あと、やっぱりこの人――変態だった?」
俺は顔を覆った。突っ込むな、そこは。突っ込んでも掘るな。しかも目の前で本人に聞くな。
「ヴェル失礼ですよ」
お、アッシュはまともそうだな。
「二人も手を出してるんです。変態どころではない。ど変態です」
失礼は君もだよ。アッシュ。
「俺が、行っても役に立たないと思うのだけど」
強引に話を戻すことにする。
「では、人外を狩る私たちとお二人だけで行ってもよろしいということですね」
「あんたらがその気だったら、今無事なのがおかしいからな」
「信頼していただいてるようで嬉しいです。ですが、あなたも必要なのですよ」
軽く微笑みながら、ヴェルを見る。
「妹があなたに興味がありましてね。いえ、私もですね」
言葉の意味がわからない。
言葉の意味が、脳に届かない。
フィーナの話じゃ、人外と関わると処刑対象になるとか……いや違う。“まだ人間か”を見極める、とか。“無自覚な契約”の危険がある、とか。
俺の喉が乾く。
「俺も監視対象なのか?」
「そんな大袈裟ではありませんよ。ただの興味です」
アッシュは微笑む。
「そうよ。スケルトンを嫁にして、肉付けしてる変態なんていなかったもの」
ヴェルも話に加わってくる。
静かに淡々と話す姉とは違い。こっちは元気娘そのもの。
年齢は、聞かない方が良さそうだな。
「教会の人間から、怖い話でも聞いたんでしょうけど、そんなサクサク処刑しないわよ」
「サクサクじゃなきゃ、処刑はするんだ……」
「……それは、するけど」
少しだけ恥ずかしそうなヴェル。処刑の話で照れないでほしい。怖いわ。
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バトルしそうでバトらない。おっぱじまりそうでおっぱりまらない小説ですが、どうぞよろしくお願いします。