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【挿絵】赤い瞳の囁き

さて、セラは数名呼ぶとは言っていたが、貴族様が1人でくるはずがない。

結果50人近い人間が集まっている。どの人が偉いのかわからん。

ちらほらと、付き添いらしきメイドの姿も見える。

お偉い貴族のメイドだけあって、皆きちっとしている。


ルナもその点では負けていない。背筋が伸びていて、立ち姿も様になっている。

……が、モナはちょっとだけ浮いている。

緊張してるのか、落ち着かないのか、顔が妙に堅い。


レンは――もう誰よりも凛としていた。

もはや主人か、護衛かも分からないほどの風格がある。


俺だけ居場所がない。


一人しゃんとしてないメイドを発見。赤い吊り目の金髪ボブメイド。

なんかリンゴ食べてるな。主人はどこにいるのかわからん。

自由人だなぁ。


「さてそろそろ始めますか」


セラが俺たちのそばにくる。

見た目はいつも以上に決めてるが、セラの顔を見て安心する。


セラと話してる分には部外者と思われないからだ。


「初めはモナとルナで実演ね。ルナの持つショートソードをモナの刀で切り落とす流れだ」


軽くいうが、難しそうだ。だが二人ともそれでうなづく。頼もしい。


「レンの方はねぇ。一人意地が悪い貴族が用意した鎧を切って欲しいんだ」


「意地が悪いとは?」

「実用的じゃない分厚い鎧を持ってきたんだよ」

「どれぐらいの厚みなんだ?」

「通常の3倍」

「なるほどな。兜割の方でやるか?」


レンに尋ねると首を振ふり

【問題ない】と筆談してくる。


頼もしい。


まあ、あの素振りみたいな一撃で鎧が十字に割れるなら、そりゃ問題ないよな。



さて 貴族たちが見守るなか実演が始まる。


ルナとモナが撃ち合う。打ち合わせしてるとはいえ、その剣戟は凄まじい。

数度撃ち合い。貴族に見えるようにルナが場所を誘導する。

そしてモナの一閃がルナの剣を切り裂く。


貴族たちのため息が漏れる。


その中で、一番前列の赤い吊り目のメイドがぱちぱちと拍手をしていた。

その後ろで同じメイド服を着た金髪ポニーテールのメイドが注意している。

吊り目ではないが、こちらの目も赤い。姉妹かな。


そして、レンの出番だ。


使用人らしき男二人がかりで、黒光りする鎧を運び出してくる。

厚みも重量も、ただならぬ気配を放っている。


もはや嫌がらせ、ご丁寧に兜までついていた。

奥でニヤニヤ笑う。貴族様が、用意したのだろう。


今のうち笑っておけ、その笑みはレンが消すぞ。


れにしても、笑い方ひとつとってもセラには敵わない。

あいつの笑顔は、なんとも言えない挑発力がある。


セラの笑みが目に入る。

うむ、身内のはずなのに腹がたつ笑みだ。


いや身内だからこそ腹が立つのか。


だがその笑みは、レンを信頼しているからこそだ。


……今日は許そう。




先ほどの、二人の演舞前よりも静まりかえっている。


黒光りする鎧とさっきより細い刀を持つ、細身の少女。

どう考えても鎧が刀を弾くか。刀が折れる。

そう見てるものは考えているだろう。


様子が違うのは吊り目のメイドくらいか、ワクワクしてる様子を隠そうともしない。


レンは自然に近づき、十字に刀を振る。

前のとは違い今度は完全に刃が通ってるのがわかる。

それは滑らかに滑っていく。

気がついた時には、兜は2つに鎧は4つなって地面に落ちた。


赤い目の拍手を皮切りに、貴族たちから歓声が上がった。


……鎧の持ち主はというと、笑うどころか、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

きっと、自慢の鎧だったのだろう。

ご愁傷様です。


セラが貴族たちと話し始めていた。早くも交渉なのだろう。


俺たちは、役目も終えたので先に戻っていいのか迷う。


そのとき――あの吊り目のメイドが、すっと俺の隣に寄ってくる。


「人外二人も嫁にする変態は、君だね」


耳元でそう囁いて、笑顔のまま、何事もなかったように去っていった。


挿絵(By みてみん)

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