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本気の仕事で遊ぶ


翌日、モナとレンを連れて鍛冶屋へ赴く。

レンを見た、フェルが目を丸くしていた。

「お前、どんな弱み握って脅してんだよ」

「人の嫁見ていう言葉かそれ?」

【初めまして】

「あれ筆談?」

「ちょっと声が出なくてな」

「そうか、ごめんね。私はフェルよろしくな」

二人は握手を交わしてる。

「おう来たかこっちの準備はできてるぞ」

ドンケンがやる気を出している。職人はやったことな技術を試すの好きよね。俺もだ。


部屋の中は蒸し暑い。それもそのはず溶けた鉄を入れた器が、今なお火にくべられている。

「くっつけるのは簡単だし、そのあと研げば形にはなるが、目指すのはそれじゃないんだろ」

「ワンドがある程度形を整えてくれるから、親方は繋ぎの準備をお願いします」

「定着のワンドってやつか、遊びで買うには高すぎて手が出ないが、思い切ったな」

「緊急で使う予定があったんですよ。今回みたいに別の使い方もできるならありがたいです」

折れた刃を丁寧に繋ぐ。繋いだ部分が盛り上がってる。

俺はレンを自分の前に立たせ後ろから抱きしめるように手を重ねてワンドを持つ。

「レン、自分で使ってみたい刀をイメージしてみてくれ」

レンはうなづき、ワンドに魔力を込める。


繋がれた部分から光だし、刀全体を包み込む。

 光が収まった時、そこには一本の刀があった。

「やったな」

親方は、言葉少ないが興奮が滲んでいる。


元の刃よりも模様が複雑になっているくらいしか見た目はわからない。

美術品の見た目としては合格点だろう。


早く試し切りをしたいが、その前にもう一本だ。


「モナ交代だ」


レンと同じ作業をモナともやる。

モナとこの作業は2度目だな。イタズラ心で抱きしめを強くしてやる。

少し驚いたようだが、モナは俺に身を預ける。

魔力を注ぎ込まれるのがわかる。


できた刀は繋ぎ合わせた時より短く思える。

その分厚みがましたか。


「厚みを出したのは……振り回すより、重さを活かした一撃用か」

ドンケンが刀を手に取り、じっくりと眺める。


「兜割だな」


「カブトワリ?」


「上から叩きつけて鎧ごと切る武器のことだ」


「なるほど、試し切りしてみたいが、何かありますか?」


「炉の裏に壊れかけの鎧がある、あれを使うといい。どうせ捨てるつもりだったしな」


「ありがとうございます。どうせならセラの前で試し切りしてみよう」

刀を手にしたレンは、懐かしそうに眺めていた。

細身の刀身に、かつての柄がぴたりと収まっている。レンが思い描いたからこそ、形が合ったのだろう。

「後でサヤも作らないとな」

刀を手にしたレンは懐かしそうに眺めていた。


 ドンケンが器具を片付けながら呟く。

「魔法で刃を繋ぐなんて、鍛冶屋としては商売が危ういな」


「元が良くないと、魔法でもこうはいきませんよ」


「まぁそういうことにしておこう」

ドンケンが肩をすくめる。


「多分、後数本作ります」

「おう、楽しみにしてる。うちのようにも用意しておくから頼めるか?」 そう言って、鍛冶屋の親方は片手剣を出してきた。

「もちろんですよ。色々試しましょう」


それから、実験のような作業が続いた。

フェルまで混じっての職人の本気の仕事遊びが始まっていた。


「……ずいぶんと楽しそうね」その声でようやく気がついた。


セラが来たことに気がつかないくらい熱中し、気がつけばお昼を超えていた。



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