メイド出陣
「セラ嬢も来たか、どうだ手合わせするか?」
「いえ達人同士の稽古に入る気はありませんよ」
しれっといつもの外面に戻ってるセラ。普通にしていれば、文句なしに令嬢なのだ。
俺にだけ、あんな顔見せるのか?
「少々急ぎのようでして、セト君ちょっといいかい」
「なんだ、教会がらみで進展があったのか」
「察しがいいね。ちょっと拗れてね。一旦戻る気だったろうが、そのままダンジョンにでも潜っててくれないか?」
「食料以外は大丈夫だが、急だな」
「聖騎士様が出てきちゃってね」
「聖騎士って?」
「教会の最大戦力。わかりやすくいうと教会承認の勇者様だな」
「それがなんのようだ?」
「神獣をたぶらかした男に天誅を下すそうだ」
「なんだそれ、言いがかりがすごいな」
「大体あってます」ルナがいう
「大体あってるな」ディグも続く
「というわけで」
「いやすごい傷つくんだが」
「では、私が食料は揃えてお持ちします。現地で調理を行えば数日分は持ちます」
ルナが当然のように言った。
「え、お前まで来るのか?」
「ええ。神獣をたぶらかした男を、見張らないといけませんから」
「……?」
モナとレンはよくわかってないようだ。当事者なのにな。
俺は額を押さえる。
ルナは冗談なのか本気なのか、微笑みながら頭を下げた。
「そうだね、こっちは教会との話し合いでルナの出番も少ない。いい機会だ、モナの実戦も兼ねて潜っておいで」セラからの許可も出た。
「6階層のゴーレムくらい、ソロで倒せるようになってきなさい」ディグがさらっと言うが、6階層のゴーレム
は冒険者が束になって挑んでやっと倒す代物だと聞いている。
……さらっと言うことじゃない。
ちなみにレンは8階層のボス扱いだった。そして、100年無敗である。そう考えると――レン、とんでもないな。
レンがいれば安全は確保されるか、戦えないのは俺だけだけど。
「では、ルナの新しい戦闘服をプレゼントしよう」
セラが箱を掲げて、どや顔で言う。
「お嬢、これ……胸元が開きすぎです。 そもそも“戦闘服”なのに、なぜメイド服なんですか?」
「戦うメイド……いや、戦闘メイドだろ!」
「違います。メイドは戦いません」
「ルナは戦うじゃないか。つまり戦闘メイドだ」
「ちがいます。私は、お嬢のお付きです」
「お付きで護衛だろ、それはもう戦闘メイドなんだよ」
「理屈がめちゃくちゃです」
ルナの眉がぴくりと動いた。だがセラは――まったく気にしていない。
「でもレンも似たような感じだよ」と、俺は口を挟む。
「ブラウスとミニスカ。コルセットつけるときもあるけど、あれは――」
「シルエットを整えてるだけにすぎない」セラが代弁してきた。
「そう、それ」
「つまりレンは戦闘美少女だが、君は戦闘メイドだ」
「だから、ちがいます!」
そのやりとりを、モナがじっと見ていた。不思議そうな目で、でも少し期待混じりの視線。
俺は思わず付け加える。
「モナは……ケモ耳戦士な」
モナはびくっとして、頬を赤らめた。照れてる。でも、意味わかってるのかな……。
「しょうがないな、だが諦めないよ私は」セラがくすりと笑って肩をすくめる。
「では、こっちは普段使いで使ってくれ」
「……わかりました」
しれっと胸元の開いたメイド服を着せることは、納得させたな。あれは、はめられたんじゃないかなルナ。
セラの笑顔は、なんだかんだで“楽しんでる”顔だった。




