【挿絵あり】誇りとケジメと優しさの三つ編み
ルナに案内されて部屋に入ると、モナが洗面台の前にいた。
髪を洗ったのか、タオルで髪を拭いている。
光を受けたその髪は肩で揃えられた部分と、三つ編みがしっぽみたいになってる部分がある。
「……どう?」
振り返ったモナは、ほんの少しだけ頬を染めていた。
ケモ耳はピンと立ち、けれど目は伏し目がちで、少しだけ緊張しているようにも見える。
「すごく、似合ってるよ。前よりも――こう、凛として見える」
そう言うと、モナの尻尾がふるふると揺れた。
だがすぐに顔を背けて、そっぽを向く。
「ふ、ふん……そ、そう? そ、それなら……いいけど……」
挙動不審すぎて逆に心配になる。いや、可愛いけど。
「ちゃんと、気持ちの整理はついたか?」
「うん……立て髪、切っても、私、私のままだった。それにお前、一房残しただろ」
セラも気づいていた、隠し事。そう俺は一房元の長さで残した。
ケジメも大事なんだろうが、誇りも思い出も大事だ。
言葉にするのはそれじゃない。
「綺麗すぎて、全部切るのは惜しくなった」
「ばか。でも、……ありがと。……ルナがね、綺麗に編んでくれたの。似合ってるって言ってくれたよ」
「ルナも雇い主もお前もレンも、みんな優しいんだな」
俺が苦笑いを浮かべると、モナはようやく肩の力を抜いて笑った。
その笑顔は、どこか年相応の少女のようで、俺はそっと彼女の頭に手を置いた。
「……優しいけど、変態じゃん」
「なんだよそれ」
「でも、ありがとう。なんか、すっきりした」
モナはにへらと笑って――レンとはまた違う、仕草で俺の腕をとってきた。
「ねえ、少しだけ。……胸、借りるね」
俺は、言葉に詰まった。
(……おいレン、見てないよな)
ちらりと扉のほうを見たが、どうやら大丈夫そうだ。
俺は小さく頷き、モナの頭をそっと引き寄せた。
彼女はしばらく、俺の胸元に額を押し当てたまま黙っていた。
──セラは、壁の陰から紙を掲げていた。
そこには大きな文字で、「浮気者」 と書かれていた。
セラ、最初はヒロインのつもりだったのに、どんどん妖怪化してます。
でも作者はすごく気に入ってます。
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セラのヒロイン回早よ出せとかでも結構です。