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汚れた人  作者: 透水ミート
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終幕2

建物から流れ出る海水は島を海水でおおいつくすまでには至らず、山頂から流れ出る湧水のように何本かの川のようになり海に流れ出ていた。

俺はコンテナとともに砂浜へと投げ出され、一命をとりとめた。

光が差したコンテナの中は、まさにドル箱だ。

札束が何重にも積み重なり、100億円以上は上回る量。その横には小さな本棚に書類がまとまって置いてあった。多分武器製造、核爆弾の製造に携わる行程書と、それを売買する名簿。いずれも亡き工藤ヒロシの法外に儲けた資産であることはまちがいなさそうだ。

そして棚の一番下に二つの骨壺がならんでいた。

「お母さん。」

大きな声を出し骨壺に駆け寄ったのはモーセレ柿沼だった。

モーセレ柿沼にとっては、ここに残していった母親の骨壺は忘れもしなかったのだろう。

柿沼は骨壺を両手に抱え、離そうとしなかった。

もう一つの骨壺は、俺は予想がついていた。これは、ともみとの一卵性の双子のみゆきであると。

佐々木が言っていた。青森の山奥で頭部がないみゆきの死体が発見されたと。

この骨壺の中は、みゆきの頭部。

俺は深手をおっていた牧草に近寄った。

「大丈夫ですか?」

「まだかろうじて生きてるわ。村川君。あなた達、運が良いわね。まさか本当にこの箱がここまで運んでくれるとは。ねぇ。村川君最後のお願い聞いて。みゆきを土に帰して。」

牧草はみゆきの骨壺を見ながら言った。

牧草は最後の力を振り絞りながら続けた。

「あなたに知って欲しいことがあるの。あなたのお父さん殺したのともみなの。お願い。許してあげて。今ともみのお腹の中に子を宿しているわ。あなたの子供よ。その子を汚れた人ではなく、善人に育ててほしい。お願い。く苦しいわ。意識が遠退いてるわ。あなたのお父さんと工藤ヒロシのとこ逝くわ。いろいろごめ・・・・。」

牧草はゆっくり目を閉じ何も話さなくなった。

俺はいきなり知った真実、父親の死の真相、ともみの妊娠。そして牧草の死。俺は動くことができなかった。受け止めるには時間がいる。

全てのことを割りきることは今はできない。

今する事は牧草とみゆきの亡骸を土に帰すことだ。俺は困惑する悩を整理する事に勤めた。

俺達は浜辺でモーセレ柿沼の母親のように、木材を集め牧草の死体を火葬した。

豊島は何も話さず、もくもくと火の加減を調整し、モーセレ柿沼は母親の骨壺を抱きながら、燃え盛る炎を一心不乱に見ていた。

牧草の骨をみゆきの骨壺と一緒に入れ終わった頃はあたり真っ暗になっており、波の音と残り火のはじけた音が際立っていた。

「よし。行こう。」

黙っていた豊島が声を発した。


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