出会い 1
ともみは東京の私立高校に通っていた。平凡な日常はともみにとってなんの変化もあたえず、ただ狩りをする乾きに飢えるだけだった。
その日は友達のいないともみにクラスメイト数名が話しかけてきた。
「牧草さん。いつも外ばっかみてるけど何考えてるの?私達あなたの友達になってあげるから、お金かしてくれないかなぁー。」
数名の女性徒はお互い顔を見合わせながら、ともみをバカにしてるような笑いかたをしていた。
ともみはその中の話しかけている女性徒に向かって笑顔でかえした。
「はい。今あんまり持っていないので、1万円くらいでいいですか?」
「うそーー。本当ありがとう。」
彼女達はバカにした顔をしながら背中を向けて出ていった。
私は彼女達とは無関係に窓の外を再度向きなおし外を眺めた。
窓から見える風景はなんて退屈な眺めなんだろう。
次の日。その女性徒達と廊下ですれ違った。彼女の中のリーダー格の女が、故意にぶつかってきた。私は長年愛用してきたロシア製のナイフで彼女の指を二本落とした。私は人の肉を切る感触がぞくぞくと鳥肌並に体中に伝わり、その落ちた二本の指を握りしめ、彼女達とすれ違うように去った。一瞬の出来事で彼女達はともみがやったことがわからないようだった。ただただ泣き叫ぶだけで。
一週間後、指を切り落とされた女性徒が学校に顔をだした。
私は彼女に近寄り笑顔で話した。
「しばらく学校こなかったから心配しちゃった。指大丈夫?指みつかった?無理しないでね。」
彼女は私の話など無視し、なにも話さなかった。
その夜。私は彼女の家のチャイムを押した。彼女は面倒そうな顔をして玄関に顔をだした。
「なに?」
「心配でお見舞いにきたの。あなたの家って犬かってるのね。」
「それがなに?なんのよう?」
「なんかさぁ。さっき犬小屋の近くにいったら。あなたの犬、人の指らしきものくわえていたよ。」
彼女は玄関ごしに鎖でつながれている犬の様子を伺った。
そこには彼女の指をむしゃむしゃと食べる犬の姿があった。
私は母親がかりているマンションから学校に通っていた。毎朝私と同じくらいの時間に私と同じマンションから登校する同じ制服の女性が気になっていた。その娘は女性としては身長が高く、私より頭一個分大きかった。
ある日、朝偶然マンションのエレベーターで彼女と鉢合わせした。私は彼女の顔をまじまじとみたのは始めてだった。彼女は瞳の色が異なり、外人に近い顔立ちをしていた。彼女は私とここで会ったのは千載一遇の、チャンスとばかりに話しかけた。
「同じ学校ですよね?私1年ですが、何年生?」
私はよそよそしく答えた。
「はい。制服が同じなので同じ学校じゃないですかね。私も1年です。」
彼女も私同様、同じマンションから通う同じ学校という事で気になっていた様子だった。
「何組?」
「2組」
「私も。」
彼女と同じクラスだった。
私はいつも窓の外と黒板ばかり眺めていたので彼女の存在に全く気づかなかった。
彼女は同じクラスで、お互い気づかず、偶然会ったエレベーターの中で初対面のよそよそしい挨拶がおかしいようで声をあげて笑った。
私も作り笑顔でかえした。
「私は舞子。柿沼舞子です。よろしくね。」
「こちらこそ。私は牧草ともみです。」
これが彼女との始めての出会いだった。