第一章 満月の夜、僕は使徒になる。【8】
それはいいとして。
僕はテーブルのところから椅子を持ち出して、アリーシアの前に座る。
「それじゃあ、なにから話そうかな」
「ぜんぶ。最初から、今までのことを」
わかった、と答えて、僕はアリーシアにすべてを話した。
僕が道端に倒れていたアリーシアを見つけたこと。
アリーシアが僕の血を吸ったこと、それに加えて、僕の身体が妙に軽いことや、気が付いたらアリーシアの身体が幼くなっていたことも伝えた。
すると、アリーシアは顎に手を当てて、考えるような仕草をした。
「わたしがあなたの血を吸った。するとわたしは幼くなり、あなたは身体に変化が起きた……」
「なにかわかったの?」
「……」
答える代わりに、アリーシアは僕を見た。
どこか申し訳なさそうな、そんな瞳が揺らぎながらも、僕を捉え続ける。
「なんて、ややこしいことに……」
「どうかしたの?」
「……今から話すこと、信じられる?」
「信じるよ」
即答で答える。
「君がここで僕に嘘をついたところでメリットがあるとは思えないし」
それに、と付け加える。
「君みたいな可愛い女の子の言うことを、僕は疑わないよ」
少しきざっぽい言いまわしだけど、僕は昔からそういう性分なのだ。
僕をこういう風に育てたのは父さんだし、そういう面でも、仕方がないだろう。
笑いながら言った僕に対して、アリーシアは少し顔を赤く染めて、しかし、すぐに真面目な表情になる。