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僕の愛しい吸血姫  作者: 大成ケンジ
第一幕―満月の夜、僕は使徒になる―
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第三章 狩人襲来、そして……【1】

響子が家に戻ってきてから、数日が過ぎた。



「いつも家にいるのなら、洗濯くらいしたらどうですか?」



「洗濯機をショートさせてもいいのなら、やってもいいけど?」



「弁償してくれるのならそれでも構いません」



「生憎と、金銭の類は持ち合わせていない」



「あの、もうちょっと友好的にしてくれないかな?」



休日の朝から睨みあう二人を見て苦笑する僕。



アリーシアと響子は仲が悪い。



というか、相性がとてつもなく悪い。



いや、言ってしまえば、響子が勝手に突っかかっているだけなんだけど。


たぶんそこには、アリーシアが僕を使徒にしただとか、そういうことは関係ないんだと思う。



「兄さん、主の教育はちゃんとしてください」



「いや、主を教育するのはダメじゃないかなぁ」



「どちらかといえば、わたしが恭平を教育する立場」



「是非とも教育していただきたいところです!」



そう答えてアリーシアに抱きつこうとすると――



「ひぎゃぁあああああああああああああ!」



アリーシアから放たれた電流が僕を襲う。



電流制裁の存在を忘れていた……。



電流に襲われた身体は麻痺し、背中から倒れ、床に激突する。



「恭平も懲りない」



「君の魅力の前には、僕の理性はないにも等しいんだよ……」



「はいはい、兄さん、どいてくださいね。存在しているだけで邪魔なんですから」



「ひどくないかな……それとさも当然のように踏まないでね」



「スリッパ履いてるじゃないですか」



そういう問題じゃないんだけど。



伊浪家に復帰した響子は、家事全般を担当してくれていた。



ずぼらな生活をしている僕を叱責した上で、家事の権限を掌握し、僕は彼女に逆らえない。というか、もともと逆らえないんだけど。



でもまぁ、響子は料理も得意だし、帰ってきてくれたのは素直に喜ぶことが出来る。



それに、響子が妖魔殺しの所持者じゃないってこともわかったし。



妖魔殺しに遺伝性はない。あくまで後天性ということだそうだ。



床に倒れる僕の腹を踏んで、洗濯物を運ぶ響子は朝から忙しい。朝食を作って、洗濯をして、それから買い物。



僕たちの両親は僕たちが中学生のときに仕事の関係で海外に単身赴任して以来、家に帰ってくるのは年に数回となっていた。



だから、本人は中学のときに慣れたというけど、養われる立場である僕からすれば、少し罪悪感を覚えてしまう。



だからといって、兄を無下にするような態度を許すわけじゃないけど。



「響子、せっかくの休みなんだ。遊びに出掛けないか?」



「デートのお誘いならお断りします」



「断らないでよっ!」



「本当にデートのお誘いだったんですか……」



洗濯物をたたむ響子は呆れ顔で僕に言う。



響子と最後に出かけたのはもう一年以上も前のことだ。それまではよく一緒に出かけていたというのに。兄としては少し寂しい。



「遊びに行こうよー」



「駄々をこねても無駄です」



床でバタバタと暴れてみたけど、ズバッと斬られる。



素っ気ない妹の素振りに、少し興奮……いやいや、ないない。さすがにそこまで変態じゃない。そもそも変態じゃないけど。



しかし、響子の様子を見る限り、なにを言っても遊びに出かけそうにない。



忙しいのはわかるけど、息抜きをするのも大事だと思うんだけどな。



そうすると、暇な僕はどうすればいいだろう。



響子は遊んでくれないし。



そこで、ソファに寝転んで、テレビに流れるアニメを観賞しているアリーシアを見る。



アリーシアはテレビにご執心になっていた。



我が家にやってきてから、ほとんどの時間を、ソファに座って、テレビを見て過ごしている。



本人曰く、どのチャンネルも別のものを放送しているので退屈にならない、とのことだそうで。

今彼女が見ているのは、僕がレンタルショップで借りてきたアニメだ。



二足歩行のアニメチックな動物たちのほのぼのとした日常が描かれている子供向けアニメだったのだが、意外なことに、アリーシアはこれを気に入ってくれた。



彼女が纏う雰囲気上、こういう子供っぽいのはダメかな、とも思いもしたのだが、気に入ってくれたので良かった。



そんなアリーシアに、



「ねえ、アリーシア。僕と遊んでよ」



と言うと、



「そんなに電流が好きなの?」



と、テレビから目を逸らすことなく彼女は言う。



「あのね、僕だっていつも邪な気持ちを抱いて君に接しているわけじゃないんだよ?」



「本当に?」



「本当だよ。たまに抱きしめたくなるけど」



偽りない本心を告げると、アリーシアが僕を振り返る。



「変態」



「……なんで?」



「兄さんはバカ正直にもほどがありますね」



アリーシアの言葉に首を傾げる僕に、響子がやれやれ、と首を左右に振った。



響子は洗濯物をたたむ手を止めて、正座のまま僕を見る。



「兄さんは少し、嘘をつくということを覚えたほうがよろしいかと」



「いや、響子。それはダメだ。父さんが、男というものは、女性に対しては紳士、そして真摯であれって言っていたからね」



「父さんは変態じゃないからいいですけど、兄さんのように変態の男性が真摯でいるのは少し問題があると思います」



そうだろうか。



というか、僕が変態だということを前提として話が進んでいるのはなぜだろう。





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