第九話 新幹戦線
その日、明里は連休を利用して実家に帰っていた。
両親の息災を確認して、家路につく。
あらかじめ買っておいた券を使い、新幹線に乗り込む。
あとはニ時間、暇な時間が続くだけだ。
ぼんやりと車窓を眺めていたら、霧が出てきた。
それと同時に、急激な眠気に襲われる。
明里は、車窓を埋め尽くす霧を見ながら、眠りに落ちてしまった。
何分寝ていただろうか。
明里は、目を覚ました。
同時に、自分が異界に迷い込んだことを、理解する。
それまでの田園風景から、荒いタッチで描かれた絵画のようにごちゃごちゃした色彩で埋め尽くされた車窓の風景。
それまで何人か乗っていた乗客は、一人もいない。
新幹線は変わらず走っているが、どこへ向かっているのかはわからない。
ただ、新幹線を降りればこの異界から出られるという、妙な確信があった。
とはいえ、走行中の新幹線から身を投げるわけにもいかないので、明里は列車を止めるため運転席に向かう。
幸い、運転席に続く通路のドアは施錠されておらず、明里は運転席に入ることができた。
運転席にも、人はいなかった。
ゲームの知識を元に、ブレーキを操作する。
急ブレーキになってしまったからだろう、新幹線の車体は大きく揺れ、そして止まった。
明里は、ドアコックを操作して、新幹線の外に出た。
先ほど車窓から見えていた景色はそこになく、ただ平野が広がっている。
その平野の奥の方から、風に乗るかのように、霧が漂ってきて、明里を包んだ。
そして霧が晴れると、明里は自分の元いた新幹線の連結部分に立っていた。
場所を確認すると、目的の駅のすぐ手前だ。
明里は、新幹線を降り、在来線に乗り換えて、自宅の最寄り駅まで移動した。
今日の出来事は、これでおしまい。
果たして、『次』は、どこに行くのだろうか。
それは、今はまだ、わからない。




