第十九話 三角空間
久しぶりのまとまった休みを利用して、車で遠出した明里。
山道を数時間進み、駐車場に車を止め、展望台から外界を見下ろす。
「気持ちが良いな」
そんな状況でも、発生するのが霧である。
明里は霧に包まれ、異界へと転移する。
「っ」
誰に向ければいいのかわからない怒りが、明里の中で生まれては消えていく。
さて、今回の異界だが。
明里の眼前には、斜めに伸びる壁。上に行くにつれて細くなり、空より手前で終わっている。
四面がこうなっているとすれば、これはピラミッドだろうか。
おあつらえ向きに、目の前には入口らしきものと、そこに繋がる階段がある。
いざ発掘。
本物のピラミッドを見たことがない明里は、自身の冒険心により、少しわくわくしていた。
入口の中は、長い通路が続いている。
明里は、携帯電話の明かりを頼りに、その通路を進んでいく。
数十メートル進んだところで、急に開けた場所に出た。
階段のような下りの段差が中央に向かって敷かれていて、その中央に当たる場所には、何やら棺のようなものが鎮座している。
明里は、迷うことなくその棺に近づいた。
近づいてわかったのは、装飾も何もないただの箱だということ。ピラミッドに安置されている棺のイメージからは遠い。
明里は、意を決して、棺の蓋をずらして開けた。
瞬間。棺の中から霧が大量に吹き出し、明里の身体を包みこんだ。
気がつけば、明里は展望台へと続く山道の入口にいた。
慣れた手つきで、タクシーを一台呼び、展望台の駐車場に置き去りにされた愛車を取りに行く。
タクシーの運転手には奇異な目で見られたが、なんてことはない。こんなことは日常茶飯時だからである。
その後、明里は無事に愛車に乗り込み、家に帰った。
今日の出来事は、これでおしまい。
果たして、『次』は、どこに行くのだろうか。
それは、今はまだ、わからない。




