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19話 潜入

「これより、貴公には城まで来てもらう。これは国王様の勅命である」


 ……来たか。

 いつか来るとは思っていたよ。

 これだけ噂になったら、当然国王の耳にも入るよね。


 でも僕の方にも王城に行く理由ができちゃったのでね。

 ここはおとなしくついて行くことにしようかな。


「ちなみに行かないって言ったらどうなるの?」

「国王様の命は絶対である。故に、重罪に問われるだろう」


 重罪ね。

 それはこの国をまわりにくくなるから嫌だね。

 かと言って、ただそれに従うのは僕の意思に反する。


 でも、実は僕の方も国王に用事があるんだよね。

 だから付いて行くことには問題ない。


 問題があるとすれば、


「国王に会う時って、他の貴族たちもいるのかな?」

「……私にはわからない。が、いるだろうな」


 だよね。

 傲慢な貴族がいるのは問題じゃない。

 問題は、傲慢な貴族がいちいち僕と国王の話に割り込んで来ることだ。


 まぁ、その辺は僕がなんとか交渉してみようかな。


「いいよ、わかった。付いて行くよ」

「……承知した。付いて来い」


 ちょっと驚いているみたいだね。

 だって散々冒険者たちは追い払っていたからね。

 でもね、考えて見てよ。

 冒険者って言ったって、他人だよ?

 僕の見た目は中学生くらいかもしれないけど、他人にホイホイと付いて行くようなことはしないよ。

 そんな幼女じゃあるまいし。


 お菓子なんかでは釣れないからね?






 兵士の後について王城へと向かっていたんだけど、ここで思いもしない出来事が起こってしまった。

 前方を歩いていた兵士が、何者かによって吹き飛ばされたんだよ。

 ボーリングのピンみたいに。


「会いたかったぜ! このどクソチビ!」


 うわぁ、出たよ。

 最近見なかったからすっかり忘れていたけど、この街にはこの暴力シスターがいるんだった。


「僕は会いたくなかったよ」

「あ゛あ゛、なんだと!?」

「僕はこれから大事な用があるし、キミはその案内人を吹き飛ばしたんだよ?」


 ちゃんと生きてるかな?

 流石に暴力シスターといえど、簡単に人を殺すようなことをしないと思うけど。


「あ? そんな奴いたか?」


 気づいてすらもらえていなかったみたい。

 なんて、可哀想な兵士。

 名前も知らないけど。


「んなことより、テメェには話があんだよ」


 話? 話ってなんだっけ。

 ああ、肉体言語(はなし)の事か。

 そりゃそうだよね。

 あの暴力シスターに口を使った話なんてできるわけないんだから。


「今も、だけど、戦うのは嫌だなー」

「あ゛? 話だっつってんだろ? 何言ってんだテメェ?」


 え?

 なに?

 どういう事?

 はい?

 まさかと思うけど、あの暴力シスターが話というものを理解しているとでもいうんだろうか。


「じゃあ、話って何?」

「どクソチビ、冒険者ギルドに入れ!」


 え? 嫌だけど?


「なんでそんな話になるの?」

「この一週間ほど、俺はどうしたらテメェと毎日戦えるか考えた。そして閃いたんだ。テメェが冒険者ギルドに入れば、俺の権限で毎日戦えるってな!」


 うん、安心したよ。

 暴力シスターは何も変わっていなかった。

 そして、僕の答えは……。




「嫌に決まってるでしょ」

「なんだと!?」


 いや、当たり前でしょ?

 なんで毎日暴力シスターと戦わなきゃいけないの?

 何? 拷問?


「僕になんのメリットがあるっていうのさ」

「俺と毎日戦える」


 ああ、ダメだこの人。

 脳みそまで完全に筋肉でできてる。

 もう考えることすらできないんだろう。


「冒険者ギルドに入るってことは、冒険者になるってことでしょ?」

「ああ、そうだな」

「なら、僕は冒険者にはならないよ」

「何故だ!?」


 何故って? ……それは、


「僕が旅人(トラベラー)だからだよ」

「なら力づくで入れるまでだ!!」


 結局それか。

 暴力シスターはやっぱり常に暴力で解決するんだな。

 話なんて関係なかった。


「【止まれ】」

「へっ、んなもん。クソ神! 力をーー」

「【転移】」


 神から力を借りるためには、心の中で念じるか、言葉に出さなくてはいけない。

 その時間さえあれば転移くらい余裕で発動できるんだよね。

 まぁ、高速戦闘中に転移の魔術なんて使う余裕なんてないけど。


「さて王城に、って」


 そうだった。兵士が完全に伸びてるんだった。

 どうしよっかな。

 このまま行ってもいいんだけど、絶対に貴族街に入る前の門で止められるよね。

 今日はまだリンが起きてないから姿を消すこともできないし。


 さて、どうしようか。


 ……うーん。強行突破しか思いつかないのは、暴力シスターの脳筋病がうつったからなんだろうか。


 あ、そうだ!






「おい、待て」

「なに?」

「お前、歩き方がおかしいんだが、どうしたんだ?」

「ちょっと足を捻っちゃってね」

「……そうか。大事にしろよ」


 セーフ。

 バレてない。


 僕が何をしているかって?

 気絶していた兵士の鎧とかを全部剥ぎ取って、兵士に変装してる。


 ちなみに剥ぎ取っている最中に転移すればいいじゃんって気がついたんだけど、せっかく剥ぎ取ったんだし、潜入がしてみたかったからこうして貴族街を歩いている。


 作戦は成功、なのかな ?

 見つかってない時点で成功はしていると思うんだけど、なんせ自分のサイズには合わなさすぎた。

 身長が足りなさすぎるし、他にも色々と長さが足りてない。

 ほとんど無理やり着ているようなものだから、一歩一歩がギクシャクしてるんだよね。

 よくこれでバレないものだよ。


 城までは多少距離があるから、結構しんどい。

 なんでこんなことしてるんだろ。

 ……ちょっと楽しいからいいんだけどね。


「その兵士、この荷物を持ちなさい」

「えっ? 僕?」

「それ以外に誰かいるとでも?」


 こんな時に限って面倒な。


「でも、僕今から用事が」

「そんなもの放っておきなさい。私の荷物を運ぶことよりも重要なことがあるとでも思っているの?」

「えっと、国王に呼び出されてて」

「……行きなさい」

「えっ?」

「行きなさいと言ったの! まったく、これだから兵士というものは」


 国王の名前すごいね。

 もうなんでも国王に、って言っておけばなんとかなるんじゃない?


「ちょっと待ちなさい」

「まだ何かあるの?」

「……その口の利き方をなんとかしなさい。国王様にも失礼よ」


 そう言って、ドレスみたいな服を着た女性は去って行った。

 バレたかと思ったよ。






 普通に歩くのの二倍ほど時間をかけてようやく王城についた。

 長かった。

 楽しかったけど、長かった。


 例の通り、門を通る際に歩き方について言われたものの、それ以外は特に何も言われなかった。

 ここの警備って大丈夫なのかな? 入り放題じゃない?


「さて、国王の待っているところはどこかな?」


 通路を歩いていると、前からメイド服に似た服を着た女性が歩いて来た。

 多分この城のメイドさんかな?


「失礼します。鎧を見るに近衛兵の方ですよね。国王様がお呼びです。至急、謁見の場へ向かってください」


 近衛兵? 確か国王を守る兵士のことだっけ?

 この鎧を着てた人そんなに優秀だったんだ。

 暴力シスターの一撃で気絶していたけど。


 とりあえず、謁見の場とやらを探す。

 多分大きな扉で、広い場所でしょ。

 ……たぶん。


「ここかな?」


 それっぽい場所を発見したので、中に入って見ると、そこには玉座に座る国王っぽい人と、その隣にはこの前見た姫の姿。

 そしてその付近に兵士数名と、貴族っぽい人たちが集まっていた。


「早く国王様の後ろに控えろ! もう間も無く、精霊様を連れた少年が来るのだからな」


 そう怒鳴り散らす貴族よりも、僕は驚きに目を見開く姫の姿を見ていた。


 うん。完全にバレてるね。


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