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オマケ召喚されたモブですが、公爵令息に外堀埋められてました  作者: あらいサラ


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終.この人からは逃げられない

お披露目会から数日後――

目下の大仕事であったデビュタントを終えた私は、中庭にあるガゼボで1人、ティータイムを楽しんでいた。


「もう、しばらくドレスは良いかな……」


あのお披露目会での緊張感を思い出すと、今でも胃がキュッとなる。

大きな失敗もなく無事に終わって良かったなぁと、紅茶を口に含みながら改めて安堵した。


テーブルの上には、あの日公爵夫人からお借りした豪華なフリンジネックレスが置かれている。

返却しようとしたのだが、『リコさんに差し上げますわ』と笑顔で固辞されてしまい、こうして手元に残ってしまったのだ。


(――そういえばあの日、このネックレスが温かくなったような気がしたけど……気のせいだったのかな?)


指先でそっと触れてみるけれど、今は無機質な温度の綺麗なネックレスだ。


宝石が温度を持つなんて、異世界ならあり得るのだろうか?

首をかしげていると、後ろから優しく抱きすくめられた。


「何を見つめているの?リコ」


「あっ、ユリウスさん。お仕事終わったんですか?」


ふわりと漂うウッド系の香りに包まれて、自然と頬が緩む。


ユリウスさんは頷きながら私の隣の椅子に腰掛けると、ごく自然な動作で私を膝の上に引き上げた。


「ちょ、ユリウスさんっ!一人で座ってたのに…っ!?」


「ふふ、懐かしいね。君を初めて膝に乗せたものここだったね」


あの日は召喚された日で、不安だらけで泣き崩れた事を思い出し、少し気恥ずかしい。

まだ知り合ったばかりのユリウスさんに縋って、抱きしめられて、耳にキスされたんだっけ…。


(うん?出会って初日にする行動じゃなくない…???)


「…あの庇護欲をそそる泣き顔は可愛らしかったけど、ずっと悲しい感情(いろ)に包まれていて心配だったんだ」


「ご、ご心配を、おかけしまし…ひゃっ」


私をすっぽりと腕の中に閉じ込めると、甘えるように私の首筋に唇を当ててきたユリウスさん。


「…今は君が綺麗な感情(いろ)に包まれていて、ホッとしているんだよ」


色?もしかしてユリウスさんは、スキルで何か見えているのだろうか。

スキルが無い世界から来た上に、スキルも持ってない私としては、どこまで踏み込んで良い話題なのかがわからない。


(浄化とか鑑定とかの特定のもの以外は、デリケートな扱いだったりするのかな…?)


そう考えてから、私は肩の力を抜いてユリウスさんに体を委ねた。


(…いつかユリウスさんから教えてくれるかもしれないし、それまで待っとこう。その…いつか、ふ、夫婦に、なったら!とか!!)


「ふふ。リコ、顔が赤いね。何考えてるの?」


「なっ、なんでもありませんッ!!!」


後ろから抱っこされている筈なのに何故バレるんだろう。顔の熱を吹き飛ばすように首を振って誤魔化していると、耳元でくすくす笑う声が聞こえた。

それから、机の上のフリンジネックレスに視線が行ったのだろう。話題はそちらへ移っていった。


「……デビュタントはこのネックレスに譲ったけど、結婚式で使用する物は、全て僕が贈るから覚悟しておいてね」


「っケッコン…!…う…ハイ……」


婚約したということは、その先に結婚があるという事。1年後に予定されたその日を想像して、再び顔が熱くなり、頭がパニックになる。


(結婚…するの!?私が?ユリウスさんと!??私っ、まだ19歳で…結婚する時には20だけど……でも、でも…!!)


急に固まった私を不審に思ったのか、ユリウスさんが不安そうに横から覗き込んでくる。


「リコ…?どうしたの?」


「えっ!?い、いえ……その、なんでも…」


言えるわけがない。視線も合わせられず、少しうつむいたままそう答えると、ユリウスさんは少し考えた後、私の体を持ち上げ、今度は向かい合って膝上に座らせた。


急にどうしたのかと思ったけれど、ユリウスさんの表情が思ったより真剣で、声は出せなかった。


「なんでも無い、なんて誤魔化さないで。君の不安をちゃんと聞かせて。

 ……結婚に気がかりな事があるの?」


「その……はい…」


「…結婚が、嫌?」


少し悲しそうな声に、弾かれたように顔をあげる。そんな気持ちにさせたかったわけじゃない。

思わず声を張り上げた。


「そんな事ないです!大好きなユリウスさんと結婚できるなんて嬉しいです…!!

 ただっ……、ただ…」


私の言葉の続きをユリウスさんが静かに、少し不安そうな表情で待っている。これは…言わなくては。ぎゅっと胸の前で手を握る。


「その……私、む、…胸もお尻も…小さくて……子供みたいな体型、なんです…………」


「―――――え????」


途切れ途切れな私の告白を理解するのに時間がかかったのか、少し間をあけてユリウスさんから呆けたような声が漏れた。


「っだから!…その、女性的な魅力が乏しくて…!!ッユリウスさんがガッカリしちゃうかもしれませんっ!!!」


恥ずかしい!!!私は何を伝えているのでしょうか!???

もはや涙目で叫ぶと、ポカンと口を開けたままだったユリウスさんは、みるみる顔を赤く染めて…


「わっ!」


大きな腕に包みこまれ、ぎゅっと抱きしめられた。それから耳元で嬉しそうに小さく笑う声。


「そんな事を気にして…リコ、可愛い……」


「よ…寄せて上げても谷間は出来ませんから…っ」


「良いよ。ありのままの君が好きだから」


「い、色気もありませんし…!」


「…それはどうだろ?」


試してみる?と囁かれた低く甘い声が、腰にぞくりと響く。脳から出された避難勧告に従う前に、逃げる腰に腕を回され唇が深く合わせられた。


貪るように舌を絡め取られ、吸われ、悲鳴にしては随分と甘えた声が小さく溢れる。


恥ずかしくて、気持ちよくて、解放される頃には涙目になってしまっていた。


「――ほら、こんなに色っぽい。そそる…」


「ひぃ…ッ!――あ、あああ、アグね、…むぅっ」


ひしひしと感じる身の危険を前に、頼れる侍女に助けを求めようと声を出すけれど、それは途中で彼の唇に飲み込まれてしまって。


「二度目は逃さない」


そう言って不敵に笑うユリウスさんの顔が、目に毒なまでに妖艶で、手加減無しにイケメンすぎて、


(あぁ…この人からは逃げられない…)


そのはちみつ色に溶かされるのを、目を閉じて受け入れるのだった。


――オマケで召喚された私だけど。

どうやらこの甘すぎる囲いからは、一生逃げられそうにありません。


◇おしまい◇

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

外堀を完璧に埋められた莉子とユリウスの恋模様、楽しんでいただけていたら幸いです。


少しでも「面白かった!」「キュンとした!」と思っていただけましたら、ぜひ【評価(★★★★★)】や【ブックマーク登録】で応援していただけると大変励みになります。

また、感想を頂けますと作者がニヨニヨと小躍りします!

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― 新着の感想 ―
終わり…だと!? これから良いところなのに…聖女としての活躍も見てみたかった。 ともあれ完結乙です。 面白かったです。末尾コメントも。
独特なノリで面白かったです
同時に召喚された二人が二人であることの意味がすごくあったように思います。 リコでなければトウコさんもやる気が少なかったような・・・ 召喚自体はとんでもない案件だけど国がちゃんとしていてよかった。 後書…
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