「ヒューマンストーリー」 二十二話:守るもの (中編)
-----JR磐田駅・駅構内-----
駅員「押さないでください!順番を守ってください!」
運転手「これじゃ発車できない!一旦人の流れを止めてくれ!」
警察官A「人を並べて一旦食い止めるんだ!」
警察官B「人の流れが多すぎて我々だけでは無理です!」
眼鏡の警察官「すみません!増援で来ました!」
板垣「陸上自衛隊の板垣です!手伝います!」
警察官A「ありがとうございます!列車が発車できないので一旦流れを止めてください!」
板垣「了解です!あとからもう一人きます!」
警察官A「助かります!」
そう言って俺は手を広げて人の壁を作りホームへと降りる階段を閉鎖した。
警察官A「押さないでください!電車は後からも来ます!皆さん全員を運べるようにするので落ち着いてください!」
市民A「ふざけんな!後ろまで来てるんだよ!」
皆恐怖のせいか錯乱し暴徒と化していた。俺はなんとかこの自体を収束させようと声を張り上げたがその甲斐も虚しく群衆の怒号にかき消された。しかしプライドか規則か、皆それぞれ動機は違えどその場にいる警察官は市民を守るために与えられた銃器を、群衆の沈静化に用いようとはしなかった。そして俺も国民を守るためとの大義名分によって与えられた89式小銃をただただ握りしめ、駅へと集う群衆をただただ見守っていた。しかしその時だった。警戒線に人員を割いて駅前の警備が手薄になっていたのであろう。一部の暴徒と化した群衆は線路沿いに建てられたフェンスを乗り越え線路を跨いでホームへと乗り込もうとしていた。その時俺の中の何かをつなぎとめていた手綱が切れかけるのを感じた。俺の緩みかけた自制心が引き金へと指をかけようとした。しかし、力強い何かが俺をつなぎとめた。よく見ると硬く腕を掴まれていた。その迷彩服に覆われた腕の主を辿ると桐嶋二曹だった。
桐嶋「よく頑張ったな。」
そう言ってくれた桐嶋二曹はとても心強く思えた。桐嶋二曹は後ろに3人の第5普通科中隊員を引き連れていた。引き連れた隊員はそれぞれ三等陸曹や兵卒など、桐嶋さんよりも若手だった。
桐嶋「我々も増援です。お手伝いします!」
警察官A「助かります!」
桐嶋「よーし!お前ら着剣しろ!」
俺は突然の桐嶋さんの号令を聞き急いで自分の89式小銃に銃剣を取り付け、周りの若手たちも同じように取り付けた。
桐嶋さんは取り付けた銃剣を線路を跨いでホームへとのし上がろうとする群衆に向けこう言い放った。
桐嶋「我々の指示に従えない者はそれぞれ公務執行妨害罪とみなし逮捕します!円滑な避難に協力していただくため各自それぞれ元居た列にお並びください!これは警告です!」
口調は淡々としていたがその気迫が伝わったのか、暴徒と化した群衆はそれぞれ落ち着きを取り戻し元居た列へと戻っていった。
板垣「ありがとうございます。」
桐嶋「気にするな。威嚇であったとしてもここで発砲するのはまずい。俺らが戦うべき相手は彼らじゃない。」
板垣「ごもっともです。」
桐嶋「あの状況であったら仕方がない。警察の方々は場数が違うんだろうな。」
桐嶋さんは笑みを浮かべながらそうつぶやいた。確かに彼らはこれまで何度も過激派といわれる団体と武力を使った闘争に立ち会ってしている。場数が違うという桐嶋二曹の分析は間違っていないのだろう。
桐嶋「だが、時間がないのは確かだ・・・正直何人非難させられるか分からない。」
板垣「・・・・・・」
車掌「電車、ドア閉まります!ホームの内側に下がってください!電車発車出来ません!」
拡声器「電車出発します!ホームの内側に下がってください!」
そういって統率が取れたホーム内の群集は指示に従い電車から離れた。ひとまず順調に出発したかのように見えたが、警察官の身に着けていた無線の受令機が音を発した。
受令機「磐田駅前の警戒線から各局へ、現在暴徒集団と交戦中ですが、バリケードがもちません。避難活動の早期完了・・・おい、押さえ込め!!パンッ!パンッ!」
受令機からは乾いた破裂音が響いた。
桐嶋「聞いたか?」
板垣「はい。」
桐嶋「徒歩で逃がすぞ。」
板垣「本気ですか?」
桐嶋「方法がそれしかない。現在地より以西はまだ安全だと信じて進むしかない。」
板垣「しかし、中隊長は・・・」
桐嶋「こんなときに指揮系統を気にしてる場合じゃない。一刻も早く逃がさないと全滅する!」
板垣「じゃあ・・・」
桐嶋「やるしかない。小隊長に俺が報告する!お前は第5中隊の隊員を集められるだけ集めろ!周辺の警察官に協力を要請しろ。」
板垣「はい。」




