「ヒューマンストーリー」 二十二話:守るもの (前編)
中隊に合流した後、俺が所属する第5普通科中隊は駅周辺の警備に当たっていた。
板垣「俺たちも応援に行かなくて大丈夫なんでしょうか?」
桐嶋「防衛線の話か?あれなら4中隊と重迫中隊の担当だろ?それにさっき県警の銃器対策部隊が応援派遣されているのが見えた。出せる戦力は相当割いているはずだ・・・」
板垣「しかし、警察の機動隊も動員されてるっていうのに俺らが前線に立たなくて良いんですか?」
桐嶋「上もバカじゃない、戦力バランスを考えてのことだろ・・・民間人の周辺の警衛全てを警察に委ねちまったら、それこそ警備が手薄になっちまう。警察・消防はただでさえ被害が甚大に出ちまっている上に今この状況だ。これだけの装備を持っててなおかつ組織的な行動が可能なところって言ったら俺たち”自衛隊”しか居ない。だいたいこの市だけでもかなりの数の民間人が取り残されているってのに配備されているのはここを管轄する警察と消防それに俺たちの連隊だけだ。そうすると、察するに連隊長は俺たちをここの最後の砦にする気なんだろ。」
板垣「・・・・・・」
桐嶋「重迫中隊を組み込むとはなぁ・・・」
板垣「本当に市街地で120迫を使うんでしょうか?」
桐嶋「コラテラル・ダメージを考えた上で今回の出動が治安出動だとするととても使うとは思えんが、この状況だ・・・さっき高機が牽引しているのが見えたから、発砲を前提に考えているというのは否定できん・・・」
桐嶋二曹が話しているまさにその時だった。警戒線の方から力強い発砲音が2・3発響いた。その直後に駅まで列を成していた人たちが慌てふためき、中には恐怖でかがみこんでしまう者やパニックになり怒鳴り散らす者等さまざまだ。
桐嶋「まずいな・・・」
板垣「今のって120迫の音ですよね?」
桐嶋「あぁ、パニックになる。」
桐嶋二曹と話していると小隊陸曹が切迫した表情を浮かべながらこちらに向かってきた。そこでこちらに向かい合うと桐嶋二曹となにやら話し始めた。
桐嶋「何が起こったんですか?」
小隊陸曹「いいか?今から俺が言うことをよく聴け!4中隊と重迫中隊が攻撃を開始した。現在警戒線で押さえ込んでる状況だ。お前たちの任務は民間人の保護だ!引き続きここに留まって周りを固めろ!現場が混乱しているせいか無線が錯綜していて正確な情報が降りてこない・・・とにかく新たに指示があるまで現在の状態を継続だ!いいな!?」
桐嶋「了解!」
板垣「・・・了解!」
小隊陸曹に念を押されたが周りに同じように立っている警務官や警察官にもそれぞれ緊張した面持ちや混乱した表情が目立った。
-----警戒線-----
拡声器「放水開始!第3小隊!せいれーつ!!!」
機動隊の中隊長が機動隊指揮車両の屋根から指揮を飛ばすと同時に配備されていた消防隊が放水を開始する。警戒線には二重のバリケードが築かれており、一次線にはパトカーが縦に等間隔に並べられ、その隙間を埋めるように盾と警棒を装備した機動隊が列をなし、応援で派遣された紺色のアサルトスーツに身を包んだ県警の銃器対策部隊がもつ自動拳銃の銃口が機動隊の背後から向かってくる暴徒に向けられ、更にその後ろに迫撃砲と放水車が並べられていた。二次線に軽装甲機動車が等間隔に並べられ車両の隙間を埋めるように土嚢が重ねられ、小銃を持った完全装備の小銃小隊がそれぞれ緊張した面持ちで整列していた。
-----JR磐田駅前-----
駅前に並んでいた群衆が慌てふためき列を成していた者たちが一斉に我先にと駅構内へと詰め掛けた。駅前周辺はなんとか状況を脱しようとする民間人が本能を露にし警備に当たっていた警察官や自衛官、鉄道職員も混乱を極め収拾がつかなくなった状況をただ眺めているだけしかなかった。そこへ1人の駅員が避難誘導にあたっていた警察官の元へと駆け寄り、なにやら揉めているのが見えた。走ってきた駅員の表情は切迫したものではあったものの、落ち着いた面持ちでまだ初々しさが残る眼鏡の制服を着込んだ警察官と話していた。
桐嶋「どうかされましたか?」
警察官「それがですねこの群集の影響で駅に人がなだれ込んでいて収拾がつかないらしくて、何人か人を回してくれないかと言われたのですが私1人では・・・」
桐嶋「なるほど・・・。板垣、俺は小隊陸曹に報告した後向かうから先に行ってろ!」
板垣「しかし・・・」
桐嶋「どうせ、ここに居たって何も出来やしないんだ・・・先に行ってろ!」
板垣「りょ、了解!」
警察官「ありがとうございます!では、行きましょう!」
駅員「こっちです!」




