表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破滅する悪役王子に転生した武士、生後三秒で腹を切ろうとして妖精に泣いて止められる  作者: めるしー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/43

エピローグ

——あれから。

幾月(いくつき)かが、過ぎた。


王都の空気は。

すっかり——変わって、いた。


メルツ家の、専横は。過去の、ものと、なり。

長く、玉座に、あって、沈黙して、いた、国王は。——自らの足で。再び、(まつりごと)の、舵を、取り始めて、いた。


そして。

"謀反人"の、汚名を、雪がれた——ヴァレンシュタイン家は。

失われた、名誉と、家格を。少しずつ——取り戻して、いた。





かつて。

"呪い児"と。"破滅の、王子"と。忌み、嫌われた——アルフォンス。


その姿を。

今、後ろ指、さす者は——もう、いない。


白銀の、髪も。紅の、瞳も。

人々は、もう——恐れない。


むしろ。

あの、建国祭の夜。ただ一人、刀を、抜かずに。"真実"のために、立った、その姿を。

——誰もが。畏敬を、込めて、語るように、なって、いた。





学園では。


「——リーゼ。此度(こたび)の、菓子も。実に、見事で、あった。かたじけない」


「も、もう。ローラン様ったら。……最近、本当に。物言いが、古めかしい、ですわ」


ローランは。

一度は、忘れて、いた、許嫁(いいなずけ)を——今では、誰よりも、大切に、して、いた。


そして、彼ばかりでは、ない。


「ごきげんよう、クラリス嬢。——其方(そなた)の、髪飾り。今日も、麗しい」

「あ、ありがとう、ございます、アラン様。……(なんだか、立ち居振る舞いまで、いかめしくて……)」


婚約者連合の、青年たちの、間で。

——うっすらとした、"古めかしい物言い"が。

じわじわと——流行(はや)って、いた。


『……武士ウイルス。結局、治らなかったね』


ひかりが、半ば、呆れ。半ば、楽しげに、呟く。


『でも。……みんな、婚約者を、大事にして。きちんと、筋を、通すように、なって。——前より、ずっと、いい男に、なってる』


『アルフォンスの、"(おとこ)の道"。——ちゃんと、根づいたんだ』





中庭では。


聖女候補、アンジェが。

平民の、子供たちに、囲まれ——朗らかに、笑って、いた。


もう。

誰かの、"駒"でも。歪んだ、"正義"の、使徒でも、ない。


——ただ。

自分の、信じた道を。まっすぐに、歩く、一人の、少女。


その、すみれ色の瞳に。

影は、もう——一片(ひとひら)も、なかった。





そして、ある日。


短い、留学を、終え。

イザベラが——故国へ、帰る、日が、来た。


「……世話に、なったわね」


港で。

深紅のドレスを、翻し。彼女は——いつもの、ツンとした、横顔で。けれど、どこか、名残惜しげに、言った。


「あなたたちを、見て、いたら。……改めて、思い知らされたわ」


「——己の、信じた道を。何が、あろうと。最後まで、貫き通すこと。……その、尊さを」


「わたくしが、自分の国を、立て直す。その覚悟は——とうの昔に、決めて、いる。……ただ。あなたたちは。その"貫く"という、姿を。もう一度。わたくしの、胸に——刻んで、くれた」


「達者で、な。イザベラ殿」


アルフォンスが、頷く。


「そなたが、いなければ。アンジェ殿は、救えなんだ。——重ねて、礼を、申す」


「……ふん。礼なんて、いいわ」


イザベラは。

ぷい、と、顔を、背け——けれど。


「……困ったときは。いつでも、呼びなさい。——わたくしたちは。同じ、"淵"を、覗いた。……ええ。言うなれば——戦友(とも)、ですもの」


そう言って。

紅い王女は——凛と、微笑み。海の、向こうへと、帰って、いった。


『……あの人も。原作に、いなかったキャラなのに。——いちばん、いい仕事、してったなあ』





そして——。


離宮の、庭。


「アルフォンス様。——光丸の、下緒(さげお)。新しく、お作りしましたの。お納めに、なって?」


「おお。——かたじけない、ロザリンド殿」


腰紐に、真新しい、下緒を、結ぶ。

その、傍らで。ロザリンドが——穏やかに、微笑んだ。


復讐に、その身を、捧げて、いた、頃の。

凍てついた、面影は——もう、どこにも、ない。


二人は、正式に。

——婚約を、結んだ。


かつて、"原作"が、定めた。

断罪の、相手。そして——逆恨みの、果ての、破滅王(ラスボス)


その、二人が、今。

誰に、強いられた、わけでも、なく。

ただ——己の、心の、ままに。隣に、いる。


「……なあ、ロザリンド殿」


ふと。

アルフォンスが、庭の、片隅に——目を、留めた。


「あの、木の葉。……一枚。そなたの、髪に」


「え——?」


ぱさ、と。

ロザリンドの、髪から。一枚の、木の葉が、舞い、落ちる。


——いつかの、あの日と。同じ、ように。


二人は、顔を、見合わせ——どちらからとも、なく。

ふっ、と。笑い、合った。





『……ねえ、武士さん』


その夜。

いつものように。アルフォンスの、頭の中で。ひかりが、語りかける。


『あたしたち。——原作、ぜんぶ。変えちゃったね』


「うむ」


『破滅も。断罪も。逆恨みも。——何ひとつ、起こらなかった。誰も、不幸に、ならなかった。……ぜんぶ、武士さんが』


「いや」


アルフォンスは。

静かに——首を、振った。


「それがし、一人の、力では、ない。……ロザリンド殿。アンジェ殿。ユリウス。ローラン。イザベラ殿。——そして、ひかり殿」


「皆で。——書いた、物語よ」


『……うん』


ひかりが。

くすぐったそうに——笑った。


『——生後三秒で。腹を、切ろうとした、武士が。妖精に、泣いて、止められて。……まさか、こんな、結末に、なるとはね』


「ふっ。——重畳」


——と。


「ところで。ひかり殿」


『……ん?』


「そういえば、それがし」


アルフォンスは。

やけに、真顔で——こてり、と。首を、傾げた。


「結局。此度(こたび)の、生では。——ただの、一度も。切腹を、して、おらぬ、な」


『……い、今さらあぁぁ——!?』


静まり返った、夜空に。

ひかりの、悲鳴(ツッコミ)が——盛大に、こだました。


——そう。

腹を、切る、理由など。

もう。どこにも——ない。


守りたいものに、囲まれて。

この男は。——これからも。笑って、生きて、ゆく。


星空の、下。


白紙だった、はずの、物語は。

今、確かに——"幸せな、続き"を。紡ぎ、続けて、いる。


——誰かに、定められた、破滅では、なく。

自分たちの、手で、選び取った——その、先へ。


この、風変わりな。

武士の、物語は。


まだ、しばらく——続いて、いく。





(了)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ