19.スカウト⁉︎
予想外の魔物の襲撃を受けて、討伐訓練は終了となった。
空からの魔物の襲撃に驚いて、待機場所にいた騎士団長が慌ててやってきたけど、すでに魔物は倒した後だった。
そんなところにいたら、いざっていう時、間に合わないだろうと思ったけど、やっぱりだ。
空から魔物が襲って来るなんて思ってなかったんだろう。
本来ならこの森は比較的弱い魔物しか出ない。
だから、学生が訓練に使っているのだ。
そもそも、本職の騎士も参加しているのだから、フォローは完璧で本来、心配のない行事なんだと思う。
今回はゲームイベントだから、特別なのだろう。
そんなことを考えながら、帰り道を歩いていると
「防御壁を作ったのは、君なんだって?」
横から突然話しかけられた。
逞しい体躯に騎士服を纏った美丈夫。
騎士団長⁉︎
ジェフのお父さん!
「マガンスター公爵の御令嬢なんだよね」
内心、なんで話しかけてくるんだと驚きつつ、そこは貴族令嬢、にこやかに返す。
「はい。レティシア・マガンスターと申します」
「騎士団長のジーク・マルライドだ。見事な防御壁だった。あれがなかったら、大変なことになっていただろう」
「練習の成果がでて、ホッとしております」
「練習していても、いざっていう時に動ける者は案外少ないんだよ」
騎士団長は苦笑した。
ゲームイベントを知っていて、もしかしてって構えていたからね。
そうじゃなかったら、そう上手くはいかなかったんじゃないかな。
だから、あんまり誉められると困るんだけど。
「スカウトしたいくらいの人材なんだけど、流石にマガンスター家の御令嬢では無理だよな」
笑顔が引き攣る。
何を言い出すのだ!
もしかして、また目立ってしまったの⁉︎
防御壁は攻撃魔法と違って、地味で目立たないと思っていたのに!
「ご冗談を。わたくしなどまだまだですわ。アルバート殿下たちが素早く倒して下さったから大事に至らなかったのですよ」
引き攣る笑顔でなんとか、自分がやったことはただの補助でしかないんですよ、アピールをしておく。
「じゃあ、まぁ、そういうことにしておこうか」
騎士団長は笑いながら、そう纏めた。
騎士団長は他のグループの様子も見に行かなくてはいけないらしく、部下の人が呼びに来た。
「もう少し話したいところだけど。また会う機会があるだろう」
手をひらひら振りながら去って行った。
また失敗したかな〜
ちょっと遠い目をしていると
「レティ」
呼ばれて、そちらを見るとジェフとライガがいた。
「父に目をつけられたな」
ジェフが笑って言った。
「たまたま上手くいっただけなのに」
ため息が出る。
「たまたまでもなんでも、それでみんなが助かったんだから、もっと胸を張っていいのに」
「レティは本当、謙虚だよね」
いつの間にか、側にやって来たソフィがやれやれって感じで肩をすくめた。
「え?謙虚な訳じゃないわよ。本当にそうなんだから。実際、魔物を倒したのはライガたちなんだから」
「はいはい。レティからしたら、そうなるのね。でも、ありがとう。レティの魔法のおかげで助かったわ」
思いがけず、ソフィにお礼を言われて、ちょっと嬉しくなって、顔がニヤけてしまった。
みんな、怪我なく訓練を終えることができてよかった。




