偉人達の言葉
俺は毎日好きな事をしているが、仕事も時々する。
時々しか仕事をしないのは、働いたら負けだと偉い人が言っていた記憶があるためだ。
偉人達の言葉の意味は深い。
偉大なる先達の言葉には従うべきなのだ。
「それが、あんたの仕事をしない理由?毎日、毎日、昼から起きて、食べたい時に食べて、寝たい時に寝て、・・・少しはシスさんやリアさんを見習ったらどうなの!」
うちのダンジョンの怒りの象徴が何故か怒り狂っている。
キョウカはいつも俺の言葉に耳を貸さず、独自の理論を展開してくる。
ゴルドの奴はああ言ってたが、やっぱりパラレルワールドあるんじゃないか。
そもそも俺が暇なのは平和な証だ。
平和より争いをと言われても頷けるわけがない。
「俺が朝起きれなかったのは、昨夜キョウカが張り切りす「うっさいわね!あたしのせいだって言うの?」・・。」
逃げ場がない。
ジャ〇アンも裸足で逃げ出す無法ぶりだ。
そもそも砂糖吸収は絶好調だ。
地球の砂糖が無くならないのが不思議なくらいダンジョンに吸収している。
以前作ったロボ用格納庫を使い、1000トン単位の吸収を日に20回はしているのだ。
所要時間が10分だとしても5600万DPは稼いでいる事になる。
日本円にすると560億円だ。
つまり、俺は時給約3000億円稼ぐ男なのだ。
「わ、わかった、何か仕事を探す。」
「・・・わかればいいのよ。わかれば・・・。」
くそー・・・何をすればいい。
とりあえずゴルドと駄弁って時間を潰そう。
「・・・・・・というわけでキョウカが酷いんだ。俺は何も悪く無いのに・・・。」
「友よ!女性はいくつになっても我儘な姫なのだよ。まだ若い友には分らないかもしれんが、いくらでも私に相談するといい。これでも元聖職者だからね。相談は良く受けていたし、受けるのは得意なんだよ。」
疑惑の聖職者ゴルドが何か言ってるが、俺が強大な敵に成長しそうだと言ってたのを笑顔で否定していた気がする。
そんなに頼られてるなら浮いた話の1つや2つあってもおかしくないのに皆無だ。
ゴルドを疑惑の眼差しで見ていると新たに侵入者が入ってきた。
「あれ?ゴルド、今日ってカージャかキースも来るのか?」
「いや、私1人だが。」
「誰か来たぞ。一直線にこの部屋に進んでる。一応ソファー片付けて武器を出しとけ。」
「うむ!」
ゴルドが応接セットを片付け武器を構えると扉が開き1人の水色髪の幼女が顔をだした。
「迷子か?」
「そのようだな。君、おうちの人は?」
ゴルドが親切に話しかけるが絵面が最悪だな。
まるでコスプレ会場に迷い込んだ幼女を連れ去ろうとするロリコンだ。
「私は勇者ゴルドだ。知らないかな?異世界から来た勇者だよ。」
信頼を得ようと必死だ。
迷子ならそのまま外に連れ出せよ。
「ゴルド、外に連れ出した方がよくないか?その子以外反応無いから1人で入っちゃたんだと思うぜ。」
「そうか・・・そうだな。では君、この勇者ゴルドが助けてあげよう。ちなみに、君には年の離れたお姉さんとかはいるかい?」
そう言いながら不審者のごとく幼女の手を取ろうとすると、えい!という可愛らしい掛け声と共にゴルドが回転しながら吹き飛んだ。
「ゴルド!」
「くっ!平気だ!」
既に足にきてんじゃねーか。
千鳥足で立ち上がるお笑い勇者。
「少しもたせろ!」
「任せろ!」
威勢だけはいいゴルドを残し、俺は急いでコアルームに皆を集めた。
次にゴルドを見た時はサンドバック状態だった。
部屋の隅に追い立てられ、えい!えい!という掛け声と共に幼女にボコボコにされていた。
「やめろ!」
俺の叫びと共にパンチの嵐が止み、ゴルドは前のめりに倒れた。
既に意識は無いようだが、ピクピクと動いているので死んではいない。
「チビ助!お前は何者だ!」
吠える俺の肩にアリスの手が置かれる。
「・・・・・・・あの方は我々の上司よ。」
えっ!俺って上司いたの?
独立した営業主だと思ってたんだが。
「うぬっ!お主がこのダンジョンのダンジョンマスターか?儂をはよう転送しろ。」
幼女特有のキンキンした声で言われた。
どうする?
ミーシャを見ると獰猛な笑みを浮かべ無言で頷かれた。
「はようせい!儂は監査官じゃぞ!」
「早く転送した方がいいわよ。」
アリスの助言により幼女を転送する。
何かしてきたらミーシャに丸投げするつもりだ。
「お主がこのダンジョンのダンジョンマスターじゃな。今はシリアスと名乗っておるのか。アリスも久しぶりじゃな。」
「お久しぶりです、監査官様。それで本日はどのようなご用件でしょうか?」
アリスが対応してくれてるので幼女を観察する。
水色髪のストレートヘアで体格は座敷童と、どっこいどっこい。
黒いローブを引きずりながら歩いているが、中に武器を持ってたり鎧を着てたりするようには見えない。
だが、アリスがあそこまで下手に出るからには何かあるのか。
「こちらが、このダンジョンのマスターを務めるシリアスで御座います。」
薄い胸を張る幼女を前に俺の紹介をするアリス。
明らかに目で挨拶しろと言っている。
「俺がシリアスだ!チビ助!」
「貴方!馬鹿なの!」
「やかましい!そのチビ助がどこの誰だろうと、ここは俺の迷宮だ!でかい顔はさせん!」
「彼女は監「まあ、よい。元気で良いではないか。儂はダンジョンの監査をしておる、邪神の分身体の1体じゃ。
邪神の分身体K1150が儂の正式名じゃ。好きに呼ぶとよい。」。」
「じゃあ、チビ助で。」
「貴方!「よい!そう言うたはずじゃ。」。」
「K1150なら・・・、け、き、きーこ、キーコちゃんね。」
「キーコが。まぁ、この体じゃ。それでよかろう。」
「俺はチビ助と呼ぶ!」
キョウカが勝手に水色幼女を名付けてしまった。
キョウカのネーミングセンスの凄さを垣間見た瞬間だ。
あいつに名前を付けさせてはいけない。
「それで、話を続けたいが、茶でもくれんか。」
「あっ!ごめんなさい。今持ってくるから、キーコちゃんの方はジュースがいいかしら?」
子供組がオレンジジュース、女性陣が紅茶で俺がコーヒーだ。
ちなみに水色幼女はオレンジジュースを飲んでいる。
「で、・・・・何しにきた?」
「何しに来たとはご挨拶じゃな。儂は監査官じゃと言ったじゃろ。
お主がまじめにダンジョン経営しとるか見に来たんじゃよ。
なんせダンジョンは別世界と言ってもいいくらいのところじゃからな。こうして直に見に来る必要がある。」
「それで、見た感想は?」
「勇者達を取り込み、ダンジョンバトルも連戦連勝。ここまではいう事無しじゃ。
じゃが、スタンピードの準備も何もしていないし、侵入してくる冒険者の数も少ない。
ここらへんはマイナス要素じゃな。」
「俺の自由だ。スタンピード?というのが分らんが人類皆殺し計画に判を押した覚えはない。」
「知っとるが普通はダンジョンマスターの本能というか性で目指すものなんじゃがな。
スタンピードはダンジョンからモンスターを侵攻させて世界を荒し、DPをごっそり獲得するボーナスタイムじゃ。」
ボーナスタイムという言葉には心惹かれる響きがある。
「うおっ!なんじゃこれは?」
茶請けに出したケーキを食べて水色幼女が驚いている。
何故か双子の頬がピクピク動いて若干口の端が持ち上がってる。
あれはドヤ顔なのか?
「これは何じゃ?」
「ケーキだ、ケーキ。食った事ねーのかよ。」
「うむ、興味深い。儂はケーキのお替りを所望じゃ。それとこの黄色い飲み物もじゃ。」
「ちょっと待っててね。それとキーコちゃん、これはオレンジジュースよ。」
厚かましくもお替りを要求しやがった。
キョウカもホイホイいう事を聞くな。
こいつ子供に弱いな。
双子達も張り合ってかケーキを強請っている。
2つ目のケーキを食べた座敷童が船をこぎ出したので、昼寝させるために子供組をリアが連れ出そうとしている。
「儂も昼寝を所望じゃ。話は寝て起きてからじゃ。」
それを見ていた水色幼女がそう宣言した。
座ったまま寝るのかと見ていたら、アリスに肘でつつかれ小声で囁かれる。
「貴方がエスコートするのよ。ここは貴方の迷宮なんだから・・・。」
面倒くせえ、勝手に寝て勝手に起きろよ。
「よし、チビ助、海より深い慈悲の心で昼寝する事を許してやる。」
俺がどこに連れて行こうか悩みながらリアの後を追うと、水色幼女が手をつないできた。
振りほどこうか悩んだがそのままコアルームから連れ出す。
無難にアリスの部屋に連れて行こうと思い進路を変えると腕が引っ張られる。
「儂もあの者等と一緒のところがいい。」
少し先を歩く双子等を指差す。
「いう通りにしなさい。」
ついて来たアリスが子声で言ってきた。
仕方なしにリアの後を追い、双子等の部屋に入る。
かなりの数のおもちゃが散乱している。
キョウカやリアに言われるままに俺が買った物だが、こんなに買ったか?
子供部屋にはキングサイズのベットがあり、双子と座敷童はいつも3人一緒にここで寝ている。
俺が散らばっているおもちゃを蹴り寄せてスペースを作り、そこにベットを買い置こうかとしていると、
儂もここでよい、と言って水色幼女も3人組の所に行ってしまった。
ベットに潜り込みしばらくすると、心配する俺達をよそにすぐに寝息をたてる。
このまま口と鼻を塞げば殺せるんじゃないだろうかと思っているとアリスにつつかれ扉を指差される。
リアを見ると無言で頷くため後を任せ退出する。
コアルームで皆と合流し作戦会議をすることにした。




